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22-2話




心壱から聞いた男に会う為、衆治と弥結は烈晶山を登り続けていた。山の標高は相当高く中腹を過ぎた辺りからの気温は非常に冷え込んでいた。

衆「かなり冷えるな」

弥「もうちょっと厚着してくれば良かったかも」

吹き荒ぶ寒風に逆らいながら二人は道無き道を登って行った。

衆「弥結」

弥「何?」

衆「心壱さんが言ってた男の事だが、一年くらい前って事はお前もその男の事は見てるんだよな?」

弥「うん。ちらっとだけしか見てないからはっきりとは覚えてないけど。でも見た目からは何となく優しそうな雰囲気があった気がする」

衆「人は見かけにはよらない、良くも悪くもな」

弥「それって……」

その時、吹き荒いでいた風が突然に力を増した。と同時に風の中に急に大量の雪も混ざり、先程の風とは比べ物にならない程の吹雪となって二人に襲い掛かった。

弥「きゃっ!」

衆「ぐっ、何だ急に!?」

あまりに強力な吹雪は二人の視界をものの数秒で完全に真っ白にしてしまった。

衆「くそっ」

白一色になりつつある辺りの風景を急いで見渡した衆治は、偶然にも少し先に薄っすらと見える洞窟の存在を確認した。

衆「弥結、取り敢えずあそこまで急ぐぞ」

弥「うん、分かった」

二人は全力で洞窟まで走ると中に入り吹き荒れる吹雪から逃れた。

弥「はあ……、急にびっくりした。山の天気は変わりやすいって言うけどこれは予想外」

衆「…………おかしくないか?」

弥「え?」

衆治は何か腑に落ちない顏をして言った。

衆「変わりやすいって言っても流石に今のは少し異常だ。そもそもこの山はこんな大雪が荒れる程の標高がある訳でもない。何か怪しい」

弥「怪しいってどうゆう意味……?」

真意を尋ねようとした弥結は衆治の表情からそれを察した。

弥「……もしかしてこの雪って、アンノウンの能力……?」

衆「あくまで可能性の話だが、そう考えれば色々納得がいく」

弥「もしアンノウンだとして、それを操ってるのって……」

衆「俺達が今目指してる人物で間違いないんじゃないか?その意図までは分からんが……」

その時、洞窟の奥の暗闇の中に一瞬何かが光ったのを二人は視認した。

弥「何、今の?」

衆「……俺達を招いているのか、或いは……」

衆治は一度外を振り返ったが吹雪の勢いはおさまる気配も無く出る事は明らかに不可能であった。

衆「立ち止まってる暇は俺達には無い。例え罠だとしても今俺達が進めるのはこの道だけだ」

弥「……分かったよ、衆治」

危険を覚悟の上で二人は洞窟の奥へ足を進めた。灯りの無い真っ暗闇をスマホのライトで先を照らしながら進んでいった。

弥「衆治、智琉さんとはどこで出会ったの?」

衆「何でそんな事聞く?」

弥「ちょっと気になっただけ」

衆「……とある小さな町でだ。その町の元締めみたいな奴に案内されて俺の元に来たのがあいつだ」

弥「どうして衆治のとこに?」

衆「あの時の智琉はアンノウンに関して何も分かってなかったからな。それを知る為に俺んとこに連れて来られたんだろ」

弥「そっか」

弥結は妙に生暖かい笑顔を衆治に向けた。

衆「何だよその顔?」

弥「智琉さんが衆治を必要としたから二人は出会って、そして智琉さんと行動を一緒にしたからこそ衆治は危機を乗り越えて来れた訳でしょ?智琉さんも衆治にとっての恩人なのかもね」

笑顔で語る弥結であったが、衆治は少し顔を曇らせた。

衆「……そんなもんでもねえよ」

弥「そう?でも……」

衆「あいつと会うまでにもいたよ、左うちわな馬鹿がなあ」

弥「なにそれ?」

衆「そいつだけじゃない。本当にいろんな人達と出会って来たさ。心壱さんみたいに優しい人や、お前と姿が重なる奴もいた」

弥「それっていつの事?全然聞いた覚え無いけど?」

衆「昔の事だ。記憶も段々と霞んでいってる」

弥「…………また会いたい?その人達と?」

衆「………………どうだかな。その時は多分……」

その時、二人の目線の先にフラフラと漂う小さな光がゆっくりと近付いて来た。

衆・弥「!」

二人の前に現れたのははち程の大きさの羽虫の様な物体が微弱に発光しながら浮遊していた。

弥「さっきの光の正体はこれだったんだね。でも何でこんな場所に虫が一匹だけで……?」

衆「そういった疑問は大概アンノウンに繋ぎ合わせれば通る」

弥「じゃあこの虫も……?」

その次の瞬間、衆治の持っていたスマホのライトの明るさが急速に落ちていった。

衆「何!?」

弥「ま、まずい!」

弥結も急いで自分のスマホを取り出しライトを点けるが、弥結のライトも点けた瞬間に明るさを失い機能しなくなってしまった。と同時に二人の前に浮遊する虫の光が強くなっているのが分かった。

衆「そういう事か。この虫が……」

弥「私達の光を吸い取ってるって言うの!?」

理解したのも束の間、発光する虫は衆治達から逃げるかの様にすぐさま飛び去って行ってしまった。

弥「ま、待って!」

明かりを失い何も見えず一気に不安が募る二人に追い打ちをかけるかの様にけたたましい轟音が洞窟内に鳴り響いた。

弥「何!?今度は何なの!?」

衆「一体何だ?」

その時、轟音と共にやって来たそれは衆治と弥結に襲い掛かった。音の正体は水であった。二人が入って来た洞窟の入り口の方向から大量の水が洪水の如く押し寄せ二人を飲み込んだのであった。

衆「み、弥結!大丈夫か!?」

弥「衆治!衆治!!」

激流の如き勢いに逆らい様のない二人はそのまま洞窟の行き止まりまで流された。止めどなく流れ込んでくる水の量に洞窟内の水嵩みずかさは満杯になろうとしていた。

衆「ふざけやがって!」

衆治は具現化したカードからシザーハンズを出すと、洞窟内の壁をシザーハンズのハサミを突き立てこじ開けようと試みた。しかし、幾らシザーハンズの力を持ってしても壁の岩が僅かに剥がれ落ちる程度で水の逃げ道を作る事など不可能であった。

弥「……衆……じ…………」

水の量は遂に天井に達し洞窟内は完全に水に満たされてしまった。呼吸の出来ない状況に陥った衆治のシザーハンズは自動的にカードへと戻っていった。

衆 (まだ……こんなとこで…………)




鍾乳洞の様な場所の壁の一部に亀裂が入ったかと思うと、その亀裂は一気に広がり決壊した壁から大量の水が流れ出てきた。排出される水と共に意識の無い衆治と弥結の身体も流されていた。その衆治の側に佇む者が一人いた。

?「落命したか。気の毒に」

手にカードを持ち、黄金色に光る瞳を足元の衆治に向けながらそう呟く男の姿がそこにあった。




続く


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