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君を好きになるのは、一週間だけのはずだった。  作者: 松茸の香料
第一章 青に染まるまで

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36/45

36,傘のお返し

無事返せるか・・・


白石っ、がんばれ!

翌朝。


昨日まで降り続いていた雨はすっかり上がり、青空が校舎の窓いっぱいに広がっていた。


白石美月は、右手に一本の黒い長傘を持って登校する。


神崎から借りた傘だった。


昨夜、家に帰ってから丁寧に水滴を拭き取り、玄関で乾かした。


汚れていないか何度も確認したのは、自分でも少しやりすぎだと思う。


それでも。


(ちゃんと返したい。)


その気持ちは変わらなかった。


教室へ入ると、神崎はもう席についていた。


参考書を開きながら、静かに朝の時間を過ごしている。


白石は一度深呼吸してから近付いた。


「神崎くん。」


「ん?」


顔を上げる神崎に、長傘を差し出す。


「昨日、ありがとう。」


「ああ。」


神崎は何気なく受け取った。


「ちゃんと乾かしておいたから。」


「そこまでしなくてもよかったのに。」


「借り物だから。」


そう言うと、神崎は少しだけ傘を見て、


「……ありがと。」


短く笑った。


そのたった一言だけで、白石の胸は少しだけ温かくなる。


(よかった。)


ちゃんと返せた。


それだけなのに、今日は朝からいい日になりそうな気がした。


そのあと先生が来て、ホームルームが始まる。


白石は席へ戻った。


そして――。


(あっ。)


心の中で、小さく固まる。


(私の傘……。)


返したことに安心しすぎて、自分の傘を持ってくるのを忘れていた。


思わず額に手を当てる。


(またやっちゃった……。)


自分でも呆れてしまう。


けれど今さら家まで取りに戻れるわけもない。


(今日は晴れだから、大丈夫……だよね。)


そう自分に言い聞かせるしかなかった。


一方その頃。


神崎は返してもらった傘を自分の机の横に立て掛けながら思う。


(今日はこれがあるし。)


朝は晴れていた。


予報でも夕方まで降水確率は低かったはずだ。


だから家の傘は持ってこなかった。


もし降っても、返してもらったこの傘を使えばいい。


それだけのことだった。


放課後。


ホームルームが終わる頃には、教室の外が急に暗くなっていた。


「なんか曇ってきた?」


「さっきまで晴れてたのに。」


誰かが窓を開けた瞬間。


ぽつ。


ぽつ、ぽつ。


やがて――


ザーッ。


勢いよく雨が降り始めた。


「うわっ!」


「マジで!?」


「天気予報外れた!」


教室は一気に騒がしくなる。


神崎は窓の外を見て、小さく息を吐いた。


(降ったか。)


まあ、問題ない。


朝返してもらった傘がある。


そう思いながら鞄を持ち、文化祭実行委員の資料を職員室へ届けるため教室を出た。


十分ほどして。


仕事を終えた神崎は昇降口へ向かおうとして――足を止めた。


(……傘。)


教室に置いたままだ。


取りに戻るか。


面倒だな。


そう思いながら教室の扉を開ける。


すると。


まだ一人、教室に残っていた。


白石だった。


鞄を開けては閉じ、また開けては閉じる。


何かを探しているようだった。


「どうした。」


「あっ……。」


白石は顔を上げる。


少し困ったように笑って、


「その……。」


照れくさそうに頭をかく。


「神崎くんに傘を返したことで安心しちゃって、自分の傘持ってくるの忘れちゃった……。」


神崎は一瞬きょとんとして。


「……ふっ。」


思わず小さく笑った。


「笑わないで……。」


「悪い。」


本当に悪いと思っているのか分からないくらい、口元はまだ少し緩んでいる。


(そういうとこあるよな。)


普段はしっかりしているのに、時々驚くくらい抜けている。


そんな白石が、少しだけ面白かった。


神崎は机の横に立て掛けていた傘へ手を伸ばす。


「帰るか。」


「うん……。」


教室を出て昇降口まで来る。


外では、さっきよりも強い雨が降っていた。


神崎は傘を開こうとして、ふと白石を見る。


このままでは、白石は駅まで濡れて帰ることになる。


少しだけ考えてから、神崎は静かに口を開いた。


「……傘、入るか。」

あっれれ〜? オッカしぃぞ〜


はい、相合傘します。たのしみにしててください


---------------報告--------------------

何故か昨日のPVが100を超えていました。やったー

合計閲覧数1000まであと少し!

これからも松茸をどうぞよろしくお願いします。

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