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君を好きになるのは、一週間だけのはずだった。  作者: 松茸の香料
第一章 青に染まるまで

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放課後の選択

やっと部活動を決めます。神崎は勉強できるくせに、運動部にも入るのかよ・・・

こういう何気ない会話を入れるのもいいですね。

(実際はこんな会話してない)

 体育祭が終わって数日。


 一年一組の教室には、いつもの日常が戻ってきていた。


「眠い……。」


「体育祭の疲れ、まだ抜けない。」


「次は中間テストだってさ。」


「先生って、なんでそんな怖いこと言えるんだろうね。」


 朝のホームルーム前。あちこちから気の抜けた声が聞こえる。


 そんな中、担任が教卓を軽く叩いた。


「はい、静かに。今日は部活動届の提出について話します。」


 一瞬でざわめきが広がる。


「やっとか!」


「どうしようかな。」


「もう決めてる?」


「俺、サッカー部。」


「吹奏楽入るつもり。」


 体育祭とはまた違う高揚感が教室を包んだ。


 高校生活の新しい居場所を決める時間だった。


「提出は来週まで。見学も自由だから、よく考えて決めるように。」


 担任の説明が終わると、さっそく周囲では部活の話が始まった。


「神崎、お前は?」


 前の席の男子が振り返る。


「卓球。」


「お、経験者?」


「まあ。」


「即答じゃん。」


「決めてたし。」


 それだけ言って、神崎は配られた一覧表に目を落とした。


 卓球部。


 理系部。


 他の部活には目もくれない。


「神崎くん、やっぱり卓球なんだ。」


 ふいに声をかけられた。


 振り返ると、白石美月が立っていた。


「……まあ。」


「なんか、そんな気がしてた。」


「なんで。」


「静かな競技、得意そうだから。」


「偏見だろ。」


「ふふ。」


 白石は小さく笑った。


 その笑い方は、からかっているというより、少し嬉しそうだった。


「白石は?」


「弓道部。」


「弓道?」


「うん。」


「意外だな。」


「そうかな?」


「運動部って感じしない。」


「私も最初はそう思った。」


 白石は少しだけ視線を落とした。


「お姉ちゃんが弓道部だったの。」


「姉?」


「二年生。」


「へえ。」


「見学についていった時、格好良くて。」


 言葉を探すように続ける。


「だから、私もやってみたいなって。」


「……そうか。」


 神崎は短く答えた。


 でも、その返事には以前のような棘はなかった。


「神崎くんは?」


「ん?」


「なんで卓球部?」


「なんとなく。」


「絶対違う。」


「……勝つのが嫌いじゃない。」


「それ、本音?」


「たぶん。」


 白石は目を丸くした。


「なんか、神崎くんっぽい。」


「そうか?」


「うん。」


 負けず嫌いで、真面目で、何事にも手を抜かない。


 本人は否定するだろうけれど。


 白石は、そんな神崎のことを少しずつ知り始めていた。


「あと、理系部も。」


「え?」


「兼部。」


「兼部するの?」


「週に何回かだし。」


「すごいね。」


「別に。」


「また『別に』って言った。」


「……。」


「神崎くん、それ口癖だよね。」


「知らない。」


「ほら。」


「……。」


 沈黙。


 けれど、不思議と気まずくはなかった。


「美月ー!」


 教室の後ろから女子が手を振る。


「弓道部、一緒に見学行こう!」


「あ、うん! 今行く!」


 白石は立ち上がり、神崎の方を見た。


「じゃあ、また。」


「おう。」


 ほんの短い会話。


 それでも。


 神崎は、白石が笑うと少し安心することに、まだ気づいていなかった。


 放課後。


 校舎のあちこちに部活動勧誘の声が響く。


「野球部です! 見学だけでも!」


「吹奏楽部、体験できます!」


「バスケ部、新入部員募集中!」


 昇降口を出た神崎は、一度足を止めた。


 グラウンドの向こうでは、すでに練習を始めている運動部の姿が見える。


 そして、校舎の反対側。


 弓道場へ向かう白石の背中が、小さく見えた。


 まだ、ただのクラスメイト。


 少し話すようになっただけの相手。


 それでも。


 体育祭の前よりは、ほんの少しだけ距離が近づいた気がした。


 五月の風が、制服の裾を揺らしていく。


 これから始まる部活動も、定期考査も、文化祭も。


 まだ誰も知らない。


 この何気ない放課後の選択が、二人の高校生活を大きく変えていくことを。


部活動での様子も同じ時間にまた投稿しているるので読んでみてください。

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