二学期中間考査 1週間前
前回も神回でしたが今回も神回です。
二学期中間考査まで、あと一週間。
昼休みの教室では、いつも以上に参考書や問題集を開く生徒が増えていた。
「今回も中山と勝負?」
桐生が机に肘をつきながら聞く。
「ああ。」
神崎は数学の問題集から目を離さず答えた。
「負ける気しない?」
「しない。」
「即答かよ。」
桐生は苦笑する。
「でも中山さん、前回は1位だったじゃん。」
「だから。」
神崎はページをめくる。
「今回は差を広げる。」
その言葉を、少し離れた席で白石は聞いていた。
(やっぱり神崎くんらしいな。)
一位を守ることではなく、さらに差をつけることを考えている。
その向上心が、少しだけ眩しかった。
昼休みが終わり、教室の人が少なくなった頃。
神崎はノートを閉じると、白石の席へ向かった。
「白石。」
「え?」
突然名前を呼ばれ、白石は慌てて顔を上げる。
「ちょっといいか。」
「う、うん。」
二人のやり取りに、生田がちらりと視線を向ける。
(珍しい。)
神崎から話しかけるなんて。
白石は席を立ち、廊下へ出た。
「どうしたの?」
神崎は少しだけ考えるように沈黙した。
「今回のテスト。」
「うん。」
「中山との差を広げたい。」
「……うん。」
それはさっき聞いていた。
だから静かに頷く。
神崎は白石をまっすぐ見た。
「俺が一位を取る。」
「うん。」
「だから、お前が二位を取れ。」
「……え?」
白石は目を丸くした。
「わ、私が?」
「ああ。」
「でも……。」
二位。
前回は八位だった。
そんな自分が。
「無理じゃ……。」
「無理じゃない。」
神崎は即座に否定した。
「お前、この前の期末で八位まで上げただろ。」
「それは……。」
「努力できるやつは伸びる。」
神崎は当たり前のように言う。
「だから二位を取れる。」
白石は何も言えなかった。
そんなことを言われたのは初めてだった。
家族でも。
先生でも。
誰でもない。
神崎が。
自分に期待してくれている。
「でも、もし無理だったら……。」
思わず弱音が漏れる。
神崎は少しだけ笑った。
本当にわずかだった。
「その時は俺が中山と圧倒的な点数差をつけて一位を取る。」
「え?」
「だから安心して頑張れ。」
一拍置いて。
神崎は静かに言った。
「俺は——」
「お前のこと、信じてる。」
その一言で。
時間が止まった。
風が吹く。
廊下の窓から入る秋風が、白石の髪を揺らした。
何か返事をしようと思う。
でも声が出ない。
「じゃ。」
神崎はそれだけ言って教室へ戻っていく。
一人残された白石は、その背中を見つめたまま動けなかった。
「美月?」
いつの間にか生田が廊下へ出てきていた。
「何話してたの?」
「……。」
「美月?」
白石はゆっくりと生田の方を向く。
その目には、うっすら涙が浮かんでいた。
「神崎くんが……。」
「うん。」
「信じてるって。」
「……え?」
「私なら二位取れるって。」
生田は一瞬言葉を失った。
「それ、本当に神崎くん?」
「うん……。」
白石は小さく笑う。
その笑顔は、今までで一番幸せそうだった。
「私……。」
胸の前でぎゅっと拳を握る。
「頑張る。」
「絶対二位取る。」
それは誰かに言わされた目標ではない。
神崎が信じてくれた自分に、応えたい。
ただ、その一心だった。
教室へ戻った神崎は、何事もなかったように席へ座る。
「何話してたん?」
桐生が聞く。
「テスト。」
「それだけ?」
「ああ。」
「珍しいな。」
神崎は問題集を開きながら、小さく呟いた。
「努力できるやつは、結果を出せる。」
「白石ならできる。」
それは恋でも特別扱いでもない。
神崎にとっては、ごく自然な評価だった。
けれど、その何気ない一言が。
白石美月の二学期を、大きく変えることになる。
もう告白までずっとこんな雰囲気です。早く付き合えよ。
※これは松茸が体験した実話です
明日からはまた18:00投稿に戻します。




