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君を好きになるのは、一週間だけのはずだった。  作者: 松茸の香料
萌ゆる心

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夏の体育館

夏休み編スタート!

 夏休みに入って三日目。


 朝八時。


 体育館の中は、すでに蒸し風呂のような暑さだった。


 窓は全開。


 大型扇風機が音を立てて回っているものの、汗は止まらない。


「ラスト一本!」


 顧問の声が響く。


「お願いします!」


 神崎は相手と向かい合い、ラケットを構えた。


 サーブ。


 レシーブ。


 スマッシュ。


 乾いた打球音が体育館に響く。


 ラリーは二十回を超えた。


 相手が少し浮かせたボールを見逃さない。


「ッ!」


 神崎がフォアで打ち抜く。


「一本!」


「ありがとうございました!」


 二人は一礼し、コートを離れた。


 首に掛けたタオルで汗を拭く。


「暑すぎるだろ……。」


 同級生が床に座り込む。


「まだ午前中だぞ。」


「だからだよ。」


 神崎はスポーツドリンクを一口飲んだ。


 冷たいはずなのに、すぐにぬるく感じる。


 そんなときだった。


「悠真、お疲れ。」


 体育館の入口から、一人の男子が歩いてくる。


 ラケットケースを肩に掛けた、少し茶色がかった短髪。


 神崎を見ると、気さくに手を上げた。


「お疲れ。」


 神崎も軽く手を上げ返す。


「今日はそっちも練習?」


「ああ。午前だけ。」


 彼の名前は藤原奏汰。


 神崎とは小さい頃からの幼なじみで、同じ卓球部に所属している。


 昔から付き合いが長く、気を遣わずに話せる数少ない相手だった。


「相変わらず強いな。」


「まだまだ。」


「いやいや。さっきの試合見てたけど、あれ取れないって。」


 藤原は笑いながら、自販機で買った炭酸飲料を神崎に見せる。


「飲む?」


「いらない。」


「だと思った。」


 二人とも笑う。


 こういう他愛もない会話が、昔から変わらない。


「そういえば。」


 藤原がペットボトルを開けながら言う。


「文化祭、理系部なんかやるんだろ?」


「まだ決まってない。」


「また面白いこと考えてそう。」


「考えるのはこれから。」


「頑張れよ。」


「そっちこそ。」


 短いやり取り。


 また顧問の笛が鳴る。


「集合!」


「じゃ、行くわ。」


「ああ。」


 藤原は隣のコートへ走っていった。


 神崎もラケットを持ち直す。


 夏休みだからといって、のんびりしている暇はない。


 部活。


 勉強。


 理系部。


 やることはいくらでもあった。


 午前の練習が終わる頃には、全員シャツが汗で濡れていた。


「お疲れ!」


「また明日!」


 部員たちが帰り支度を始める。


 神崎は体育館を出ると、照りつける日差しに目を細めた。


(暑い……。)


 蝉の鳴き声が一段と大きく聞こえる。


 藤原と話しながら、校門へ向かう。


 ふと、一学期のことを思い出した。


 体育祭。


 文化祭実行委員。


 期末考査。


 そして──白石。


(……。)


 別に理由はない。


 ただ、毎日のように教室で見かけていた姿を、最近は見ていない。


(夏休みだから当たり前か。)


 夏は、まだ始まったばかりだった。

藤原もキーパーソンです。登場人物設定とか出したほうがいいのかな

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