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君を好きになるのは、一週間だけのはずだった。  作者: 松茸の香料
萌ゆる心

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教えようか?

ネタバレします。神回です。

 「じゃあ経験者は近くの人を教えてあげて!」


 体育委員の声が体育館に響く。


 白石は小さく息を吸った。


(……行こう。)


 一歩。


 また一歩。


 神崎の前まで歩いていく。


「神崎くん。」


「ん?」


「……教えようか?」


 神崎は少しだけ驚いたような表情を見せた。


「ああ。」


「助かる。」


 あまりにも自然な返事だった。


 白石は少し肩の力が抜ける。


「じゃあ最初のステップからね。」


「頼む。」


 二人は列から少し離れた場所へ移動した。


 体育館の端では、他の生徒たちもそれぞれ練習している。


 笑い声があちこちから聞こえてくる。


「まず右足から。」


 白石がお手本を見せる。


「次に左。」


 神崎も真似をする。


 しかし。


「逆!」


「あ。」


 白石は思わず笑った。


「右右。」


「……難しい。」


 神崎が少し困ったように呟く。


「勉強より難しい?」


「多分。」


「ふふっ。」


 珍しい答えに白石は笑みをこぼした。


 神崎もつられて少しだけ笑う。


 それだけで胸が温かくなる。


「もう一回ね。」


「うん。」


 今度はゆっくり。


 一歩。


 二歩。


 三歩。


「そこ!」


「……また逆か。」


「うん。」


 二人で顔を見合わせる。


 神崎は苦笑した。


「才能ないな。」


「そんなことないよ。」


 白石は首を横に振る。


「足じゃなくて、体が覚えてないだけだから。」


「そういうものか?」


「うん。」


 そう言ってから、少し迷う。


(……触っても大丈夫かな。)


 体育委員は他のペアのところへ行っている。


 周りでも普通に教え合っている。


(教えるだけ。)


(教えるだけだから。)


 勇気を出して手を伸ばした。


「ちょっとだけ、ごめんね。」


 神崎の右手首をそっと持つ。


「腕はもう少しこっち。」


「こう?」


「うん。」


 今度は肩に手を添える。


「肩、少し力入ってる。」


「ああ。」


「もっと楽に。」


 神崎は言われた通り力を抜いた。


「これでいい?」


「うん!」


 顔が近い。


 制服の袖が触れそうな距離。


(近い……。)


(近すぎる……。)


 心臓がうるさい。


 こんなに近くで神崎を見るのは初めてだった。


「白石?」


「えっ!」


「次は?」


「あ、ご、ごめん!」


 慌てて一歩下がる。


「えっと……ターン。」


「ターン?」


「そう。」


 白石がお手本を見せる。


 くるり、と軽く回る。


「できそう?」


「やってみる。」


 神崎も真似をした。


 一歩。


 二歩。


 くるり。


「お。」


 今度は成功した。


「できた。」


「すごい!」


 思わず拍手する。


「飲み込み早いね。」


「教え方がいい。」


 神崎は照れもなく言った。


「分かりやすい。」


 白石は固まる。


「……。」


「?」


「な、なんでもない!」


 耳まで真っ赤になってしまう。


 神崎は理由が分からず首をかしげた。


「そうか。」


 そのままもう一度ステップを踏む。


 さっきまでぎこちなかった動きが、少しずつ形になっていく。


「ほら。」


「できるようになってる。」


「本当だ。」


 神崎は少し嬉しそうだった。


「ありがとう。」


「助かった。」


 その笑顔は、本当に一瞬だった。


 けれど白石の胸には、その一瞬だけで十分だった。


「……うん。」


 それしか言えなかった。


 体育館の反対側。


 生田結菜は佐倉陽菜の腕をつついた。


「見て。」


「ん?」


「あれ。」


 二人の視線の先では、白石が神崎に何かを教えていた。


 楽しそうに笑う白石。


 素直に教わる神崎。


 その距離は、他のペアより少しだけ近く見えた。


「お似合いじゃん。」


 陽菜がぽつりと呟く。


「ね。」


 生田は嬉しそうに微笑む。


「美月、すごく楽しそう。」


 チャイムが鳴る。


「今日はここまでー!」


 体育委員の声で練習は終わった。


 帰り際。


 神崎は体育館の出口で白石を見つけた。


「白石。」


「え?」


「今日のおかげで助かった。」


「明日も教えてくれるか?」


 一瞬。


 時間が止まったように感じた。


「……うん!」


 その返事は、自分でも驚くほど大きな声だった。


 神崎は軽く頷く。


「じゃあ、また明日。」


 そう言って歩いていく。


 その背中が見えなくなるまで、白石は立ち尽くしていた。

きゃー青春。


次は一旦中間考査です。色々行事多すぎてわからなくなりそうですが、理解してください

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