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君を好きになるのは、一週間だけのはずだった。  作者: 松茸の香料
第一章 青に染まるまで

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29/38

29,順位結果

今日3話目。10話分飛ばして読んでいる方には、一応あらすじを。


簡単に言ったら、神埼と中山が勝負した。

白石は神崎を見て、勉強を頑張った。

神埼と白石は偶然図書館であった。

って感じです。

 順位発表の日。


 朝から教室は落ち着かなかった。


「もう見た?」


「いや、まだ。」


「怖くて行けない。」


「じゃあなんで廊下まで来たんだよ。」


「気になるからだよ。」


 笑い声とため息が入り混じる。


 いつもより少しだけ早く登校した生徒たちが、職員室前の掲示板の周りに集まっていた。


 白石美月は、自分の席に座ったまま、そのざわめきを聞いていた。


(今日か……。)


 クリアファイルの中には、返ってきた十枚の答案。


 合計七百五十八点。


 悪くない。


 むしろ、自分の中ではかなり良かった。


 だからこそ。


(……怖い。)


「白石さん、見に行かないの?」


「……もう少ししたら。」


「私、先行ってくる!」


 友達が教室を飛び出していく。


 数秒後。


「うわぁぁ!」


「マジ!?」


「嘘でしょ!」


 廊下の向こうから悲鳴のような声が聞こえてきた。


 白石は思わず苦笑した。


(みんな同じなんだ。)


 そう思って、立ち上がる。


 足が少し重かった。


◇◇◇


 掲示板の前には、人だかりができていた。


「見えない!」


「押すなって!」


「何位だった?」


「聞くな!」


 白石は人の隙間から、順位表を見上げた。


 まず、一番上。


 **1位 神崎悠真**


 その名前を見つける。


(……やっぱり。)


 不思議と驚きはなかった。


 図書館で見た参考書。


 昼休みの質問。


 何気ない一言。


 積み重ねてきたものを知っているから。


(すごいな。)


 素直に、そう思った。


 そのすぐ下。


 **2位 中山**


 白石は小さく息を呑んだ。


(本当に……。)


 九十点台で悔しそうにしていた二人。


 冗談みたいな点数で競い合っていた二人。


 あの会話は、本物だった。


 そして。


 白石は視線を下へ移していく。


 二十位台。


 二十五位。


 二十六位。


 二十七位。


 二十八位。


 二十九位。


(……。)


 三十位。


 そこにもない。


 心臓が大きく鳴った。


(あれ。)


(もしかして。)


(ダメだった?)


 次の瞬間。


 **31位 白石美月**


「……。」


 頭が真っ白になった。


 三十一位。


 目標だった二十位台ではない。


 あと一人。


 たった一人。


 その数字が、やけに遠く感じた。


◇◇◇


「白石さん!」


 後ろから友達の声がした。


「三十一位!? すごくない!?」


「え?」


「いや、めっちゃ上がってるじゃん!」


「そうだよ! すごいって!」


「頑張ってたもんね!」


「……。」


 白石は曖昧に笑った。


「ありがとう。」


 嬉しい。


 たぶん、本当に。


 でも。


 それだけじゃなかった。


◇◇◇


 人混みを離れて、廊下を歩く。


 窓の外には、初夏の青空が広がっていた。


(……三十一位。)


 あと一人。


 あと一つ上だったら。


 二十位台だった。


(悔しい。)


 その感情に、自分でも驚いた。


 以前の自分なら。


 「思ったより良かった」で終わっていたかもしれない。


 でも今は違う。


 図書館へ向かった日。


 眠い目をこすって勉強した夜。


 解けなかった問題を何度もやり直したこと。


 全部思い出す。


 頑張った。


 本当に頑張った。


 だからこそ。


(悔しい。)


 届かなかったことが悔しかった。


◇◇◇


「白石。」


「……あ。」


 振り返ると、神崎がいた。


「順位見たのか。」


「うん。」


「どうだった。」


「三十一位。」


「そうか。」


 それだけだった。


 慰めの言葉もない。


 励ましの言葉もない。


 でも。


「頑張ったな。」


「……え?」


「前より、上がったんだろ。」


「うん。」


「じゃあ、頑張ったんだと思う。」


 神崎は淡々と言った。


 本当に、ただ事実を確認するみたいに。


 でも。


 白石の胸の奥に、その言葉は静かに落ちていった。


「……ありがとう。」


「ん。」


 神崎はそれ以上何も言わず、教室へ戻っていく。


 その背中を見送りながら。


 白石は、もう一度順位表のことを思い出した。


 三十一位。


 悔しかった。


 でも。


 頑張ったことまで否定したくはなかった。


 神崎が一位だったこと。


 中山が二位だったこと。


 そして、自分が三十一位だったこと。


 全部、本当の結果だ。


◇◇◇


 教室へ戻る途中。


 白石は小さく息を吐いた。


(次は。)


 三十一位じゃない。


 あと一人で終わらない。


 もっと上へ。


 今度こそ。


 自分の力で。


 窓から吹き込んだ風が、前髪を揺らした。


 白石は少しだけ笑う。


 悔しかった。


 でも、その悔しさはもう下を向くためのものじゃない。


 前を向くためのものだった。


 そして。


 誰にも聞こえないくらい小さな声で、呟く。


「……次は、負けない。」


 それは誰かへの宣言ではなく。


 昨日までの自分への挑戦状だった。


あともう1はあります。

21:00という遅い時間ですが、見てください。

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