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怪盗少女ビヨンド   作者: Melon
第4章 暴走

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炎

 数時間後。

 暗い森を抜け、警備兵が守る橋へと辿り着いた。

 鉄の剣と鎧を装備した、二人のエリュー兵が橋を守っていた。


「警備兵が二人ほどいますね」


「......ビヨンド。やってこい」


「分かりました」


 ビヨンドは馬から降り、草むらに隠れながらコッソリと近づく。


「ん? そこの草むら、今動かなかったか?」


「どうせ、小動物か何かだろ」


「まぁそうか。こんな山奥に、人なんて......」


 次の瞬間、草むらから勢いよくビヨンドが飛び出し、傘で兵士の頭を殴る。


「ぐぁ......!」


 兵士は兜を被っていたとはいえ、強い衝撃が頭を襲ったため、怯んでしまった。


「か、怪盗!? な、何故こんなところに......!」


 ビヨンドは即座にもう一人の兵士に接近し、足を払う。


「うわっ......!」


 兵士は転び、仰向けになってしまう。

 そして、同じように兵士の頭を傘で殴る。


「がっ......!」


 兵士が頭を殴られ、口を開ける。

 その隙に、口封じとして綿を詰め込む。


「むぐっ......!」


 兵士が暴れ、抵抗しようとする。

 すると、ビヨンドは再び頭を殴り、落ち着かせる。


 兵士が静かになると、綿を吐き出さないように口に布を咥えさせ、後頭部で縛る。

 そして、腕と足を即座に縛り、声を出すことも動くこともできなくした。


「お、おい! 覚悟しろよ!」


 最初に頭を殴った兵士が、剣先をビヨンドへと向ける。

 兵士は新米なのか、手足がプルプルと震えていた。


「そんなんで勝てると思うの?」


「う、うるさい!」


 兵士は剣を振り上げ、ビヨンドへと近づく。

 だが、新米の剣術など、ビヨンドには通用しない。


 兵士は剣を外してしまい、疾風の靴の力で加速したビヨンドに突き飛ばされる。

 そして、木に思い切り叩きつけられ、立ち上がれなくなってしまった。


 そんな兵士にも、同じように綿を詰め、無力化していく。

 二人の兵士を完全に無力化すると、フェルノアの元へと戻っていった。


「......お前、ラッティみたいに荒々しいな......」


「まぁ、ラッティさんの訓練を受けてましたからね。でも、こんな無理やりな戦い方をするのは、雑魚相手の時だけですよ」


「そ、そうだといいんだが......」


 ビヨンドが馬に乗る様子を、若干不安に思いながら眺めるフェルノア。


「ま、まぁいいか。行くぞ」


 二人は馬を走らせ、砦へと向かった。




 再び森を馬で駆け抜けると、正面に明かりが見えてくる。


「あそこだ」


 見張りの兵士にバレないように、ギリギリまで砦に近づく。

 砦は石の壁に囲まれており、唯一の入口と思われる場所には、五人ほどの兵士が立っていた。

 橋を守っていた兵士と同じように、鉄の剣と鎧を装備している。


「入口に五人ということは、中には数十人くらい居そうですね。どうします?」


「お前はどう思う?」


「私だったらこの靴で壁を飛び越えちゃいますけど、それだとフェルノアさんが着いてこれないですよね?」


「あぁ、そうだな」


「あーあ、私だけだったらなぁ......」


「お前、ラッティに対する態度と、俺に対する態度が違いすぎないか......?」


「じゃあ、ラッティさんみたいに凄い所を見せてくださいよ」


「チッ......。分かったよ」


 フェルノアがそう言うと、手にはめている黒い手袋が、赤く輝きだした。


「おい、なんだあれ!」


 手袋が赤く輝きだしたのと共に、兵士たちが驚き始めた。


「燃えてる狼か!?」


「クソっ! なんだよあれ!」


 ビヨンドがコッソリと草むらから顔を出すと、そこには不可思議な光景が広がっていた。

 炎を纏った狼が、兵士たちを襲っていたのだ。


「狼......? いや、炎が狼に見えるだけ......?」


 兵士たちが狼に剣を振るうも、狼の体を通り抜けてしまう。

 ただの炎であるのだから、当然である。


「熱いっ! 助けてくれ!」


 兵士たちは炎に包まれ、熱さで叫ぶ。

 その叫び声を聞きつけた兵士たちが、中からぞろぞろと駆け出してくる。


「この炎......! まさか、怪盗フェルノアの......!」


「どうしてこんなところに! こんな所に宝は無いし、そもそも予告状も何も届いていないぞ!」


 炎の狼は次々と数が増えていき、兵士たちを混乱させる。

 フェルノアはその狼たちを操っているのか、狼たちはまるで入口から兵士を遠ざけるかのように、砦から追いやっていく。


「今だ。行くぞ」


「は、はい......!」


 兵士が外に出切ったタイミングを狙い、二人は入口から入り、すぐ近くの草むらに身を隠す。

 フェルノアが周囲の様子を確認している一方、ビヨンドは不安そうに、炎に包まれる兵士たちを見ていた。


「......言っておくが、あの兵士たちは死ぬことは無いぞ。俺だって怪盗だ。殺しはしない。......それじゃあ、ここからあの一番大きい建物に進むぞ」


「わ、分かりました......」


 フェルノアの後に続き、ビヨンドは歩き始めた。

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