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23-1話




心「目が覚めたんだね、智琉くん!」

智琉の回復をその目にした心壱は安堵した。

智「はい、心配かけたみたいで」

衆「生憎だが悠長に駄弁ってる暇は無いぞ」

衆治は既にカードを具現化し晴斗から睨みを外さずにいた。

晴「案内感謝する。戻って構わん」

晴斗は心壱に目を向けそう言った。

心「……君は僕を人質としてここに連れて来たんじゃないのかい?」

晴「体のいい虜囚りょしゅうになどなる謂れもないだろう。でなくとも、奴らに対してその様な策は不要だ」

自身に対して警戒の目を向ける智琉と衆治を眺めながら晴斗は確信するかの様に答えた。

晴「行け」

晴斗に言われるがまま、心壱は智琉達のもとへと戻って行った。

智「大丈夫ですか、心壱さん?」

心「うん、何とも。彼から僕に対する敵意というものは全く感じられなかった。彼は何というか、凄く不思議だよ」

心壱には晴斗の印象が衆治の話から聞いていた程の悪い存在に感じられなかった。

衆「兎に角ここにいるのは危険です。心壱さん、弥結を連れて早く……」

弥「私は残る……」

衆「はっ?」

智「!」

弥結の唐突な台詞に三人、特に衆治は自身の耳を疑った。

衆「な、何考えてんだお前!お前には関係……」

弥「あるよ!」

衆治の制止を阻むかの様に弥結は声を上げた。

弥「私も力になれる筈だし、何よりもう部外者でいたくないの……。衆治の見ている世界に一緒に居させて……」

衆「弥結……」

弥結の切実なる本音に衆治は心壱に目線を送った。心壱はそれを理解し子供達が待つ孤児院へ立ち去った。

心「……気を付けて」

智琉と衆治と共にその場に残った弥結に晴斗は不可思議な表情を浮かべた。

晴「お前も、この俺に自らの牙を研ぐか?」

その言葉と共に晴斗はカードを手に具現化し問い掛けた。それに弥結は自分もカードを具現化し答えた。

弥「貴方が衆治達にとって危険な存在だとするなら、私は貴方の敵になる事を躊躇わない!」

晴「…………お前の内からはどこか燈葉に似たものを感じるな。ならば俺の言葉でお前を説き伏せるのは不可能だろう」

弥結の覚悟に納得した晴斗は自らのカードからラストエンペラーを出現させた。

晴「己が力の全てでもって、その希薄なこころざしを示してみせろ」

現れたラストエンペラーが醸し出す威圧感に押されながらも弥結は決して意志を覆さなかった。そして智琉も又、自身のカードを具現化させ戦う意志を露わにした。

晴「分かってはいたが、やはりその気か」

衆「俺達の戦力に不足は無いからな。寧ろこの状況じゃお前の方が不利だろ?」

晴「何?」

衆「そうだろ?あの遊園地にいたお前の仲間達は俺と智琉に全員倒された。連中以外にお前の仲間と呼べる奴らもいない筈だ。そして肝心のお前のラストエンペラーの能力もここじゃ役には立たない」

微かに顔をしかめる晴斗に衆治は昂然と言い放った。

衆「あの時はお前が言った通りお前が戦う上で最も有利に働く地だったが、ここにお前が操作出来る様な御誂おあつらえ向きな死体なんて存在しない。その墓石はあくまで墓碑であってその下には何も埋まっちゃいないし、さっきみたいに鳥の死骸を操った所で俺達三人を相手にするのには不十分だ。結論から言って今のお前には俺達に対抗する戦力、つまりは勝ち筋が無いって訳だ」

衆治の言う通り、先日二人が晴斗との戦闘に遭遇した場所は墓地というラストエンペラーを相手にする上で最も不利な立地であったが、この状況においては晴斗に地の利が皆無に等しかった。しかし、衆治の言葉を晴斗はあしらい往なした。

晴「高説は痛み入るが構う程の事も無い。何の手立ても無しに強襲を仕掛ける程に愚鈍でもないのでな」

その時、智琉達三人は背後に複数の人影を感じ振り向いた。そこに現れたのはなんと燈葉、昌気、篤史の三人の姿であった。三人の目に生気は無く体中に多くの擦り傷もあり明らかに正常とはかけ離れていた。その三人がもうすでに屍であると智琉達が理解するのにそう時間は要さなかった。

智「こいつらは……!?」

衆「仲間の死体まで利用するのか。だとしても動きの鈍い操り人形が三体増えただけじゃ形勢は変わらないぞ」

突き付ける様な衆治の言葉にも晴斗は澄ました顔のままであった。

晴「こいつらは俺の仲間だ。ただの人間には持ち合わせないものを所有している事はお前達も充分承知の筈だが」

智「所有……?まさかそれって……!?」

晴斗の言葉がアンノウンの事を指している事を直感した智琉は嫌な予感を覚えた。

智「こいつらが持っていたアンノウンを使えるのか?死体を操るって……」

衆「馬鹿も大概にしとけ。幾ら死体を操れたって死体は死体、そいつが持っていたアンノウンまでは使えるもんじゃない。魂の無い人間のUCアンノウンカードを操るなんてメディエイターにも出来ない事をお前がやろうなんて不可能な話だ」

智琉の言葉を遮る様に衆治は晴斗に向かって言い放ったが、それにも晴斗は涼しい表情で返した。

晴「そうだ。いや、正確にはそうだったと言うべきか?」

衆「は……?」

晴斗はふところからある物を取り出した。晴斗の手には異様な光を放つ黒色の石が握られていた。

晴「手向けとして見せてやろう。この石の力、調律石がもたら御技みわざを」

晴斗は自身の前にラストエンペラーの持つ十字架の形の杖を構えさせ、杖のクロスする部分の凹凸おうとつにその石をはめ込んだ。その時、はめ込まれた石が強力な光を放ち煌めいた。

弥「……な、何なの?」

その光が治ると晴斗はラストエンペラーの杖を大きく振り扇いだ。その瞬間、三体の死体は一斉に自らの手にカードを具現化したかと思うと、それぞれのアンノウン、エグジット・スピード、七人の侍、EエスケイプFフロムTトゥモローが智琉達の目の前に現れたのだった。

智「なっ……!?」

衆「……馬鹿な……!?」

弥「嘘……!?」

三人は目の前の出来事が信じられなかった。そしてその状況の険呑けんのんさに身が震えてきていた。

晴「これが調律石によって完成されたラストエンペラーの力。鼠を叩きつけるが如く、お前達を一瞥いちべつの内にほふれる力の在り様だ」




続く


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