目覚め
内部の警備は薄く、どんどんと奥へ進んでいく。
「全然兵士が居ないですね......」
「これだと、対した情報が無いかもな......。一応、調査は続けるが......」
二人はコソコソと話ながら進んでいき、中央の石造りの建物へと辿り着いた。
フェルノアは歩みを止め、手の平をビヨンドの目の前に出し、止まるよう指示する。
「兵士が居る。何か話しをしているみたいだ......」
ビヨンドとフェルノアは耳を澄まし、兵士の会話を盗み聞きすることにした。
「......そういえば、グレイブ国の奴らが行方不明になって、数日が経過したな......」
「山賊にでも襲われたんじゃないか?」
「学者みたいなひ弱な男と、頼り無い若者、それに、馬車の運転手。山賊に襲われても負けそうだもんな」
「......でもよ。一応、潜入目的で行方を眩ました可能性も考慮して、各地に徴兵してるんだろ? 俺たちも行くことになるのかな......」
「嫌だな......。この砦の警備ですら嫌なのに、森で野宿するなんて......」
兵士たちの会話を、ビヨンドとフェルノアはしっかしと聞き取った。
「なるほどな......。エリュー軍が活発に動いてたのは、グレイブ国の奴らを探していたからなのか......」
「......グレイブ国って、この辺の国じゃないですよね?」
「ああ。ここから二つ国を挟んだところにある。だが、その二つの国は、グレイブの属国だ。だから、実質は隣みたいなもんだ。エリューに攻めようと思えば、簡単に進軍できる」
「ふーん......」
「......エリュー軍の動きが怪しいと聞いたからわざわざ忍び込んだが、対した情報じゃなかったな......。......帰るぞ」
「は、はい」
フェルノアは、来た道を戻ろうとした。
次の瞬間、物凄く強く地面が揺れた。
「なんだ......!? 地震か......!?」
「か、かなり強いですよ......!」
二人はその場に手を付き、揺れに耐える。
あまりにも強く、その場から動くことができない二人。
周りの建物は崩れていき、兵士たちも叫んでいる。
「......っ! 上......!」
ビヨンドは上を見上げる。
ビヨンドのすぐ隣にある石の建物。
その建物の壁が、二人の元に向かって落下してきていた。
ほんの少し前。
「......ん? 何だ? レンガ?」
ナターシャが穴を掘っていると、レンガの様な材質で作られた壁が、目の前に立ちはだかった。
ナターシャは地上付近まで戻り、エルダに声をかける。
「おい、何か怪しい壁を見つけた。私の螺旋の槍ですら砕けなかった。もしかしたら、お前の探している何かかもしれんぞ」
「えー? 何々? 壁だって? それじゃ、ちょっと見てみるか」
エルダはナターシャと共に穴へと入っていき、壁の元へ向かう。
そして、謎の壁をまじまじと見る。
「うーん......? 光はこの壁の向こうに続いてるのかな......? というか、この壁は何なんだ? ナターシャですら貫けないなんて......」
エルダは壁が何なのかを確かめるために、そっと手を触れた。
すると突然、地面が大きくと揺れ始めた。
「わっ! 何だ!?」
「おいエルダ! 何をした!」
「ちょ、ちょっと触っただけだよ! それより、穴が崩れるよ! 上に槍を突き刺して、土を払ってよ!」
「クソッ! お前が余計なことをするから......!」
ナターシャは、金色の槍を上に向かって突き刺すと、槍の先端が回転を始めた。
崩れ落ちていく土は、槍の回転に弾かれていく。
「あれ、なんか地面が動いて......!」
「な、なんだ......!?」
エルダとナターシャの足元に、壁と同じ材質の床が現れる。
そして、その床は二人を地表まで押し上げた。
それどころか、もっと上まで押し上げられそうだった。
地表までせり上がっても、まだまだ止まる気配は無い。
「と、飛び降りるよ!」
二人は床から飛び降り、地面に着地する。
そして、自分たちの背後を振り返った。
「な、なんだこりゃ......!」
そこには、天まで続く壁。
距離を取り、全貌を確認する。
「こ、これは......!」
「レ、レンガの巨人じゃない!? これ!?」
二人が壁を見上げると、そこには顔の様な物が付いていた。
そして、地面が更に強く揺れ、地面から足が出てくる。
「お、お前! とんでもないことをしてくれたな!」
「ま、まさかこんなことになるなんて、思ってもいなかったから......!」
「畜生! 取り合えず逃げるぞ!」
「ま、待ってよ! せっかくだから、こいつが何をするのか見ていたい......」
「見るにしても、もっと距離を取れ! ほら、行くぞ!」
ナターシャはエルダの服の襟腰を掴み、引きずりながら避難した。
近くの木の陰に隠れ、巨人の様子を伺う。
「......こいつは、エリューを守るのか。それとも......」
「僕たちからしたら、攻撃してくれた方がありがたいけどねぇ。エリューが壊滅すれば、調査も捗るだろうし」
エルダは危機的状況である可能性があるのにも関わらず、笑いながら巨人を眺めていた。




