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19-4話




決意を固めた衆治は施設の制御室に辿り着いた。そこでは密緋がムカデ人間での破壊活動を行なっており、末由子の姿はそこに無かった。密緋は衆治の存在に気が付いた。

密「どうした衆治?こっち手伝いに来てくれたか?予定通り末由子さんはもう避難したぞ。水檻はどうした?」

密緋の質問に沈黙したまま浮かない顔でカードを具現化した衆治の異様な雰囲気に密緋は何かを感じ取った。

衆「……密緋、もうやめよう」

密「…………あ?」

衆「こんな事しても意味が無い。俺達は、メディエイターは……」

密「待てよ、何があったんだよ?」

衆「……メイソンと会った」

密「そんだけじゃねーんだろ?」

衆治はメイソンから聞かされた革新機関の真実を話した。メディエイターの危険性とそれを捉え滅亡を図り、あまつさえ力を利用しようとした機関の策謀、そしてそれらに対する自身の回答を全て話した。

密「…………つまり機関にとって俺達は飼い犬どころか金魚の糞にも満たなかったって事か」

衆「分かっただろ密緋。メディエイターを世の中に出してはいけない。俺達の存在は……」

衆治の言葉を遮る様に密緋は再びムカデ人間で機械の破壊を行った。

衆「……何を!?」

密「衆治、お前の意見は分かった。その上でだ、お前は俺にどうしろってんだ?」

衆「どうしろって……」

密「メディエイターの力が他人の命を奪い去る。その力で俺達は優位を保持出来る。それに何の不満がある?」

衆「密緋、お前は……」

衆「よく考えてみろ。今ここにいる大勢のメディエイターを抹殺した所で何が変わる?世の中が平和にでもなるのか?大勢の同胞を殺した十字架をお前が背負う以外の何が残る?もしもメディエイターがそんなにまで恐ろしい存在なのなら、それこそ俺達が連中を指揮してやりゃあ済む話だろ?」

衆「そんなのは身勝手だ。大勢の人のアンノウンを支配するなんて、それじゃ和歌草玄僧と同じだ!」

密「……今のお前がんな事言えんのかよ?」

密緋は一向に破壊をやめる気を見せなかった。

衆「戻れないんだぞ。メディエイターとして生まれた時点で俺達に戻る道なんか無いんだぞ」

密「戻れないと分かったらそのまま突っ走るくらいの胆力は持てよな衆治!」

機械に向けてかざされるムカデを何者かが止めた。それは衆治の出したシザーハンズであった。密緋の目に映る衆治の顔は今まで見てきたどの顔とも違う顔をしていた。その顔に密緋は衆治の敵意を悟った。

密「……あんたの予言は見事に当たったよ、麻紘」

密緋もまたそれに答えるかの様にムカデ人間の標的を衆治に向けた。




心臓部が大破した事により各地で設備の故障や爆発が多発し崩壊していく革新機関。その制御室ではハサミと牙がぶつかり合う鈍い音が響いていた。互いの性格やアンノウンの性質を熟知しているからこそ二人の戦いは雌雄しゆうを決する事が出来ずにいた。

密「今頃はメディエイター達も敷地外に出始めてる頃だろう。なのにお前はまだ諦めないのか?」

衆「俺の出した答えだ、メディエイターは生きてちゃいけない!」

そう言い放つ衆治の瞳は黄金へと色を変えた。

密「何だよそれ?メディエイターを忌み嫌いながら結局はその力に頼んのか?玄僧あいつと同類じゃねーか」

密緋もまた自身の目を黄金色にしてみせた。

密「お前はこれからも苦悩し葛藤しながらもその力を行使するのか?いい加減思い直せよ、お前やるべき事は連中を殺す事じゃないってなあ」

衆「……メディエイターの存在は危険だ。放っておけばまた未知の厄災の様な事が繰り返される」

未知の厄災によって何もかもを失った衆治には、他人の命を力にアンノウンを振るうメディエイターというものが自分も含め忌むべき対象として映っていた。

密「……幾ら言っても聞かねえって訳か」

密緋はムカデ人間の猛攻を衆治に浴びせかけた。衆治はシザーハンズで防ぐが先程までとは比較にならない威力とスピードの攻撃にメディエイターの力を使う衆治でも防ぎ切れなかった。

衆「ぐっ……」

密「俺とお前が本気でやり合ってお前に勝算があった事があるか?お前がどれだけ醜く足掻いたってお前と俺の差は埋まりも逆転もしねえんだよ!」

ムカデの刺突にシザーハンズは吹き飛ばされ、衆治は地面に膝を着いた。

衆「はあ……はあ……」

大量の汗を流す衆治に密緋は歩み寄った。

密「お前さっき、メディエイターは生きてちゃいけないって言ってたな。それはお前自身の事も言ってんだろ?」

衆「…………」

密「真っ当な様でいて存外に捻くれてるお前の性格だ。俺を殺し水檻を殺して、仮にお前の目指す目的が達成されたとしても、それでもお前は自己満足すらしねえんだろうなあ」

呆れながら背を向ける密緋に衆治は尚も言葉を語り続けた。

衆「……お前もメディエイターなら分かる筈だ。この先起こる危険を……」

密「分かんねえよ。分かんない事を無理に理解する必要は無いって散々教えられただろ。しつこいぞ」

衆「止めないといけない。それが俺の……!」

衆治は密緋の背後からシザーハンズを斬り掛からせた。が、密緋はムカデを操り牙でシザーハンズの腹を突き刺すと、そのまま壁面にまで押し当て壁に固定させた。

衆「があっ!」

密「しつこいって言ってんだろ。何言ったって無駄なんだよ」

痛みに顔を歪めるが、どういう訳か衆治の口元は笑っていた。

密「何だよ?気味のわりい顔なんか浮かべて……」

衆「俺もお前の性格はよく知ってる。しつこくされると途端に短気になるお前の性格をな」

衆治の表情に密緋は嫌な予感が走った。頭を冷やし周囲を確認してその事を悟った。ムカデ人間の攻撃でシザーハンズを張り付けにした壁は密緋があえて破壊を避けていた箇所だった。この施設の電力の制御の中枢であり最も広範囲の制御を占める重要な制御装置。その機械にムカデの牙がシザーハンズを貫き通して届いていたのだった。

密「まさか、お前はこれを……!?」

衆治が密緋に笑みを浮かべた瞬間、施設の各地から大規模な爆発が巻き起こった。それは機関の崩壊をすぐそこまで呼び起こす結果をもたらした。

衆「……一応忠告しておく。避難を急がないとこの場所もすぐに吹っ飛ぶぞ」

そう言うと衆治はシザーハンズをカードに戻し一目散に制御室を飛び出した。

密「チッ、あの野郎……」

密緋も即座に破壊の手を止め避難へと行動を移した。

密「とっととズラかるか。手土産持って……」

密緋は玄僧から奪ったあの薬の瓶をポケットに入れ轟音が響き渡る施設を走り抜けた。間も無くして大爆発と共に革新機関の建物は崩壊した。




結果的に衆治と密緋が起こした行動により機関に属していたメディエイターの大半がこの事故で命を落とした。ニュースでもこの爆発騒動は報道されたが、アンノウンやメディエイターに関する情報は一切流れなかった。爆発事故を奇跡的に生き延びた衆治はその後、密緋や水檻、末由子やメイソンと再び顔を合わせる事は無かった。




大きな部屋の前。機関の崩壊に加担した事が玄僧に知られた末由子はその責任から呼び出されていた。扉の前に立つ末由子とその背中を見守るメイソンの間には静かな空気が流れていた。

末「私は何も後悔は無い。あの子達のこれから人生の支えになれたのなら死ぬのも怖くない。でも、唯一の心残りは娘を一人残してしまう事。何事にも一生懸命なあの子のそんな所が私は少し不安」

末由子は振り返り消え入りそうな儚い笑みを浮かべ言った。

末「娘を、承美つぐみをお願いね、メイソン」

メイソンは何も言わず頷いた。

末「ありがとね」

その笑みを崩さないまま末由子は扉を開け部屋へと入って行った。

メイ (俺はいつも誰かの後ろ姿を見送る事しか出来ないのか……)




傷だらけになりながらも力を振り絞って歩く衆治。体の芯から訪れる疲労感は衆治の視界を霞ませていった。衆治の胸中にあるもの、それはほんの僅かな時間でも自分を大切に思ってくれた心壱、いつも傍らに寄り添ってくれた弥結、大勢の温かい家族の様な人達が待つワンテーブルホームだった。今の孤独な自分を奮い立たせてくれる唯一の存在、その場所を目指して衆治は歩き続けていた。









ペルフェット城内の回廊に佇む二人の男の黄金色の瞳は互いの姿をはっきりと映し出していた。

密「お前と最後に会った時お前は言ったな。メディエイターは生きてちゃいけないと。なのにお前は今ものうのうと生を謳歌してる。それが俺にとっちゃ少し疑問なんだが?」

衆「……囚われてるんじゃない」

密「ああ?」

朦朧としかけた意識の中、衆治を揺り起したのは確固たる決意であった。

衆「過去から逃げようなんて真似はしない。犯した過去と向き合う為に俺は生きてんだ!」

密「……どこまでも身勝手な野郎だ」

カードを構え直す密緋の表情も若干の険しさを増していた。




続く


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