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島流し結界師の自給自足生活〜知らない間に島に珍獣が増えていく  作者: 鷹山リョースケ


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11 山小屋探索

 吹雪が始まった。

 キアルは山小屋に閉じ籠った。いよいよ冬ごもりの開始だ。


 寒く冷たい見知らぬ島で、何を成すでもない孤独の時間を耐えられるだろうか。

 島に来たばかりの頃はそんな風に思って不安だった。

 しかし、実際には押しかけマナウルフ一家のお陰でそれどころではない。

 むしろ日々成長して暴れまわるスナリとフロッカの相手をしているだけで一日が終わる。 

 オルナは吹雪が気持ちいいらしく飛んで行ってしまった。結界の張り直しは先送りだ。


 朝は起きると、まず上に乗っているスナリとフロッカを、横に寝ているフィンかソルカの上に移動させる。今日はソルカだった。

 ベッドにはフィンとソルカがが交互に上がってくる。

 二頭一緒に上がられるとキアルの寝る場所がなくなるので、押し合いへし合いを繰り返し、戦って陣地をもぎ取った。

 スナリとフロッカはキアルの腹や脚の上に乗ってくるので諦めた。もう少し成長したら止めてもらわないと窒息してしまう。


 床に寝ているフィンを踏まないようにベッドを這い出し、暖炉に火を入れる。

 キアルだけなら夜の間も火を焚いていないと凍えてしまうが、マナウルフ達の体温が予想外に暖かく、火が無くても十分眠ることができた。

 ちなみに獣臭いと嫌だなと思っていたのだが、マナウルフ達は綺麗好きなのか種族特性なのか、臭いがほとんどなかった。むしろオルナの方が鳥くさい。


 水瓶から水を鍋に汲んで火にかけ、干し肉や野草、少量の麦を入れてスープを作る。

 湯気が立ち始めるとスナリとフロッカが目覚め、キアルの背に体当たりを繰り返す。

 多分じゃれているつもりなのだとは思うが、力が強いのでキアルはそのたび体勢を崩してしまう。自分だけを包む結界の張り方を編み出したい。

 フィンは広くなったベッドに上がって、ソルカと一緒に伸び伸びと寝ていた。


 熱い食事はキアルだけが摂る。

 ゆっくりとスープを飲み、保存用のカチカチのパンをかじる。

 馬車に積んであった食料だが、このパンも最後の包みを開けた。肉はまあまあ貯め込めたと思うが、穀物や野菜はまったく足りない。


 キアルは食べ終わると椀に湯を注いで洗い、湯は飲み干した。

 じんわりと腹の底から温まり、座ったまま上体を伸ばしてほぐしていく。

 体が固まっていると思わぬ怪我をする。こんな医者もいなければ薬もない環境だ、小さな傷すら注意するべきだ。


 こういう「体操」も学院で学んだことだ。

 本当に学院に行けたお陰でキアルの世界は広がった。

 魔法を持って生まれてきたことには感謝している。

 だが「使い方」は自分で決める。もう人の言いなりにはなりたくない。

 戦地でのもやもやが脳裏に浮かび、つられて友人だった顔も浮かんで、キアルは振り払うように首を振り、立ち上がった。


 下半身も丁寧にほぐしていく。スナリとフロッカがじゃれてくるので一緒に遊びながら動く。

 そのうちフィンとソルカが起きてくる。

 二頭はこども達を連れて外へ出た。吹雪でも平気、というわけでもないらしいが、短い時間であれば活動できるようだ。

 前の巣穴に獲物を貯蔵しているらしく、そちらへ行って食べるらしい。

 元よりマナウルフは生息地に潤沢なマナがあれば最低限生きていけるので、肉はそこまで大量に必要ではない。と、図鑑には書いてあった。


 今日は山小屋の奥の居住区を探検するつもりだ。

 食料が残っていないかどうかも気になる。

 普通に考えれば先住者がいつ居たのか不明な以上、たとえ食料が残っていてもそれはゴミだが、貴族は状態保存の「魔法箱」を持っている。

 戦地で見た貴族子弟達の優雅な食卓を思い出す。食材はどこにあるのかと思っていたら、そういう箱があるのだと聞いた。

 この島が貴族の流刑地なら、もしかしたら魔法箱だってあるかもしれない。


 キアルは山小屋の奥へ続くドアを開いた。中に滑り込み、また閉める。スナリとフロッカが入ってこないように鍵を掛けたかったが、内側からの鍵はなかった。

 やはり牢に準じたつくりなのかもしれない。


 ランタンを掲げると廊下のようだ。

 この山小屋の奥は丘の内部にめり込んだ形になっているから、今キアルがいるところは一応、地下になる。

 地下室らしい、土臭い、湿気った空気が漂っていた。


 一番近いドアを開ける。

 中はいくつかの木箱と、カラカラに乾いた草などがぶら下がっていた。倉庫だろうか。ひとまず倉庫としておこう。


 廊下を少し進んで、倉庫とは反対側の壁にあったドアには鉄製の掛け金があり、鍵がかかっていた。ドア自体もどこか立派なのでここが居室かもしれない。

 その次のドアも同じようなつくりで、三部屋あった。


(そっか、流刑になった貴族が一人とは限らないもんな……)

 

 男女で分ければ最低でも二部屋は必要か。

 しかし、鍵はどこだろう。キアルは鍵を探して歩いた。

 奥は他には何もない部屋と、食料庫があった。

 食料庫は更に掘り下げられて半地下になっていて、冷気が壁のように感じられた。半ば氷室になっているのだろう。


「やった!」


 思わず声を上げた。

 ……しかし、棚にあるのはボロボロになった麻袋や何かのカケラぐらいで、めぼしいものは何もなかった。キアルはがっくりと肩を落とした。


(は、箱は……ないかな……?)


 せめて魔法箱はないだろうか。

 それらしいものを探して並ぶ棚を回り込んでいたら、目の端で何か動いた。


「ヒエッ」


 思わず叫んでランタンを向ける。ランタンが揺れて影も揺れる。

 心臓がバクバクする。

 暗がりから白いモノが飛び出ている。握り拳大ぐらいの……白いキノコのような……いや、二対の光、目だ、目がある……


「ヴヴヴゥギュワー!」

「は?! 雪テンがなんでこんなところに??」


 食料庫の隅から飛び出したのは白い毛皮のテンだった。



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