死の直前
ビヨンドは疾風の靴の能力を発動させる。
緑に輝いた靴は、強い風を発生させる。
ビヨンドが地面を踏み込むと、巨人へと一気に近づいていく。
巨人も察したのか、右腕の拳を振り上げ、ビヨンドを止めようとする。
「来る......!」
草原を駆けつつ、しっかりと拳の動きを予測する。
「真っ直ぐ!」
拳はビヨンドの予想通り、真っ直ぐ接近してくる。
ビヨンドは右に飛ぶように地面を蹴り、拳を避ける。
そして、再び地面を蹴り、拳へと飛び乗る。
すると、反対側の手がビヨンドに近づいてくる。
虫のように、ビヨンドを払うつもりなのだろう。
「私がそんな簡単に、やられるわけないでしょ!」
ビヨンドは上空へ飛び、手を回避する。
ついでに、空中で頭頂部を確認するも、弱点と思われる部分は無かった。
「くっ......! こいつ、どうすれば......!」
腕に着地し、再び駆け上がる。
手に当たったら死。
鉄傘で防いだとしても、こんなにも巨体であれば、地面に叩きつけれてしまうだろう。
そうなってしまっては、確実に死んでしまう。
そんな恐怖と闘いながら、ビヨンドは突き進む。
「やっぱり、顔の水晶を壊さないといけないの......?」
水晶を壊そうと考えるビヨンド。
「でも、ただの水晶じゃないわよね......? だって、虹の弓でビクともしなかったんだから......。今の私に、この水晶を壊せるの......?」
右手に持つ鉄傘を見つめ、呟くビヨンド。
「でも、この傘にはまだ私に知らない力があるかもしれないし......!」
ルーフと闘い、謎の光を防いだ時のことを思い出す。
秘められた力が存在しているかもしれない。
淡い希望を胸に、水晶へと近づいていく。
巨人の手を避けつつ、少しずつ接近する。
少しずつ、少しずつ接近し、ついに水晶へと辿り着く。
「どうにか......なって......!」
ビヨンドは、鉄傘を構える。
「喰らえ!」
そして、傘の先端を水晶へと突き刺した。
だが、水晶には傷一つ無く、赤く光り始める。
「嫌な予感......!」
ビヨンドは咄嗟に、傘を開いた。
次の瞬間、赤い光線がビヨンドを包み込んだ。
「ぐぁ......!」
傘から強い振動が伝わる。
そして、浮遊感。
その感覚により、自身が吹き飛ばされたことに気が付く。
美しい夜空に、身を放りだされるビヨンド。
必死に体制を変え、着地に備える。
「ど、どうすればいいの!?」
体制を変えつつ、作戦を考えるビヨンド。
だが、ビヨンドの頭の中には、逃げるという言葉しか思い浮かばなかった。
ビヨンドは地面に着地し、相手の様子を伺うために顔を上げる。。
「危ない!」
そして、巨人が自身を踏み潰そうとしていることに気が付いた。
即座に靴の能力で避けるビヨンド。
慌てて避けたため、地面に転がり込んでしまう。
「......っ!」
巨人はビヨンドを踏み潰そうとし、それを避けた。
だが、地面を踏みしめる振動が起きなかった。
「まさか!」
ビヨンドは見上げる。
そこには、巨人の足。
巨人は、ビヨンドが避けたところを狙っていたのだ。
ビヨンドは逃げるために立ち上がろうとするも、焦りで転んでしまう。
逃げなければ殺される。
そんな焦りが、ビヨンドを死に追い詰める。
「ひぃ......! やだ! やだぁ!」
普段の達観した態度から一変、年相応の少女へと変わる。
自分の死を悟り、限界を迎えてしまったのだろう。
ビヨンドに出来ることは、死の恐怖に怯え、目を閉じることだけだった。
そうすれば、恐怖が少しでも和らぐと思ったのだろう。
ビヨンドに近づく足。
ビヨンドの命は、ここで終わろうとしていた。
「......間に合え!」
そんなビヨンドに、金色に輝く一本の鎖。
その鎖の先端は、ビヨンドの服にくっ付き、体を引っ張る。
「......え!?」
引っ張られる力に気が付き、ビヨンドは思わず目を開けた。
その瞬間、自身のすぐ隣で、巨人の足が地面に触れた。
砂煙が発生し、目の前が見えなくなる。
「私、どうして......?」
体が引っ張られていき、巨人から離れていく。
そして、巨人の反対側には、見覚えのある人物が馬に乗っていた。
「嘘......! 嘘!」
そこに居るのは、ビヨンドが探し求めていた人物。
行方不明になっていたビヨンドの友達、ビヨンドの師匠、ビヨンドの相棒。
「怪盗ランディ、ただいま参上! ビヨンドちゃん! 助けに来たよ!」




