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島流し結界師の自給自足生活〜知らない間に島に珍獣が増えていく  作者: 鷹山リョースケ


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9/14

10 名付け

 キアルはマナウルフ達に名前を付けた。

 呼び立てる気はないが、自分の中で整理するためでもある。


 銀色の父親ウルフはソルカ、白色の母親ウルフはフィン。それぞれ光る、白いという意味だ。

 仔ウルフ達は二匹いた。まだ灰色の毛をしていて、むくむくしている。

 どちらかというと黒っぽくて機敏に動き回る方をスナリ、白っぽくおっとりした方がフロッカだ。

 スナリとフロッカは物おじせずキアルにじゃれついてくる。薪を割っている時は危ないので追い払うが、効果がないので箱に入れておいたらフィンに睨まれた。


「しょうがないだろう、危ないし」


 と、キアルは通じないまでも弁明をすると、判ったような顔をして箱の中のこども達を舐め始めた。

 案外通じているのかもしれない。


 マナウルフ達は山小屋に入ってこようとした。

 最初キアルは止めたが、大きさが違う。

 雪崩のように押し切られた。

 我が物顔で暖炉の前に丸まるフィンと付き添うようなソルカ、嬉しそうにトコトコと走り回るスナリとフロッカを見て、キアルは諦めた。

 とりあえず、居室の区画はドアを閉めて鍵をかけ、入ってすぐのホールや居間、作業場はマナウルフ達に開放した。

 フィンはどこか不満そうだったが、


「奥はまだきちんと調べてないんだよ。こども達に危ない物があるかもしれないだろ」


とキアルが言うと、ブフッと鼻を鳴らして納得したような顔をした。

 確実に通じている。



 ◇ ◇ ◇



 徐々に雪の日が増えていった。

 目に見えて積もり始めている。まだ太陽が出ている間は森に入れるが、山小屋に閉じ込められる日は近い。


 そんな中で山小屋の前の丘だけが妙に雪が薄く、キアルは首を傾げた。

 ダリアンが食べる草があるのはありがたいが、不思議は不思議だ。

 変わったことといえば例のフクロウが今日ものんびりと浮いている。キアルの結界の上に座っているのだが。

 近づくと不思議と暖かい。

 キアルが考え込んでいると、どこからか声がした。


「YO!少年  HO!フクロウ  NO!グレスアウゥル

 北の海 北の空 来たコレ光る島気分いい島 ホゥ!」

「…………………なんて????」

「……Oh、人間の言葉ムズカシーイ」


 いやそこじゃない。

 断じてそこじゃない。

 キアルは追及したい気持ちが先に立って、「フクロウが喋った」ということに驚く暇がなかった。


 フクロウは、フクロウではなくグレスアウルだと名乗った。

 名ではなく種族名だ。


「ワレの魂は熱く燃えている」

「うん」

「普通に暑い」

「そっか」

「北の海、涼しくてよき」

「うん」

「この島マナ豊富めちゃサイコー」

「そっか……」


 グレスアウルが喋る人間の言葉に統一感はなかった。

 キアルは学院であちこちの地方から来た学生達の、様々な方言を聞いて驚いたことを思い出した。

 おそらくだが、グレスアウルもあちこちの地方で聞きかじった人間の言葉をつなげているのだろう。

 そう予想してたずねてみたら、やはりそのようだった。


 気が済むまで島に滞在するというので、キアルはとりえあずこのグレスアウルにも名前を付けた。

 オルナ、森という意味だ。

 フクロウには似つかわしいと思うが、海鳥? には合わないかもしれない。

 そう思い直したが、本人(本鳥)が承知したのでそのままオルナになった。

 ちなみに性別は不明だ。


「ワレもかつては森に棲みし鳥……」

「森がなくなっちゃったの?」


 マナウルフのように人間が狩りすぎたのだろうか。

 キアルはそう思って不安になったが、


「ワレらの群れが棲まう森……枯れちゃったんだよね」

「そっか……」


 キアルは深入りしないことにした。


 オルナを結界の中に入れるようにするかどうかキアルは悩んだが、オルナはストン、と結界を突き抜けて草の上に着地した。


「入った!」

「条件ガバすぎ。もっと絞り込むべし。島のマナ強力。張り直す推奨」


 聞けば、オルナは単にキアルの結界の上に止まるのが気に入っただけだった。

 何もせずとも停空しているみたいで面白いのだそうだ。

 ハンモックでくつろいでるような感じなのかもしれない。


 それからキアルは冬支度の合間に、結界を強化する方向でオルナと相談した。

 古代鳥としてのオルナの知識は人間であるキアルには判らないことも多かったが、オルナが過去、あちこちで見聞きした情報は大変勉強になるものだった。

 いつしか「オルナ先生」と呼ぶようになったほどに。


 ――そんなキアル達を背後からフィンがじっと見ていた。



 ◇ ◇ ◇



 このマナの膜が強化される。それはいい。

 どうやらキアル(グレスアウルに聞いた)は同族のニンゲンが嫌いらしい。

 そういうニンゲンはたまにいる。森の奥で出会っても、そういうニンゲンは行儀良く立ち去ることが多いので「まだマシ」だ。

 他のニンゲンが入ってこないのは大歓迎だ。


 フィンは今ではこの島がなかなか気に入っていた。

 大陸側から見ると小さな島かと思いきや、意外に大きい。動植物も豊富で、先日は地下に続く洞窟も見つけた。

 ニンゲンのキアルが棲みついているのは気になるが、マナの膜という防御のちからがある。これを利用しない手はない。

 獲物を腑分けるのも上手いし、最近は植物で作った「ぶらし」で撫でてくるが、大変に具合がよい。

 フィンはキアルを己の群れに数え入れてもよいと考えている。


 しかし、だ。

 あのグレスアウルはいただけない。

 巣穴には入ってこないが、キアルがグレスアウルに傾倒しているのは気に食わない。

 フィンはソルカに「あること」を命じた。

 ソルカはその考えに賛成だったので、積極的に動いた。


 夜。


 ソルカはそっと島を出て、「海の道」を駆け抜けた。

 注意しながら大陸へと渡り、森に向けて遠吠えをする。

 マナウルフ独自の、大気のマナだけを震わせて伝える吠え方だ。ニンゲンには聞こえない。


 散り散りになった仲間達に向けて。


 『良き棲み処を得た。集え』と――



 ――そして、そのマナの吠え声を聞き取れるのは、厳密にはマナウルフだけではなかった。



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