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24-1話




エグジット・スピードを欠きながら未だ七人の侍とEエスケイプFフロムTトゥモロー、そしてラストエンペラーを有する晴斗に智琉達は危機的状況にまで追い詰められていた。

智 (こりゃかなり不味い……、どうする?)

晴斗を睨みながらもかんばしくない表情を浮かべる智琉を晴斗は焚きつけた。

晴「どうした?来ないのか?」

そう尋ねる晴斗の目はゆっくりと衆治の方へ向けられた。

晴「手を打ってこないのなら別に構わない。それならそれでこちらもするべき事が残っている」

智琉を視界の端に追いやり晴斗は正面に捉えた衆治に歩み寄ろうとした。自身のアンノウンを抉られ瀕死の状態にある衆治から始末しようという考えからの行動である。

智「ま、待て……!」

智琉の言葉を聞き入れず衆治へと歩みを進める晴斗の前に、カードを握りしめ悪魔と共に立ちはだかる弥結の姿があった。

智「弥結!」

天使を倒された体力の消耗から息が絶え絶えではあるが、それでも衆治の盾となって佇む弥結の目には確固たる決意が伺えた。

晴「……何の真似だ?」

弥「…………貴方が衆治の命を狙うのなら、私は全力でそれを阻む。命に替えてでも、衆治の命を守りたいから……」

真っ直ぐな目をして言い放つ弥結に晴斗の口調は心なしか僅かに穏やかさを含んだ声に変わった。

晴「その心意気には全く以って感嘆する。しかし、お前の様な考えの存在がくある事に誰も興味を示しはしない。それが実態だ」

晴斗の言葉に弥結の頭の中に疑問が渦巻いた。

弥「……何を言って……?」

晴「お前達が考えている程、人命とはとうとばれてはいない。無抵抗に等しい弱者を何食わぬ顔で踏み荒らす輩が混在するのがこの世界だ。その現状をお前達は正気の沙汰と容認するか?」

先程とは打って変わり、晴斗の語り聞かせる言葉はいつもに比べ一層その激しさを増していた。そしてその中には今までに見せた事の無い悲痛な感情が込もっているのが感じ取れる物言いであった。

晴「自らの欲得と保身の為にしか生きない下衆な者共が我が物顔で蹂躙じゅうりんする世界で被害をこうむる犠牲者がいる。存在をないがしろにされ嘆く事すら叶わない悲しき者達。彼らの様な救済を必要とする者に救いの手を差し伸べ、あるべき道へといざなう。俺が振るうのはその為の力であり、それをまことと成す為に俺は今お前達との戦いにのぞんでいる。これを聞いて尚お前達が制する理由があるか?」

智「…………傲慢だよ」

自らの思いを語る晴斗に対し智琉は率直に感じたままの感想を吐露した。

智「お前がこの世界を強く憎んでいる事はよく分かった。けどお前の言ってる事は傲慢にも程がある。一体どんな偏屈な見方をすりゃそんな事が言えるんだ?目の中に鏡でも入ってるのか?」

晴斗は言葉で自身を否定する智琉に哀れむ様な眼差しを向けた。

晴「お前は真にこの世の全てを見てきたのか?人というものが何を考え何を欲して何を成してきたのか、見るに耐えない浅ましき所業の全てをお前はその目に映してきたとでも言うのか?」

毅然な態度で言い張る晴斗に智琉の口はほんの少し沈黙した。

智「…………俺は自分の人生を生きるのに手一杯だし、お前がどんな苦労を味わって来たのかなんて全く分からない。けど、お前の目論んでる事がこの世界にとって正しいとは到底思えてこない。少なくとも、俺達にはこの世界をどうこうしようなんて野望は必要ないし、大きな力も欲しない」

晴「……俺がどれだけの苦悩の果てに下した決意かも思索せずに、その程度の見識で岡目八目を語るか。お前の様な者の見る世界はさぞや平凡で変哲無い世界なのだろう。だがそれではこの世全てを見通したとは天地が返っても言えんな」

智「……そうかもしれない。俺のこのたった二つの目じゃこの広い世界の裏も表も全部見渡すなんて事は不可能だ。それでも、その中でも俺達に優しく接してくれた人達もいた、分かり合える人達もいた。お前の言う様な人の心を持ってるのか疑う様な奴らも確かにいた。けどな、この世界にはそんな人間ばかりじゃないって事は俺の言葉ででも断言出来る。少なくとも俺はそういう世界をこの目で見て来た」

レッド・ドラゴンを手にしてからの壮絶な日々の中で出会って来た色んな人々。数多くの優しさ、頼もしさを教示してくれた心壱や弥結、衆治の思い。そして何よりも、命を呈して自身を守ってくれた祖父、勤の優しさが今の智琉の内を熱く駆け巡っていた。智琉の言葉に嘘偽りが無い事は智琉の目や表情、声から晴斗は容易に受け止められた。

晴「……浅薄かつ酷薄な感想だな。だが、今の俺にはそんな言葉を語れるお前が羨ましくも思えてくる。他愛の無い虚言、妄言で全てが取り繕える程に世界が楽観なものであれば、俺も世界の変革など求めはしなかっただろう」

智「…………なんでそんな言葉遣いするんだ?」

晴「?」

意図しない問い掛けに晴斗は少し驚きを見せた。

智「お前に会った時から少し気になってた。どうしてそんな小難しい話し方をするんだ?」

唐突な質問に晴斗はどこか遠い目をして答えた。

晴「俺も人の子だ、己以外の存在を仰ぎ見る事もある。自分ではない誰かに羨望せんぼうを焦がれる事もある、それだけに過ぎない」

智 (………………)

その答えに智琉は納得出来ずにはいたがそこにそれ以上の言及はしなかった。

智「…………もう一つだけ、どうしても聞きたい質問がある」

晴「許す、問うてみろ」

智「お前は……、お前達はどうしてあの場所を、あの遊園地を身を隠す場所に選んだんだ?」

晴「何?」

智琉の問い掛けの枢軸が晴斗には見えてこなかった。




続く


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