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君を好きになるのは、一週間だけのはずだった。  作者: 松茸の香料
萌ゆる心

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47/55

47,終業式

もう1学期終わります。

現実に追いつきそうで追いつかない(泣)

 朝から、いつもより教室の空気は浮き足立っていた。


「今日で一学期終わりか。」


「やっと夏休み!」


「通知表怖いんだけど……。」


 あちこちでそんな声が聞こえる。


 窓の外では、真夏の太陽が校舎を照らしつけていた。


 神崎は席に着き、ぼんやりと校庭を眺める。


 入学して、もう三か月。


 思い返せば、意外といろいろなことがあった。


 体育祭。


 文化祭実行委員。


 二度の席替え。


 梅雨の相合傘。


 そして、期末考査。


(……早かったな。)


 そんなことを考えていると、担任が教室へ入ってきた。


「体育館へ移動するぞ。」


---


 終業式。


 体育館には全校生徒が集まり、校長先生の話が始まる。


「皆さんは、この一学期を通して──」


 穏やかな声が体育館に響く。


 前の方では真剣に聞いている生徒もいる。


 後ろの方では、こっそりあくびを噛み殺している生徒もいた。


 神崎は特に何をするでもなく、静かに話を聞いていた。


 隣では桐生が小さくつぶやく。


「長い……。」


「まだ始まったばっか。」


「うそだろ。」


 神崎は思わず口元を緩めた。


 そんな小さなやり取りも、白石の目には入っていた。


(また笑ってる。)


 最近は、神崎の表情が少しだけ分かるようになってきた気がする。


 無表情に見えても、ほんの少し口元が動くだけで、機嫌がいいことが分かる。


 そんな些細な変化を見つけられることが、白石は少し嬉しかった。


---


 終業式が終わり、教室へ戻る。


「じゃあ、一人ずつ通知表を取りに来い。」


 担任が名前を呼び始めた。


 教室には、妙な緊張感が漂う。


「神崎。」


「はい。」


 通知表を受け取る。


 特に驚くような内容ではない。


 予想通りの評価だった。


「白石。」


「はい。」


 白石も通知表を受け取り、席へ戻る。


 そっと開く。


(よかった……。)


 期末考査の結果が反映され、以前より評価が上がっていた。


 数字以上に嬉しかったのは、自分の努力が形になったことだった。


「よし。」


 小さく拳を握る。


 その様子を、生田が覗き込む。


「どうだった?」


「前より良かった。」


「やったじゃん!」


 二人は笑い合った。


---


「それから。」


 担任が教卓の横に積まれたプリントの山を指さす。


「夏休みの課題だ。」


「うわぁ……。」


 一斉にため息が漏れる。


「ちゃんと計画的にやれよ。」


「先生、それ毎年言ってますよ。」


「だから毎年言うんだ。」


 教室に笑いが広がる。


 桐生は配られた課題を見て固まった。


「多すぎるだろ……。」


「一日一ページでも終わる。」


 神崎が淡々と言う。


「お前はな!」


「終わらない方が問題。」


「ぐっ……。」


 また笑いが起きた。


---


 ホームルームも終わり、生徒たちは帰る支度を始める。


「夏休み、海行こうぜ!」


「グループ作っとく!」


「あとで連絡する!」


 そんな声が教室中を飛び交う。


 神崎は静かに教科書を鞄へしまっていた。


「神崎も来る?」


 桐生が振り返る。


「行けたら。」


「じゃあグループ入れ──」


 言いかけて、思い出したように頭をかく。


「あ、そうだった。」


「お前スマホないんだった。」


「うん。」


「じゃあ……学校で言うわ。」


「それでいい。」


 そのやり取りを、白石は少し離れた席で聞いていた。


(神崎くん、スマホ持ってないもんね。)


 もし持っていたとしても、自分から連絡先を聞く勇気なんてなかっただろう。


 でも。


 夏休みになれば、学校で会うことも少なくなる。


(会えないんだ……。)


 そう思うと、胸の奥が少しだけ寂しくなった。


---


 昇降口。


 靴を履き替えていると、隣に神崎がやって来た。


「あ。」


「お疲れ。」


「神崎くん。」


 白石は少しだけ笑う。


「一学期、お疲れさま。」


「ああ。」


 神崎も短く返す。


「夏休みも部活?」


「うん。弓道部。」


「神崎くんは?」


「卓球と理系部。」


「そっか。」


 少しだけ沈黙が流れる。


 何か話したい。


 でも、何を話せばいいか分からない。


 結局、神崎が先に口を開いた。


「また学校で。」


 その一言だけ残して、校門の方へ歩いていく。


「……うん。」


 白石はその背中を見送り、小さく手を振った。


 神崎は気付かなかった。


---


 校門を出る。


 真っ青な空。


 耳に響く蝉の声。


 強い日差し。


 いよいよ夏休みが始まる。


 みんなは楽しそうに友達と帰っていく。


 白石も歩き始めた。


(夏休みか……。)


 嬉しい。


 でも、それと同じくらい。


(神崎くんと、あんまり会えなくなるな。)


 そう思う自分がいた。


 少し前までなら、そんなことを考えもしなかったのに。


 季節は、ゆっくりと夏へ向かっていた。


次からは夏休み編ですね。補修入れたほうがいいのか?

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