巨大な敵
馬に乗り、一人で暗い森を駆ける。
木々が作り出す闇に恐怖せず、影の元へと向かう。
「ラッティさんに馬術を教わってよかった......! こんな暗い森、私だけじゃ抜けられてない......!」
ビヨンドが疾風の靴で駆け抜けようとしても、乱立している木にぶつかり、駆け抜けるのには時間がかかっただろう。
闇の中だろうと、馬は構わずスイスイと走って行く。
「......あの影、私に勝てるのかな......?」
今までの敵とは違う、圧倒的な破壊力と殺意を感じられる、強大な兵器。
それに対し、こちらは一人のみ。
「いや......。勝つのよ......! 絶対に、勝つ!」
落ち込みそうになりながらも、自分に喝を入れるビヨンド。
巨人が歩く振動が、だんだんと大きくなる。
もうすぐ森を抜ける。
「絶対に勝って、ここを守って見せる!」
勢いよく駆け、森を抜け出す。
目の前には、広大な草原。
そして、巨人。
「な、何これ......? レンガで作られた巨人......? しかも、街に向かってる......!?」
ビヨンドは馬から降り、対象を観察する。
巨体から察することができる力を想像し、足がすくむ。
「こんなの、私にどうにか.......。......いや、私が......! せめて、みんなが来るまで、塞き止めなきゃ......!」
ビヨンドは虹の弓を構え、胴体を狙う。
「これが効くかどうか......!」
狙いを定め、矢から手を離す。
空中に輝く虹を描き、巨人の胴体へと飛んでいく。
矢と巨人が衝突し、轟音が響き渡る。
大量の砂煙が発生し、虹の先は見えない。
「どう......!?」
時間が経ち、砂煙が晴れていく。
「......っ! 効かない......!」
虹は巨人へと激突するが、巨人はビクともせず、少々レンガが欠けた程度だった。。
巨人は虹のことなど気にもせず、前身を続ける。
「だったら!」
ビヨンドは巨人を狙うのを止め、巨人の進路へと弓を構える。
「すっ転びなさい!」
ビヨンドは再び弓を撃つ。
矢が巨人の足のすぐ目の前に飛んでいき、虹を架ける。
巨人が右足を上げると、虹に足を引っかけ、バランスを崩す。
「やった......!」
巨人は前へと倒れていく。
目の前にある木々をなぎ倒し、地面へと激突する。
先ほどの地震と同じくらいの振動が、ビヨンドに伝わる。
そして、矢を直接突き刺した時とは比べ物にならないほどの、空を覆い隠す砂煙が巻き起こる。
果たして、巨人はどうなったのか。
砂煙が消えるまで、ビヨンドはジッと待つ。
少し経つと、砂煙の中に、黒い大きな影が浮かび上がる。
「......そ、そうよね。この程度じゃ、壊れないわよね......」
巨人は起き上がり、前進を再開するかと思われた。
「......こ、こっちに向かってくる!?」
狙いを街からビヨンドに変更したのか、巨人は旋回し、ビヨンドに向かって前進を始めた。
頭部の赤い一つ目が、ビヨンドを捉える。
そして、一歩ずつ、一歩ずつ、ゆっくりとビヨンドへと歩み寄る。
「あの目、もしかして弱点......?」
ビヨンドは弓を構え、目を狙い、矢を発射する。
矢は小さな目を目掛けて、一直線に飛んでいく。
「どう......!?」
矢の衝突と共に、再び轟音が響き渡る。
それと同時に、巨人の動きは止まった。
「やった......!?」
だが、巨人の赤い目は、壊れてなどいなかった。
「そ、そうよね......。弱点が表に出てるなんて、そんな都合がいい訳ないわよね......」
ビヨンドは絶望しかけていた。
自身の強力な武器である虹の弓。
そんな弓で、掠り傷しか与えられないのだから。
「......近づけば、弱点が分かるかしら......」
遠くから攻撃してもダメなら、近づいてみればいいのではないか。
そう考えたビヨンドは、自身が発射した矢、それによってできた虹の上に乗る。
虹は巨人の目へと続いており、駆け上がれば顔まで接近できそうだ。
ビヨンドは全力疾走で巨人の顔へと近づいていく。
「動き出すかもしれないから、急がないと......!」
ビヨンドがそう呟く。
だが、それが現実となってしまう。
巨人の腕が動き出し、虹を掴む。
力を込めているのか、虹を掴む手が震える。
「に、虹を折るつもり!?」
巨人が更に力を込めたのか、虹が揺れる。
すると、虹の先端部分がへし折られてしまった。
そして、巨人は虹を持ったまま、大きく振りかぶる。
「やばい! 逃げないと!」
ビヨンドは危険を察知し、虹から飛び降りる。
その予感は当たり、ビヨンドが先ほどまで立っていた場所に、へし折った虹が飛んでいく。
その虹は地面へと突き刺さり、地面が揺れる。
虹が突き刺さった場所には、大きな穴が開いていた。
「あ、あんなの当たったら、跡形も無いくらい体がバラバラに......!」
もし、あの虹が自身に衝突していたら。
そんなことを想像してしまい、身の震えが強くなる。
「虹の弓はダメかも......。だったら......無理やり近づいてやる......!」
ビヨンドは意を決し、自ら巨人へと接近し始めた。




