約束のその後
ここで中間考査編終わります。
放課後。
ホームルームが終わると、生徒たちは次々と教室を出ていった。
「じゃあまた明日ー!」
「バイバイ!」
賑やかな声が廊下へ消えていく。
白石美月は、まだ席に座ったままだった。
机の中へ教科書をしまおうとしても、どこかぼんやりしてしまう。
右手を見る。
昼休み。
神崎と交わしたハイタッチ。
もう感触なんて残っていないはずなのに、不思議と温かさだけは覚えていた。
「美月。」
生田結菜が声をかける。
「帰ろ?」
「あ……うん。」
白石は慌てて立ち上がる。
教室を出ると、佐倉陽菜も待っていた。
「二位、おめでとう!」
「ありがとう。」
三人は並んで歩き始める。
廊下には夕日が差し込み、窓ガラスをオレンジ色に染めていた。
「でもびっくりしたよ。」
陽菜が笑う。
「八位から二位って、普通できないよ。」
「ほんとほんと。」
生田もうなずく。
「最近ずっと勉強してたもんね。」
白石は照れくさそうに笑う。
「まだ信じられない。」
「それにさ。」
生田がにやっと笑う。
「神崎くん。」
「え?」
「ハイタッチ。」
その一言で、白石の足が止まる。
「私、見てたよ。」
「陽菜も見てた。」
「うん。」
陽菜も笑いながらうなずく。
「神崎くんから手を出したよね。」
「……。」
白石は何も言えなかった。
「あれって約束だったんでしょ?」
「……うん。」
「『二位取れ』って言われたんだよね。」
白石は小さくうなずく。
生田の表情が少しだけ優しくなる。
「神崎くん。」
「ちゃんと覚えててくれたんだね。」
その瞬間だった。
今まで必死にこらえていたものが、胸の奥から込み上げてくる。
「……っ。」
「美月?」
ぽろり。
一粒の涙が頬を伝った。
「あれ?」
白石は慌てて目元をこする。
「なんで……。」
止まらない。
もう一粒。
また一粒。
「ちょ、ちょっと美月!?」
生田が慌てて肩に手を置く。
「ご、ごめん。」
「泣くつもりじゃ……。」
そう言うほど、涙はあふれてくる。
「私……。」
声が震える。
「頑張ってよかった……。」
その一言だけだった。
生田は何も聞かなかった。
ただ、そっと白石の背中をさする。
「うん。」
「頑張ったもんね。」
陽菜も静かにうなずく。
「毎日残って勉強してたもん。」
「私たち知ってる。」
白石は泣きながら笑った。
「神崎くんが……。」
二人は静かに耳を傾ける。
「信じてるって……。」
「私なら二位取れるって……。」
嗚咽が混じる。
「だから……。」
「応えたくて……。」
その言葉を聞いた生田は、小さく笑った。
「応えられたじゃん。」
「ちゃんと。」
白石は何度もうなずく。
「うん……。」
「うん……!」
涙は止まらない。
でも、それは悲しい涙ではなかった。
努力が報われた涙。
信じてもらえた嬉しさの涙。
そして、好きな人の期待に応えられた涙。
そのすべてが混ざった、人生で一番温かい涙だった。
◇
一方、その頃。
神崎は一人、帰り道を歩いていた。
(白石、二位だったな。)
あいつならできると思っていた。
だから驚きはなかった。
ただ。
(ちゃんと結果を出した。)
それが少しだけ嬉しかった。
自然と口元が緩む。
「……努力家だからな。」
誰に聞かせるでもなく呟く。
夕焼けの空を見上げながら、神崎は家路についた。
まだ彼は知らない。
自分の何気ない一言が、一人の少女の心を、ここまで動かしていたことを。
次からはまた文化祭編です。たいへんだぁ
ーーーーーーーーーーーおまけーーーーーーーーーーーーーーーーー
三回目の席替え
朝、先生が教室に入ってくる。
「今日席替えするぞー、1回目と同じやり方するから各人決めとけー」
結果 神崎と白石は隣になりました。
詳細はまたいつかわかります。
おまけだからって舐めんじゃねーぞ。めっちゃ短いし手抜きだけど




