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君を好きになるのは、一週間だけのはずだった。  作者: 松茸の香料
萌ゆる心

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59,偶然の再会

夏休み編ラスト!

長かった夏休みもここで終わることとなります。

 夏休みも終わりに近づいた、ある日の午後。

 照りつける日差しを避けるように、神崎は駅前の大型書店へ足を運んでいた。

 店内は冷房がよく効いていて、一歩入ると夏の暑さが嘘のようだった。

(文化祭で使えそうな本……。)

 理系部で話し合った企画を思い返しながら、理工学や数学のコーナーを見て回る。

 「確率」

 「統計」

 「ゲーム理論」

 興味を引くタイトルが並ぶ。

「これなら参考になるかも。」

 一冊手に取り、ページをめくる。

 そのときだった。

 少し離れた棚から、聞き覚えのある声がした。

「……あ。」

 神崎が振り向く。

 同じように驚いた表情で立っていたのは、白石だった。

「神崎くん。」

「白石。」

 一瞬だけ沈黙が流れる。

 学校以外で会うのは、これが初めてだった。

「偶然だね。」

 白石が笑う。

「うん。」

 神崎も小さく笑みを返した。

「本、買いに来たの?」

「理系部で使えそうなの探してる。」

 神崎は手に持っていた本を見せる。

「文化祭の?」

「そう。」

「もう準備始まってるんだ。」

「少しずつ。」

 白石は興味深そうに表紙を眺めた。

「なんだか神崎くんらしいね。」

「そう?」

「うん。数学とか理科とか見てるイメージ。」

 神崎は少し照れくさそうに笑う。

「白石は?」

「私は……。」

 白石は腕に抱えていた本を見せた。

「読書感想文用の小説と、英語の問題集。」

「宿題?」

「まだ終わってなくて。」

「あと少し。」

「お互いだね。」

 二人は顔を見合わせて笑った。

 学校では何度も話してきた。

 それなのに、制服ではない姿で話していることが少しだけ新鮮だった。

「そういえば。」

 神崎がふと思い出したように言う。

「夏祭り。」

 白石の目が少しだけ大きくなる。

「行った?」

「……うん。」

「やっぱり。」

 神崎は納得したように頷いた。

「見かけた気がした。」

 白石も驚いたように笑う。

「私も神崎くん見つけた。」

「本当に?」

「うん。」

「じゃあ、あれ白石だったんだ。」

「話しかけようと思ったんだけど……。」

 白石は少し苦笑する。

「人、多すぎて。」

「確かに。」

 神崎も思わず笑った。

「あれじゃ無理だよね。」

「花火も始まってたし。」

「うん。」

 二人は同時に笑う。

 あの日、話せなかったことが、今になって自然な話題になった。

 それだけなのに、どこか胸のつかえが取れたような気がした。

 会計を済ませ、店の外へ出る。

 夕方の日差しは少しだけ柔らかくなっていた。

「そっち?」

 神崎が駅とは反対側を指さす。

「うん。」

「俺はこっち。」

「じゃあ、ここで。」

 少しだけ名残惜しい沈黙。

 けれど、どちらも無理に引き留めようとはしない。

「始業式まで、あと少しだね。」

 白石が言う。

「そうだな。」

「宿題、頑張って。」

「白石も。」

 神崎は軽く手を挙げた。

「また学校で。」

「うん。また学校で。」

 二人はそれぞれ反対の方向へ歩き出す。

 数歩進んだところで、白石はそっと振り返った。

 神崎も偶然同じタイミングで振り返る。

 一瞬だけ目が合う。

 二人は照れくさそうに笑って、小さく手を振った。

 今度こそ、それぞれの帰り道へ。

 夏休みは、もうすぐ終わる。

 けれど、この夏で縮まった距離は、きっと二学期にもつながっていく。

次からは二学期ですよ。


中間考査 文化祭 そしてクリスマス!


楽しいことがいっぱい起きそうですねぇ(ニヤッ)

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