41,数学の時間
日常回。最近は短めが多いです。
五時間目、数学。
窓の外では蝉が鳴き始めていた。
「今日は『場合の数』の応用問題をやる。」
先生が黒板にチョークを走らせる。
教室も少し静かになる。
書かれた問題はこうだった。
40人の生徒が横一列に並んで写真を撮る。
AさんとBさんが隣り合う確率を求めよ。
「これは少し難しいぞ。」
「模試でも出るレベルだ。」
教室から小さなどよめきが起きる。
「……え、これ無理。」
「40!って何?」
「数字がでかすぎる……。」
先生は教室を見渡した。
「じゃあ、神崎。」
「はい。」
神崎は立ち上がり、黒板へ向かう。
迷いなくチョークを持ち、最初に書いたのは数字ではなかった。
AとBを一つのまとまりとして考える。
「まず、AさんとBさんを一つのグループとして考えます。」
「そうすると、全部で三十九個を並べることになるので……」
神崎は淡々と式を書き進める。
39!×2
「全部の並び方は四十階乗。」
40!
「したがって。」
40!
39!×2
=
20
1
「答えは二十分の一です。」
先生は満足そうにうなずいた。
「正解。」
「ポイントは"まとまりとして考える"ことだ。」
「こういう発想ができるようになると、一気に解ける問題が増える。」
神崎は軽く会釈をして席へ戻った。
休み時間。
教室は一気に騒がしくなる。
白石はノートを見つめたまま、ペンを止めていた。
(考え方は分かったけど……。)
(どうして"一つ"にするって思いつくんだろう。)
その様子に気付いた生田が笑う。
「聞いてくれば?」
「え?」
「神崎くん。」
「で、でも……。」
「今なら暇そうだよ。」
神崎は参考書を開いているだけだった。
白石は少しだけ深呼吸をして立ち上がる。
「あの……神崎くん。」
「ん?」
「さっきの問題なんだけど。」
「ここ。」
ノートを差し出す。
「どうして最初に『一つのまとまり』って考えたの?」
神崎はノートを見て、小さくうなずいた。
「ああ。」
「こういう問題は、『数えるのが面倒な条件』を一つにすると考えやすい。」
「隣っていう条件があるから?」
「そう。」
「最初から思いつく必要はない。」
白石は真剣に聞いている。
「何回も解いてると、『あ、この形か』って分かるようになる。」
「……。」
「だから。」
神崎はノートを返した。
「お前ならできる。」
その一言に、白石は一瞬だけ目を丸くした。
「……うん。」
小さく笑ってうなずく。
「ありがとう。」
「別に。」
神崎はまた参考書へ視線を戻した。
白石は席へ戻りながら、胸の奥が少しだけ温かくなるのを感じていた。
"お前ならできる。"
その言葉を、何度も心の中で繰り返しながら。
どうやって夏休みにつなげようか悩んでたとこ。




