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怪盗少女ビヨンド   作者: Melon
第4章 暴走

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決意

「うぅぅ......」


 仰向けのビヨンドを、何も見えないほどの闇が覆う。

 石壁が崩れ落ちてきたのにも関わらず、体は動かせるし、痛みもない。


「私、どうしたの......?」


 暗闇に目が慣れ、目の前がハッキリと見えるようになる。

 そして、目の前には、真っ赤な血。


「......っ! フェルノアさん!?」


「だ......大丈夫、か......?」


 ビヨンドは瞬時に理解した。

 フェルノアが身を挺して自分に覆いかぶさり、石壁から守ったのだと。


「す、すぐに助けますから!」


 ビヨンドは足を上に伸ばし、靴底で石壁に触れる。

 疾風の靴の能力を発動し、石壁を蹴り上げる。

 重そうな石壁は軽々と吹き飛び、ビヨンドたちを月光が照らす。


「はぁ......はぁ......」


 フェルノアが倒れ、すぐさま体を起こすビヨンド。


「フェルノアさん! しっかりしてください!」


「......ビヨンド、先に、逃げろ......!」


「嫌です! 絶対に連れて帰ります!」


 ビヨンドは小さな体でフェルノアを担ぐ。

 靴の能力を発動し、フェルノアを運ぶ。


「ビヨンド、よく聞け......! もし、これがただの地震じゃなかったら......。戦宝の力による地震だとしたら......。相手は強大な力を持っていることになる......! エリューを滅ぼすほどの、強大な力を......!」


「エ、エリューを滅ぼすって......!」


「だから、まずは確かめて来い......! それで、ただの地震だと分かったら、俺を助けにくればいい......」


「で、でも! その間に見つかりでもしたら......!」


「......俺の戦宝、劫火(インフェルノ)の(・)手袋(グローブ)の力はさっき見ただろ......? 意識さえあれば、俺は雑魚兵相手に負けることは......。がはっ! ごほっ......」


 勢いよく血を吹き出し、苦しそうに咳き込む。


「フェルノアさん! 死んじゃダメですって!」


「はは......。俺はこの程度じゃ死なねぇよ......。それより、早く......!」


「......分かりました。必ず、戻ってきます。フェルノアさん、死なないでくださいね......!」


 ビヨンドは立ち上がり、意を決した。

 靴の能力を使い、混乱している敵地を駆け抜ける。

 敵陣から脱出し、馬の元まで戻ったところで、靴で上空へと飛び上がる。


 月光に照らされているとはいえ、辺りは暗い。

 黒い森、その奥には、黒い山。


 だが、反対方向を見てみると、森の奥に、一つの巨影を発見できた。


「......っ!? 何アレ......!? 巨大な影が、エリューの都市に向かって歩いて......!」


 ビヨンドは本能で察した。

 強大な力を目の前にしたことにより、人間としての本能がビヨンドに警告する。


 滅亡。


 このままだと、エリューは滅ぶ。

 今すぐ逃げ出さないと、自分は死ぬ。


 地面に着地し、馬に乗る。


「ど、どうしよう......!」


 ビヨンドの脳内で、一つの言葉が反響する。


 逃げろ。


 本能がそう告げる。

 だが、それに対抗するように、もう一つの言葉も現れる。


 戦え。


 人間の本能ではない、怪盗としての本能が、脳内でせめぎ合う。

 このまま逃げれば、エリューは滅び、怪盗として生きる世界を失う。

 これからも怪盗として生きるには、このまま戦うしかない。


「私は......!」


 二つの言葉が拮抗する中、更にもう一つの言葉が間に入る。


 守れ。


 それは、人間の本能でも、怪盗の本能でもない、ビヨンドの本能による言葉だった。


「私は......! みんなを守りたい......!」


 十六歳の少女、国を滅亡から守るには、些か幼さ過ぎる。

 だが、そんな少女の震える体は、逃げるどころか、強大な敵へと向かい始めていた。


「私が......守る!」


 ビヨンドは馬に指示を出し、巨影の元へ走りだす。

 エリュー(生きる世界)が滅べば、自分の人生は終わったも当然である。

 そんな思いを胸に、ビヨンドは戦う決意をした。

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