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怪盗少女ビヨンド   作者: Melon
第4章 暴走

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巨大な敵

 馬に乗り、一人で暗い森を駆ける。

 木々が作り出す闇に恐怖せず、影の元へと向かう。


「ラッティさんに馬術を教わってよかった......! こんな暗い森、私だけじゃ抜けられてない......!」


 ビヨンドが疾風の靴で駆け抜けようとしても、乱立している木にぶつかり、駆け抜けるのには時間がかかっただろう。

 闇の中だろうと、馬は構わずスイスイと走って行く。


「......あの影、私に勝てるのかな......?」


 今までの敵とは違う、圧倒的な破壊力と殺意を感じられる、強大な兵器。

 それに対し、こちらは一人のみ。


「いや......。勝つのよ......! 絶対に、勝つ!」


 落ち込みそうになりながらも、自分に喝を入れるビヨンド。

 巨人が歩く振動が、だんだんと大きくなる。

 もうすぐ森を抜ける。


「絶対に勝って、ここを守って見せる!」


 勢いよく駆け、森を抜け出す。

 目の前には、広大な草原。


 そして、巨人。


「な、何これ......? レンガで作られた巨人......? しかも、街に向かってる......!?」


 ビヨンドは馬から降り、対象を観察する。

 巨体から察することができる力を想像し、足がすくむ。


「こんなの、私にどうにか.......。......いや、私が......! せめて、みんなが来るまで、塞き止めなきゃ......!」


 ビヨンドは虹の弓を構え、胴体を狙う。


「これが効くかどうか......!」


 狙いを定め、矢から手を離す。

 空中に輝く虹を描き、巨人の胴体へと飛んでいく。


 矢と巨人が衝突し、轟音が響き渡る。

 大量の砂煙が発生し、虹の先は見えない。


「どう......!?」


 時間が経ち、砂煙が晴れていく。


「......っ! 効かない......!」


 虹は巨人へと激突するが、巨人はビクともせず、少々レンガが欠けた程度だった。。

 巨人は虹のことなど気にもせず、前身を続ける。


「だったら!」


 ビヨンドは巨人を狙うのを止め、巨人の進路へと弓を構える。


「すっ転びなさい!」


 ビヨンドは再び弓を撃つ。

 矢が巨人の足のすぐ目の前に飛んでいき、虹を架ける。


 巨人が右足を上げると、虹に足を引っかけ、バランスを崩す。


「やった......!」


 巨人は前へと倒れていく。

 目の前にある木々をなぎ倒し、地面へと激突する。


 先ほどの地震と同じくらいの振動が、ビヨンドに伝わる。

 そして、矢を直接突き刺した時とは比べ物にならないほどの、空を覆い隠す砂煙が巻き起こる。


 果たして、巨人はどうなったのか。

 砂煙が消えるまで、ビヨンドはジッと待つ。


 少し経つと、砂煙の中に、黒い大きな影が浮かび上がる。


「......そ、そうよね。この程度じゃ、壊れないわよね......」


 巨人は起き上がり、前進を再開するかと思われた。


「......こ、こっちに向かってくる!?」


 狙いを街からビヨンドに変更したのか、巨人は旋回し、ビヨンドに向かって前進を始めた。

 頭部の赤い一つ目が、ビヨンドを捉える。

 そして、一歩ずつ、一歩ずつ、ゆっくりとビヨンドへと歩み寄る。


「あの目、もしかして弱点......?」


 ビヨンドは弓を構え、目を狙い、矢を発射する。

 矢は小さな目を目掛けて、一直線に飛んでいく。


「どう......!?」


 矢の衝突と共に、再び轟音が響き渡る。

 それと同時に、巨人の動きは止まった。


「やった......!?」


 だが、巨人の赤い目は、壊れてなどいなかった。


「そ、そうよね......。弱点が表に出てるなんて、そんな都合がいい訳ないわよね......」


 ビヨンドは絶望しかけていた。

 自身の強力な武器である虹の弓。

 そんな弓で、掠り傷しか与えられないのだから。


「......近づけば、弱点が分かるかしら......」


 遠くから攻撃してもダメなら、近づいてみればいいのではないか。

 そう考えたビヨンドは、自身が発射した矢、それによってできた虹の上に乗る。

 虹は巨人の目へと続いており、駆け上がれば顔まで接近できそうだ。


 ビヨンドは全力疾走で巨人の顔へと近づいていく。


「動き出すかもしれないから、急がないと......!」


 ビヨンドがそう呟く。

 だが、それが現実となってしまう。


 巨人の腕が動き出し、虹を掴む。

 力を込めているのか、虹を掴む手が震える。


「に、虹を折るつもり!?」


 巨人が更に力を込めたのか、虹が揺れる。

 すると、虹の先端部分がへし折られてしまった。

 そして、巨人は虹を持ったまま、大きく振りかぶる。


「やばい! 逃げないと!」


 ビヨンドは危険を察知し、虹から飛び降りる。

 その予感は当たり、ビヨンドが先ほどまで立っていた場所に、へし折った虹が飛んでいく。


 その虹は地面へと突き刺さり、地面が揺れる。

 虹が突き刺さった場所には、大きな穴が開いていた。


「あ、あんなの当たったら、跡形も無いくらい体がバラバラに......!」


 もし、あの虹が自身に衝突していたら。

 そんなことを想像してしまい、身の震えが強くなる。


「虹の弓はダメかも......。だったら......無理やり近づいてやる......!」


 ビヨンドは意を決し、自ら巨人へと接近し始めた。

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