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23-4話




晴「小賢こざかしいからめ手を重ねる……」

ハサミを構え迫り来るシザーハンズに向けて晴斗はエグジット・スピードの両手を広げ音波を放とうとした。しかしそれを智琉が滞空し残っていたエネルギーの足場をエネルギー弾としてエグジット・スピードに全弾砲火し攻撃を防いだ。

智「行けえ!衆治!」

晴「ちぃ……」

勢い迫るシザーハンズと自身の間に晴斗はEエスケイプFフロムTトゥモローを瞬時に呼び出し手を突き出した。

晴「メディエイターの力を以ってしても、その力を押し込まれれば……」

真っ直ぐに突進するシザーハンズがそれを振り払うよりも速く、E・F・Tの伸ばした腕がシザーハンズの胴体に触れた。しかしシザーハンズの勢いは全く衰える事無く、逆にE・F・Tを蹴り飛ばした。

晴「何だと!?」

その時、晴斗はシザーハンズの背後の存在に気が付いた。シザーハンズの背中には小さな人型の姿が負ぶさっていた。それは烈晶山にて衆治が雪久から受け取ったUCアンノウンカード。目覚めない智琉の意識を戻す為に衆治が手に入れたアンノウン、アイズ・ワイド・シャットであった。

衆 (アイズ・ワイド・シャットの能力、それは物質にひずみを作るというもの。出来た歪みの隙間は凡ゆる物の出入り口として機能する。どれだけE・F・Tが力の流れを能力で閉じ込めようが、アイズ・ワイド・シャットの作る歪みの隙間からなら解き放てる。押し込められた力も、封じられた魂も!)

智琉の意識を取り戻した時と同様、衆治はE・F・Tによって押し戻されるシザーハンズの勢いをアイズ・ワイド・シャットの能力を活かして打ち消したのだった。衆治はアイズ・ワイド・シャットをシザーハンズから飛び出させると、そのままE・F・Tに向かって勢いよく体当たりを喰らわせた。バランスを崩し倒れるE・F・Tを飛び越えシザーハンズは晴斗に向けて右腕のハサミを振り翳した。

晴「思惑通りに運ぶと思うな!」

晴斗は唯一、物陰に潜ませていた一体の侍の刀にエネルギーを溜めさせ斬撃を一撃放った。その攻撃にシザーハンズは回避する間も無く右腕の肘から下を斬り落とされた。その結果に晴斗の緊張は一瞬だが緩んだ。それを衆治は逃さなかった。

衆「……いいや、全て思い通りだ!」

晴「!?」

衆治の顔は不敵な笑みで満ちていた。シザーハンズの残った左手には何かが握られていた。それは矢であった。衆治はシザーハンズの左手に天使の矢を隠し持たせていたのだった。

晴「何……!?」

シザーハンズは矢を構えると真正面の晴斗に投げつけた。目を丸くし体が動けないでいる晴斗の胴を放たれた矢が貫通した。

智「通った!」

衆「弥結の天使の矢は天使が扱わなくても効果は働く。こうしてシザーハンズが投げつけてもな」

矢を射られ呆然と立ち尽くす晴斗の前にシザーハンズは着地した。

衆「お前は俺達三人にそれぞれ個別の警戒を敷いていた。その結果がこの展開を生み出した。そこに気づけなかったお前の落ち度がお前自身の敗因だ。まあ、もうお前の耳に俺の声は届いちゃいないだろうがな。お前の魂はその矢に……」

晴「高をくくるか……」

衆「!」

衆治は驚愕した。それは智琉と弥結にとっても同じであった。天使の矢に貫かれた筈の晴斗が顔を真っ直ぐに上げ言葉を語っていたのだった。

晴「奇策に奇策を重ねたお前の戦術、なかなかに見事だ。敵ながら見惚れるものであった。だが、お前達は真に理解出来ていない、この俺という存在を」

目の前の現実が智琉達には受け入れ難かった。

智「矢が貫いたのに、晴斗の魂は奪えなかったのか!」

弥「そんな……、そんな筈は……!?」

その時、晴斗の顔面が徐々に動いていく感覚を三人は覚えた。それは気のせいなどではなく、紛れも無く晴斗の人相は原型が崩れていっていた。

衆「まさか……、こいつは!?」

晴斗の顔が崩れ去ったかと思うとその中から出てきたのは晴斗が操作する三体の死体の一つ、篤史の顔であった。衆治達が晴斗だと思っていたそれは晴斗ではなく、先の墓地での戦いの時と同様の手で顔面に屍肉を纏い晴斗に擬態させていた篤史の死体だったのだ。

晴「お前達が思う程、俺は俺自身を優れたものと評価していない。寧ろ酷く下賎かつ憫然びんぜんな人間だという自覚さえある。決して相手を軽視し自惚れに浮つく手段を用いはしない」

衆治はラストエンペラーの背後にその姿を確認した。自身のアンノウンに身を隠しながらカードを握りしめ凛と眼差しを構える晴斗を。

晴「俺が自分自身へ抱く尽きる事無い懐疑心、それを看破し得なかった落ち度がお前達の敗因だ」

その瞬間、晴斗に擬態していた篤史の死体が目の前のシザーハンズに両手を広げしがみ付いた。

衆「なっ……!」

しがみ付いた篤史を振り解く為シザーハンズを動かそうとした時、その頭上には両手の平を真下に構えたエグジット・スピードが飛び上がっていた。

晴「足掻くな。苦痛に身構えろ」

エグジット・スピードが放った渾身の衝撃音波は狙い通り篤史の死体諸共シザーハンズの身体を凄惨に抉り裂いた。

衆「ぐわあああぁぁぁぁっ!」

想像を絶する痛みに慟哭を上げ衆治は膝から地面に倒れ込んだ。

智・弥「衆治!!」

衆治の身を案じた弥結は思わず衆治の元へ駆け寄ろうとした。

晴「戦いの渦中で敵から目を離すか」

弥「え……?」

弥結が僅かに目を離したその隙を突き、天使の上空から飛び掛かった一体の侍が刀を振り下ろし天使を一刀両断に斬り裂いた。

弥「きゃああぁぁっ!」

智「弥結!」

衆「弥……結……」

斬り裂かれた天使の身体は消滅する様にカードに戻っていき、弥結も又、襲い来る激痛に地面に膝を着き伏せた。

晴「ついを成すアンノウンの片割れを失う痛みは想像に余りあるな。衆治に関しては更に上をいくだろう。こちらの戦力一つと引き換えにお前達二人を手負いに出来たのは好ましい事だ」

エグジット・スピードの攻撃で激しく損壊した篤史の死体は動かなくなっていた。その手に握られていたカードも消滅しており、エグジット・スピードも姿が消えていた。原型を失う程の身体の崩壊に伴い篤史の死体はラストエンペラーの制御から外れた結果からの現象であった。その傍らで微かに動こうとするシザーハンズに晴斗は目を移した。

晴「よくぞここまでやってきた。その不撓ふとうは賛美するに相応だ」

晴斗はラストエンペラーを近付けると杖の先端をシザーハンズの真上に構えた。

晴「ひと時の内に瞑目しろ」

ラストエンペラーがシザーハンズに向けて杖の先を落とそうとしたその時、レッド・ドラゴンが突撃して来る様に羽ばたきボロボロのシザーハンズを掴み上げラストエンペラーを撥ね飛ばすと智琉の元へ舞い戻った。

智「衆治、今すぐシザーハンズをカードに戻せ!これ以上は戦えないだろ!」

智琉の言う通りに衆治はカードにシザーハンズを戻した。それを見届けた智琉の眼光はすぐさま晴斗へと向けられた。

晴「後はお前だけだ。覚悟はいいな?」

晴斗の気迫に気圧されぬ様に智琉も気を張り詰めた。




続く



UCアンノウンカード紹介》

アイズ・ワイド・シャット 身長1.2m

持ち主:無し

能力:手の平から開いた目で睨んだ対象にひずみを作り上げる。見た目に見えるものから目に見えない概念まで様々な対象に隙間を作れる他、歪みという形で僅かなズレをも生じさせられる。


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