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君を好きになるのは、一週間だけのはずだった。  作者: 松茸の香料
萌ゆる心

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研修、次の代へ

理系部の研修の様子です。この中山という人彼女持ちです。

 補習のない日。


 神崎は朝早く学校へ向かっていた。


 いつもの制服姿ではあるものの、今日は教科書ではなくノートパソコンが入ったリュックを背負っている。


 今日は理系部の校外研修だった。


 集合場所の昇降口前には、すでに部員たちが集まっている。


「おはようございます。」


「おはよう。」


 部員たちへ挨拶を返しながら歩いていくと、一人の男子が振り返った。


「全員そろったか?」


 穏やかな口調ながら、どこか頼もしさを感じさせる声だった。


 理系部部長――中山樹。


 三年生で、生徒会役員も務めている。


 そして、期末考査で学年一位だった中山雫の兄でもある。


「神崎、おはよう。」


「おはようございます。」


「補習はどうだ?」


「ぼちぼちです。」


「ぼちぼちで二位なんだから十分だろ。」


 部長は苦笑した。


「雫から聞いたよ。今回は惜しかったらしいな。」


「……惜しかったです。」


「悔しい?」


「少し。」


 神崎が正直に答えると、部長は満足そうに頷いた。


「そのくらいでいい。」


 その言葉に、神崎も自然と頷き返した。


「よし、時間だ。」


 部長は部員たちへ向き直る。


「点呼するぞ。」


 無駄なく人数を確認し、全員がそろっていることを確認すると、一行は駅へ向かった。


---


 研修先は県内の工学系大学だった。


 研究室では、小型ロボットが床を動き回り、別の部屋では3Dプリンターが樹脂を少しずつ積み重ねて部品を作っている。


「すごい……。」


 部員の一人が思わず声を漏らした。


 神崎も興味深そうに装置を見つめる。


「文化祭では、こういう"見るだけじゃなく体験できる展示"が人気なんですよ。」


 大学院生が説明する。


「例えば、このロボットを自分でプログラムして動かせるようにすると、小学生も楽しめます。」


 神崎はメモを取る。


 体験型。


 文化祭。


 頭の中で、その二つの言葉が結びついた。


---


 昼休み。


 学食で昼食を取る。


「大学ってこんな感じなんですね。」


 神崎が呟くと、部長は笑った。


「高校とは全然違うだろ?」


「はい。」


「でも面白いよ。」


 部長はカレーを食べながら続ける。


「知識を覚えるだけじゃなくて、自分で考えて、自分で作る。」


「それが研究だからな。」


 神崎はその言葉を静かに聞いていた。


---


 午後の見学を終え、帰りの電車。


 部員たちは疲れた様子で座席に座っている。


 神崎は窓の外を眺めていた。


「今日はどうだった?」


 隣に座った部長が聞く。


「面白かったです。」


「文化祭、何か思いついた?」


「少し。」


「じゃあ期待してる。」


 部長は笑う。


「神崎。」


「はい。」


「来年は、お前たちの代だ。」


 神崎は少し驚いたように部長を見る。


「まだ早いですよ。」


「いや。」


 部長は首を横に振った。


「今のうちから考えておくことが大事なんだ。」


「……はい。」


 神崎は真剣な表情で頷いた。


「部長って大変ですか?」


「大変。」


 即答だった。


 二人とも思わず笑う。


「でも、その分面白い。」


 その言葉には、不思議な説得力があった。


---


 夕方。


 家へ帰った神崎は、机にリュックを置く。


 ノートを開くと、研修中に書き留めたメモが並んでいた。


『体験型展示』


『来場者参加』


『文化祭は"見る"より"やる"』


 ページをめくると、その下には補習でもらった数学の課題。


「……明日までか。」


 神崎は苦笑しながらシャープペンを手に取る。


 夏休みだからといって、のんびりしている暇はない。


 部活も、勉強も、理系部も。


 やるべきことは山ほどある。


 窓の外では、夕暮れの空にヒグラシの鳴き声が響いていた。


次もなかなか珍しい神崎回になりますよ。

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