47,終業式
もう1学期終わります。
現実に追いつきそうで追いつかない(泣)
朝から、いつもより教室の空気は浮き足立っていた。
「今日で一学期終わりか。」
「やっと夏休み!」
「通知表怖いんだけど……。」
あちこちでそんな声が聞こえる。
窓の外では、真夏の太陽が校舎を照らしつけていた。
神崎は席に着き、ぼんやりと校庭を眺める。
入学して、もう三か月。
思い返せば、意外といろいろなことがあった。
体育祭。
文化祭実行委員。
二度の席替え。
梅雨の相合傘。
そして、期末考査。
(……早かったな。)
そんなことを考えていると、担任が教室へ入ってきた。
「体育館へ移動するぞ。」
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終業式。
体育館には全校生徒が集まり、校長先生の話が始まる。
「皆さんは、この一学期を通して──」
穏やかな声が体育館に響く。
前の方では真剣に聞いている生徒もいる。
後ろの方では、こっそりあくびを噛み殺している生徒もいた。
神崎は特に何をするでもなく、静かに話を聞いていた。
隣では桐生が小さくつぶやく。
「長い……。」
「まだ始まったばっか。」
「うそだろ。」
神崎は思わず口元を緩めた。
そんな小さなやり取りも、白石の目には入っていた。
(また笑ってる。)
最近は、神崎の表情が少しだけ分かるようになってきた気がする。
無表情に見えても、ほんの少し口元が動くだけで、機嫌がいいことが分かる。
そんな些細な変化を見つけられることが、白石は少し嬉しかった。
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終業式が終わり、教室へ戻る。
「じゃあ、一人ずつ通知表を取りに来い。」
担任が名前を呼び始めた。
教室には、妙な緊張感が漂う。
「神崎。」
「はい。」
通知表を受け取る。
特に驚くような内容ではない。
予想通りの評価だった。
「白石。」
「はい。」
白石も通知表を受け取り、席へ戻る。
そっと開く。
(よかった……。)
期末考査の結果が反映され、以前より評価が上がっていた。
数字以上に嬉しかったのは、自分の努力が形になったことだった。
「よし。」
小さく拳を握る。
その様子を、生田が覗き込む。
「どうだった?」
「前より良かった。」
「やったじゃん!」
二人は笑い合った。
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「それから。」
担任が教卓の横に積まれたプリントの山を指さす。
「夏休みの課題だ。」
「うわぁ……。」
一斉にため息が漏れる。
「ちゃんと計画的にやれよ。」
「先生、それ毎年言ってますよ。」
「だから毎年言うんだ。」
教室に笑いが広がる。
桐生は配られた課題を見て固まった。
「多すぎるだろ……。」
「一日一ページでも終わる。」
神崎が淡々と言う。
「お前はな!」
「終わらない方が問題。」
「ぐっ……。」
また笑いが起きた。
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ホームルームも終わり、生徒たちは帰る支度を始める。
「夏休み、海行こうぜ!」
「グループ作っとく!」
「あとで連絡する!」
そんな声が教室中を飛び交う。
神崎は静かに教科書を鞄へしまっていた。
「神崎も来る?」
桐生が振り返る。
「行けたら。」
「じゃあグループ入れ──」
言いかけて、思い出したように頭をかく。
「あ、そうだった。」
「お前スマホないんだった。」
「うん。」
「じゃあ……学校で言うわ。」
「それでいい。」
そのやり取りを、白石は少し離れた席で聞いていた。
(神崎くん、スマホ持ってないもんね。)
もし持っていたとしても、自分から連絡先を聞く勇気なんてなかっただろう。
でも。
夏休みになれば、学校で会うことも少なくなる。
(会えないんだ……。)
そう思うと、胸の奥が少しだけ寂しくなった。
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昇降口。
靴を履き替えていると、隣に神崎がやって来た。
「あ。」
「お疲れ。」
「神崎くん。」
白石は少しだけ笑う。
「一学期、お疲れさま。」
「ああ。」
神崎も短く返す。
「夏休みも部活?」
「うん。弓道部。」
「神崎くんは?」
「卓球と理系部。」
「そっか。」
少しだけ沈黙が流れる。
何か話したい。
でも、何を話せばいいか分からない。
結局、神崎が先に口を開いた。
「また学校で。」
その一言だけ残して、校門の方へ歩いていく。
「……うん。」
白石はその背中を見送り、小さく手を振った。
神崎は気付かなかった。
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校門を出る。
真っ青な空。
耳に響く蝉の声。
強い日差し。
いよいよ夏休みが始まる。
みんなは楽しそうに友達と帰っていく。
白石も歩き始めた。
(夏休みか……。)
嬉しい。
でも、それと同じくらい。
(神崎くんと、あんまり会えなくなるな。)
そう思う自分がいた。
少し前までなら、そんなことを考えもしなかったのに。
季節は、ゆっくりと夏へ向かっていた。
次からは夏休み編ですね。補修入れたほうがいいのか?




