23-2話
智「まさか……、このアンノウン全部が晴斗の……」
既に生き絶えた者達のアンノウンを自らの手中とし、自分達に牙を向ける晴斗と対峙するその現実を智琉達は受け入れるしかなかった。
晴「調律石とラストエンペラーが生み出せし力、我が理想の為の道しるべに未だ邪魔立てを図るか?」
先程と比べて智琉達の顔に僅かに残されていた余裕は瞬く間に消え去った。
衆「流石にこれは不味いかもな……」
流れる冷や汗を拭いながら衆治はシザーハンズを出現させ、それに続く様に智琉と弥結もレッド・ドラゴン、天使と悪魔を呼び出した。
衆「晴斗、その石は一体……?」
晴「今のお前達に述べる釈義など存在しない。眼前の現実を受け入れて尚その姿勢を崩さないのであれば比類の無き力でもって示して見せよう。完全なる力量の差というものを」
まるで晴斗の所有物かの様に七人の侍全てが晴斗の意思に呼応し刀を構えた。
晴「鬼籍の大海に沈めてやろう」
次の瞬間、七体の侍が一斉に刃をギラつかせ智琉達に斬り掛かった。
衆「くっ!」
三人は一様に襲い来る侍達を自身のアンノウンで防ぐが、スピードと手数で攻め立てる攻撃に防戦一方であった。
智「くそ、このくらい……!」
智琉はレッド・ドラゴンの翼で侍達の攻撃を弾くと、口にエネルギーを集中させ撃ち放とうとした。
衆「よせっ!智琉!」
衆治の声が耳に入ってきた時、レッド・ドラゴンの頭上にはエグジット・スピードが両手を真下に広げて構えていた。次の瞬間、凄まじい爆音と共に目に見えない何かが放たれたのを感じた智琉は即座にその場からレッド・ドラゴンを退避させた。間一髪で避けたレッド・ドラゴンがいた地面は強力な衝撃によって抉れる様に崩れ去った。
智「んな……!?」
衆「気をつけろ智琉、あのアンノウンは音を衝撃にして攻撃を仕掛けてくる。直撃だけは避けろ」
智琉に喚起する衆治の背後から賺さず一体の侍が斬りつけて来た。
衆「!」
衆治が振り返った時、弥結の悪魔が飛び込んで手にする槍でその攻撃を受け止めて弾いた。
弥「衆治も気をつけて。もうこれ以上傷付いてほしくないから……」
衆治の側に寄り天使と悪魔を構える弥結も又、智琉や衆治と同様の思いで戦っていた。
衆「悪い……」
晴「余所見をしている暇など無い筈だぞ」
休む暇を与えず晴斗は衆治と弥結にエグジット・スピードの照準を合わせ音を発射した。
衆「まずい!」
衆治は弥結を抱きかかえ転げ倒れながらその場を離れ音の着弾を躱した。又もやエグジット・スピードの攻撃によって地面にはクレーターが出来上がった。
衆「ちっ、埒が明きゃしない」
弥「侍よりもあの音を止めないと……」
弥結は天使の持つ弓を引かせると、篤史の体目掛けて矢を放った。矢は真っ直ぐに篤史の体を貫通した。が、篤史の体は活動を止めずエグジット・スピードも停止しなかった。
弥「やっぱり死んだ体に矢を撃っても意味が無い。抜き取れる魂が無い以上役には立たない」
衆「なら狙いはただ一つって訳だ」
そう言うと衆治は立ち上がり智琉に呼びかけた。同時に弥結は再び天使の弓矢を引いた。
衆「智琉、弥結の天使の矢を援護してくれ」
智「ああ、やってみる」
天使の弓矢が放たれたと同時に智琉はレッド・ドラゴンのエネルギー弾を空中へ飛ばすとそれを一気に拡散させ地上に降り注がせた。その攻撃は侍達とエグジット・スピードの動きを一瞬の間止め、天使の矢が晴斗の元にまで届く道筋を作り上げた。
智「いける……」
放たれた矢が晴斗に到達する寸前、突如飛ばされた斬撃によっていとも簡単に矢は撃ち破られた。その斬撃は七人の侍の能力で放ったものであり、斬撃に妨害された事で晴斗の魂を奪うまでには至らなかった。
智「……そう上手くはいかないか」
衆「いや、それで良い」
矢が破壊された事は衆治にとって想定の範囲内であった。天使の矢の攻撃に注意を逸らしている間に衆治はシザーハンズをラストエンペラーに向けて突撃させていた。
弥「衆治!」
勢い良く駆け抜けるシザーハンズに向けて七人の侍は一斉に刀にエネルギーを集めて構えた。
智「まずい衆治、この侍は斬撃を……」
衆「ああ、分かってる」
侍達の七つの斬撃が撃ち飛ばされた瞬間、衆治はシザーハンズの能力を発動させた。複雑に交わる軌道を描いて放たれた斬撃をシザーハンズは一つ一つを紙一重で躱していった。能力が切れ見える世界の速度が戻った時、シザーハンズは着実にラストエンペラーの懐まで入り込んでいた。
衆「捉えた!」
ハサミを構えラストエンペラーの喉元に踏み込もうとしたその時、シザーハンズの背後にE・F・Tが現れるとシザーハンズの背中にその手の平を突き出した。E・F・Tに触れられたシザーハンズは一瞬にして勢いを失い、バランスを崩して倒れ込んだ。
衆「ぐっ……」
地面に伏すシザーハンズを晴斗は冷ややか眼差しで眺めた。
晴「攻め方は決して悪くない。だが……」
衆治は急いでシザーハンズの体勢を立て直そうとするが、その背中をE・F・Tに押さえられ上手く立ち上がれなかった。シザーハンズの身を起こそうとする力さえもE・F・Tの能力によって体内に押し戻され身動きが取れなかった。
晴「こうしてしまえば身を起こすのも至難だろう?」
這いつくばるシザーハンズに向かって四体の侍が刀を振りかざし飛び掛かってきた。
衆 (ちっ……)
刀が目の前まで迫って来たその時、シザーハンズは力一杯ハサミでE・F・Tを振り払うと侍が振り下ろした刃が届く前にその場を離脱し衆治の元へと身を帰した。カードを握りシザーハンズを構え、晴斗へと睨みを効かす衆治の目は黄金色に煌めいていた。
晴「いよいよ以って大童という訳か」
メディエイターの効力でシザーハンズの能力を強化させ危機を脱した衆治だが、予想だにしなかった晴斗の力の強大さに打つ手を出せなかった。それは智琉と弥結にとっても同じであった。
智「……晴斗に攻撃が通せない」
三人はこの状況に油断を許されなかった。
続く




