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君を好きになるのは、一週間だけのはずだった。  作者: 松茸の香料
萌ゆる心

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準備開始!

二学期も始まりましたね。検証期間についての報告は別途行います。

 二学期が始まって数日。


 教室の後ろに貼られた文化祭実行委員会からのお知らせには、大きく「準備開始」の文字が書かれていた。


 昼休みになると、一年一組の教室はいつもより少し騒がしい。


「じゃあ、カフェ班はこっち集合!」


 クラス委員の声で、生徒たちが机を囲む。


 今年の一年一組の出し物は、喫茶店。


 壁の装飾、メニュー、接客、厨房補助……それぞれ担当を決め、少しずつ形にしていく。


 神崎悠真は教室の前方で、文化祭実行委員として配られた資料を眺めていた。


「神崎。」


 同じクラスの女子実行委員が近づく。


「各班の進み具合、今日中にまとめて提出したいんだけど。」


「分かった。」


「あと、装飾班の人数足りないみたい。」


「確認してくる。」


 短く返事をすると、神崎はそのまま教室を歩き始めた。


 余計なことは話さない。


 けれど頼まれたことはきちんとやる。


 そんな姿は、入学当初から何も変わっていなかった。


「白石。」


「え?」


 突然名前を呼ばれ、白石美月は少し肩を震わせる。


「装飾班、人足りてる?」


「あ、えっと……まだ少し足りないかも。」


「分かった。」


 神崎は教室を見回し、近くにいた男子へ声を掛けた。


「悪い。少し手伝ってくれ。」


「了解ー。」


 それだけ言うと、また別の班へ向かっていく。


 白石はその背中を見送りながら、小さく息を吐いた。


(……ちゃんと名前、呼んでくれた。)


 そんなことだけで、胸が少し温かくなる。


「美月。」


「ひゃっ!」


 後ろから肩をつつかれ、思わず変な声が出た。


「びっくりした。」


 振り向くと、生田結菜が笑いをこらえていた。


「今の反応、分かりやすすぎ。」


「ち、違うって。」


「神崎くんに名前呼ばれただけで顔赤いじゃん。」


「赤くない!」


「はいはい。」


 生田は笑いながら段ボールを持ち上げる。


「ほら、運ぶよ。」


「うん。」


 二人で廊下へ向かう途中。


 向こうから神崎が大きな板を抱えて歩いてきた。


「あ。」


 目が合う。


「それ、どこに運ぶ?」


 神崎が尋ねる。


「えっと……家庭科室の前。」


「じゃあ、俺が持つ。」


「え?」


 返事を待たず、神崎は段ボールを受け取った。


「軽いから大丈夫なのに……。」


「ついでだから。」


 そう言って歩き出す。


 白石と生田も後ろをついていく。


「ここでいい?」


「う、うん!」


 神崎は静かに段ボールを置いた。


「じゃ。」


 そのまま教室へ戻っていく。


 白石は何も言えず、その背中を見送る。


 隣で生田がにやっと笑った。


「優しいじゃん。」


「……みんなにだよ。」


「そういうところも含めて好きなんでしょ?」


「……。」


 白石は答えられなかった。


 否定したい。


 でも、できない。


 神崎が誰にでも優しいことくらい知っている。


 それでも、その優しさに救われてきたのも事実だった。


 文化祭まで、あと一か月弱。


 教室にはまだ、恋の気配よりも、木材と絵の具の匂いが広がっていた。


 けれど、その何気ない準備の時間こそが、二人の距離を少しずつ縮めていくことを、このときの二人はまだ知らなかった。


こっから結構激しいですよ

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