再会
「ランディ!」
ビヨンドはランディに駆け寄る。
「い、今までどこで何を......! ずっと、ずっと探したんだから......!」
ビヨンドは涙を流し、ランディの足にしがみつく。
闘いの最中であることも忘れ、弱々しい声で泣いた。
「えへへ。ごめんね。でも、あのままだと置いて行かれそうだったから......」
「それに、どうしてここに......?」
「偶然、ここら辺を通りかかってね。お姉ちゃんが嫌な予感がするからって......」
「......へぇ。そこのお嬢ちゃんが、うちの妹がずっと話していたビヨンドって怪盗かい?」
謎の声を聞いたビヨンドは、すぐさまランディから離れる。
森の中から、ボロボロのローブを被った女性が、ビヨンドたちの前に現れた。
女性がフードを脱ぐと、長く美しい、赤毛の女性が現れた。
「妹って......! もしかして!」
「初めまして。私はテペア。......本当はもっと自己紹介したいところだけど、そういう状況じゃないんだろ? あんなとんでもない奴が暴れているんだし」
テペアはビヨンドとランディの背後を指差す。
ビヨンドは闘っていたことを思い出し、振り返る。
巨人はビヨンドに対して興味を失ったのか、再び都市に向かって歩みを進めていた。
「そうだ......! 再開を喜んでいる場合じゃ......! このままじゃ、エリューが......!」
「なるほど、ね。そういう訳なら、私も喜んで参戦させてもらうよ」
テペアは肩をグルグルと回し、準備運動をする。
「ただ、私の戦宝とあいつの相性は、あんまりよくなさそうだね。多分、今の私たちじゃ、破壊は無理だ。......学園長も、さっきの揺れで危険だと察しているはず。とりあえず、支援が来るまで、私たちで足止めするよ!」
「はい!」
「ランディ! 支援は頼んだよ! くれぐれも、無茶をしないように!」
「了解! お姉ちゃん!」
「それじゃ、行くよ!」
テペアが駆けだすと、追うようにビヨンドも駆けだした。
「テペアさん。作戦とかあるんですか?」
「無いよ! 臨機応変に戦いな! 得意なんだろ!」
「......はい! 任せてください!」
草原を駆け抜け、巨人へと接近する二人。
砂煙が目に入ろうと、虫が飛んで来ようとも、巨人から目を逸らすことは無い。
そんな二人を追うように、ランディも馬に指示を出し、後を追う。
自分の邪魔をする存在が再び近づいてきたことに気が付いた巨人は、歩みを止め、ビヨンドたちに接近を始める。
そして、顔にはめ込まれた赤い水晶が発光し、光線を発射した。
ビヨンドとテペアは、それを軽々と避ける。
巨人が何度も何度も光線を撃つが、ビヨンドたちに当たることは無い。
「あんた、何か強力な戦宝は持ってるかい?」
「この弓があります。建物を壊すくらいの破壊力はありますけど、どうですか?」
「それで充分。あいつが足を上げた瞬間、私が戦宝をあいつに使う。あんたはその弓を、あいつの足裏に撃ち込んで」
「わかりました!」
巨人は、二人を始末しようと、何度も何度も光線を撃ち続ける。
巨人は光線だけでは対処できないと判断したのか、光線を撃ちつつ、自分の左指を砕き、投げつけてきた。
「ランディ! あの岩を壊して!」
「任せて!」
テペアの指示により、ランディは鎖を振りかぶる。
そして、鎖を振るうと、一直線に鎖が伸びていき、岩を破壊した。
「そろそろ仕掛けるよ! 準備しな!」
テペアの指示で、ビヨンドは弓に手をかける。
そして、巨人の光線が発射される。
ビヨンドは横に飛び、一回転して弓を構える。
「撃ちますよ!」
巨人が右足を上げた瞬間、ビヨンドは虹の弓を足裏に向けて発射した。
巨人は虹に足を乗せた状態になり、歩みが止まる。
「どんどん撃って!」
「はい!」
ビヨンドは何度も弓を撃ち、巨人の足裏を押していく。
巨人は傾き始めているが、倒れるにはまだ足りない。
「よし......! あとは私に任せな!」
テペアは懐から、塔の形をした石の置物を取り出す。
そして、それを巨人の足元へと投げる。
「戦宝【嵐の塔】! 嵐よ、巻き起これ!」
テペアのその言葉により、塔は青く発光する。
そして、その場に風が巻き起こり、渦が発生した。
「うぅ......!」
ビヨンドはその風に巻き込まれないように、這いながら距離を取る。
「最大出力! このまま持ち上げるよ!」
風の渦はどんどんと大きくなっていき、水も発生し始めた。
ビヨンドは雨に打たれたように全身濡れながらも、飛ばされないように地面にしがみつく。
そんな風の押され、巨人はバランスを崩す。
「追加で行くよ!」
テペアはもう一つ塔を取り出し、先端を巨人の胸に向ける。
そして、同じように風を発生させる。
「倒れな!」
テペアの手元から、強力な風が発射される。
足元からも、正面からも強力な風を受けた巨人は、ついに後方へと倒れ始めた。
「やった!」
作戦が成功し、喜ぶビヨンド。
巨人は地面に倒れ、大地が大きく揺れる。
揺れが収まるのを待ち、ビヨンドは立ち上がった。
そして、ビヨンドは倒れた巨人に登る。
「おい、どうしたんだい!?」
「この弓で、どうにかして破壊できないか試してみます! 数発じゃダメでも、数十発、数百発なら......!」
ビヨンドは巨人の胸へと乗り、赤い水晶を見下ろす。
そして、弓を構え、何度も何度も撃ち込んだ。
だが、水晶には軽度の傷が付いただけで、壊れる気配は無かった。
「まだまだ......!」
ビヨンドが弓を構えると、足元が揺れる。
「やばい! 起き上がるよ! 一旦離れな!」
ビヨンドは構えるのを止め、巨人の胸から降りる。
「......っ!? ビヨンド! 後ろ!」
テペアの声で、振り向くビヨンド。
そこには、自分の背丈の倍ほどの、岩の巨人が拳を振り上げていた。
「くっ!」
ビヨンドは急いで避ける。
岩の巨人が拳を地面に叩きつけると、そこに穴が開いた。
「まさか......! さっきランディが壊した岩から......!」
起き上がった巨人が、再び自分の指を砕き、ビヨンドたちの周りにばら撒き始める。
砕かれた巨人の指は、形を変え、人型になっていった。
「嘘でしょ......!?」
「ちっ......。これは厄介だね......」
前からも後ろからも、左右からも、岩の巨人が大挙して押し寄せてくる。
「クソ......! 巨人だけでもどうしようもないのに、これじゃ......!」
「ビヨンドちゃん! お姉ちゃん!」
不安を感じ取れる声で、二人に声をかけるランディ。
「早く......。早く助けを......」
ビヨンドは、巨人を睨みつけながら、そう呟いた。




