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君を好きになるのは、一週間だけのはずだった。  作者: 松茸の香料
第一章 青に染まるまで

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24/38

24,テスト前日

テスト前日の話です。最近は短めですね、web小説だったらこれくらいがいいのかな

 中間考査前日。


 朝、教室に入った瞬間、白石美月はいつもとの違いに気づいた。


「英語の単語テストならまだしも、本番は無理だって……。」


「昨日、理科のワーク三周した。」


「嘘つけ。」


「本当だって!」


「終わった……俺の中間考査、まだ始まってもないのに終わった……。」


 あちこちから聞こえる悲鳴と冗談。


 それでも、その奥には確かな緊張があった。


 机に向かう人。


 友達同士で問題を出し合う人。


 ノートを見返す人。


 普段は授業が始まるまで騒がしい教室も、今日はどこか落ち着かない。


 白石も席に着くと、鞄から英単語帳を取り出した。


(あと一日。)


 ページをめくる。


 見覚えのある単語。


 以前は何度見ても頭に入らなかったのに、今では自然と意味が浮かぶものも増えていた。


 その小さな変化が、少しだけ嬉しかった。


◇◇◇


 四時間目。


 担任は教科書を閉じると、教卓に寄りかかった。


「よし。前日だからな。残りは自習にする。」


 教室がざわつく。


「分からないところがあるやつは友達に聞いてもいい。ただし、騒ぐなよ。」


 そう言って椅子に腰掛けた。


 しばらくすると。


 教室は不思議な静けさに包まれた。


 ページをめくる音。


 シャープペンシルの音。


 消しゴムを使う音。


 誰かの小さなくしゃみ。


 それだけが聞こえる。


 白石は英語のノートを見返した。


 仮定法。


 比較。


 関係代名詞。


 一つずつ確認していく。


 ふと、視線を横に向ける。


 神崎悠真は数学の問題集を解いていた。


 迷いなく。


 一定の速さで。


 時折、止まって考えることはあっても、すぐにまたペンが動く。


(やっぱり、すごいな。)


 でも、もうただ「すごい」で終わらなかった。


 図書館で見た努力。


 昼休みにくれた短い助言。


 放課後の教室。


 その積み重ねを知っている。


(ちゃんと頑張ってるからなんだ。)


 白石は視線を戻し、自分のノートに向き直った。


◇◇◇


 放課後。


 帰る準備をする生徒たちの間を、中山が歩いていく。


「神崎。」


「ん。」


 神崎は顔を上げた。


「……眠そう。」


「お前も。」


「昨日、二時。」


「馬鹿だろ。」


「うるさい。」


 中山は苦笑した。


 少しだけ、いつもの勝気な雰囲気とは違って見えた。


「でもさ。」


「何だ。」


「明日、楽しみ。」


「……。」


「頑張った分、ちゃんと返ってくるかもしれないじゃん。」


 神崎は少し考えるように窓の外を見た。


「そうだな。」


「だから。」


 中山は真っ直ぐ神崎を見る。


「負けたくない。」


「俺も。」


 短い返事。


 でも、それだけで十分だった。


「じゃあ、明日。」


「おう。」


 中山は小さく笑うと、教室を出ていった。


 白石はその背中を見送る。


(あの二人でも……。)


 緊張するんだ。


 不安になるんだ。


 それでも、前を向く。


 それが少し意外で。


 でも、なんだか安心した。


◇◇◇


 家に帰ると、机の上には使い込んだ問題集が積まれていた。


 書き直したノート。


 付箋。


 短くなったシャープペンシル。


 完璧じゃない。


 分からないところだって、まだある。


 それでも。


(ここまでやった。)


 図書館へ行った。


 家でも勉強した。


 眠い日も、やる気が出ない日も、机に向かった。


 以前の自分なら、ここまで続かなかったかもしれない。


 ベッドに横になる。


 天井を見上げる。


 目標は二十位台。


 届くだろうか。


 失敗したら。


 思ったよりできなかったら。


 そんな考えが次々と浮かんでくる。


 だけど。


『やった分しか点にならないし。』


 図書館で聞いた声。


『たぶん大丈夫。』


 昼休みに言われた短い言葉。


 白石は目を閉じた。


(……大丈夫。)


 怖い。


 緊張する。


 でも。


 それ以上に。


(頑張った。)


 そう言える自分がいた。


 六月の夜。


 静かな部屋の中で、白石は小さく息を吐く。


 そして。


「……よし。」


 誰に聞かせるでもなく呟いた。


「明日、頑張ろう。」


 中間考査まで、あと数時間。


 長かった一週間の先にある最初の挑戦が、もうすぐ始まろうとしていた。


次はテスト当日です。1話で締めようと思っているので、長くなりそうです。

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