42、焼きそばパン
購買、焼きそばパン、昼休み・・・
これが男子の青春の一部です。
昼休みを告げるチャイムが鳴ると、教室は一気に賑やかになった。
「神崎!」
桐生がパンを片手に近寄ってくる。
「今日、購買間に合った?」
「焼きそばパンなら。」
「よっしゃ!」
神崎は無言で焼きそばパンを差し出す。
「買っといてくれたのか!」
「ついで。」
「神かよ。」
「違う。」
そんなやり取りに、周りの男子が笑う。
一方その頃。
白石たちは机を寄せて昼食を広げていた。
「美月のお弁当、今日もおいしそう。」
生田が覗き込む。
「お母さんが作ってくれたの。」
「卵焼き交換しよ!」
「いいよ。」
そんな他愛もない会話が続く。
ふと、生田が神崎の方を見た。
「神崎くんって、男子ともあんな感じなんだね。」
白石もそっと視線を向ける。
桐生が何かを大げさに話し、神崎は呆れたような顔をしている。
それでも、口元はほんの少しだけ緩んでいた。
「……笑ってる。」
思わず小さく呟く。
「え?」
「あ、ううん。」
白石は慌てて首を振る。
(あんな顔もするんだ。)
自分と話しているときには見たことのない表情だった。
少しだけ新しい神崎を知れた気がして、嬉しかった。
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「そういえば。」
桐生が急に神崎へ聞く。
「文化祭実行委員、忙しい?」
「ああ。」
「理系部、何やるか決まった?」
「まだ。」
「へぇ。」
神崎はパンを食べながら答える。
「来週また会議。」
「大変そうだな。」
「まあ。」
その会話は、白石の耳にも届いていた。
(文化祭か……。)
まだ少し先の話。
でも、神崎はもう理系部で動き始めている。
自分も弓道部で演武の準備があるかもしれない。
忙しくなりそうだな、とぼんやり思う。
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昼休みも終わりに近づく。
神崎は空になったパンの袋を丸めながら立ち上がった。
「ゴミ捨て。」
「俺も行く!」
桐生が後を追う。
二人が教室を出ていく。
その背中を、白石は何気なく見送った。
生田はそんな白石に気付き、くすっと笑う。
「また見てる。」
「えっ!?」
「いや、別に悪いことじゃないけど。」
「もう、結菜ちゃん!」
頬を赤くする白石。
その様子に、佐倉と東雲も笑い出した。
笑い声の響く教室。
それは特別な一日ではない。
けれど、白石にとっては。
神崎と同じ教室で過ごせる、かけがえのない昼休みだった。




