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19-3話




ダウトオーナーの存在を知らされてから三日後の夜、衆治達は計画を阻止する計画を始めようとしていた。

衆「じゃあ、手筈通りに」

密「ああ、俺達は制御室に。お前達はあの部屋へ」

そう言って衆治と水檻は走り出した。施設の電力やシステムを全て管理する制御室に職員である末由子のI.D.を使い密緋が侵入しそれを破壊、更に機関にいるメディエイター全員を逃走させる。と同時に衆治と水檻は三日前に玄僧と会ったあの研究室に行きダウトオーナーに関するデータを消去する。これが四人の計画である。

密「んじゃ末由子さん、俺等も行くか」

末「密緋くん」

末由子は改まった表情で密緋に語り掛けた。

末「密緋くんにだけ言っておくわね。もしこの破壊計画に私が関わってる事が分かったら、お義父さんは多分私を生かしてはおかないわ。近くで見てきたから分かるのだけど、自分の夢を阻害する存在は例え近しい存在でも残しておかない、あの人はそういう人なの。他所から嫁いで来た私の存在なんてきっと気にも止めないわ」

密緋は暫くの沈黙の後に口を開いた。

密「あの二人が聞いたら計画に迷いが出るから言わなかったんだな。分かったよ、俺は末由子さんの意思を尊重する。例え死ぬ事になっても末由子さんは俺達の味方をする。そう言う事だろ?」

末「ええ、勿論」

顔に笑みを取り戻した末由子と密緋は急いで制御室へと向かった。制御室の扉を末由子のI.D.で開け二人は制御装置に辿り着いた。

末「私が急いでこのシステムでみんなに避難を呼び掛けるから、それが終わったら密緋くんはこれを完全に破壊して」

密緋は手にカードを具現化し笑いながら言った。

密「そういうの大得意」




施設内のスピーカーから響き渡る末由子の避難の喚起と、それに伴い次々と部屋から出て来るメディエイターで大混乱の中、衆治と水檻は例の研究室を目指していた。

水「みんな大丈夫かな?警備の人達に捕まったりとか……」

衆「俺達はメディエイターだ、心配要らない。それより水檻、研究室に着いたらそこのデータの全てをなるべく早く消すんだ。出来るな?」

水「私のクリスタル・フェアリーならそんな事簡単だよ」

衆「結構」

目的の部屋の前まで来ると水檻はカードを具現化させ、透明で輝く水晶の体のアンノウンを出現させると扉に手を触れさせた。すると機械仕掛けで施錠されていた扉は簡単にロックが解除された。

水「電子機器が相手ならクリスタル・フェアリーの敵じゃない」

衆「お見事」

扉を開け部屋の中へ入った衆治は人の気配を感じ立ち止まった。

水「どうしたの?」

衆「……誰かがいる」

薄暗い中を目を凝らした衆治は気配の正体を確認した。そこに居たのはメイソンだった。

メイ「やはり来たな、衆治」

水「あの人!」

衆「どうしてここに居る?」

メイ「ここなら君が来ると思ってな」

衆治はカードを具現化しメイソンを警戒した。

衆「水檻、お前は早くデータを消すんだ」

水「わ、分かった」

水檻はクリスタル・フェアリーを部屋の機器に触れさせるとデータの消去を開始した。その行動をメイソンは止めようとはしなかった。

メイ「警戒しなくてもいい。君達の目的を私は阻みはしない」

衆「……どういう事だ?」

メイ「玄僧氏の考える計画の本質を理解した時、私は自分の業を呪いその行いを後悔した。だから私は君達の邪魔はしない」

衆「じゃあここで俺を待っていた訳は何だ?」

メイ「この機関に君と密緋を誘い込んだ責任は私にある。そのせめてもの罪滅ぼしの為に、ある真実を君に伝える」

衆「真実……?」

メイソンは神妙な面持ちで衆治に話し出した。

メイ「三日前ここでダウトオーナーの話を聞かされたな。ダウトオーナーは自身の寿命を代償にその力を強化すると」

衆「ああ、そう聞いたよ」

メイ「ならば疑問に思わないか?メディエイターは何を糧に力を発揮するかを?」

衆「何!?」

メイ「あの日君達がこの部屋を出て行った後に玄僧氏は私にそれを教えてくれた」

メイソンの言葉に衆治は即座に思考を巡らせた。

衆「……まさか、メディエイターも寿命を……?」

メイ「そうだ。だがダウトオーナーと違う点が一つある。ダウトオーナーは自身の寿命を力に変えるのに対し、メディエイターが力とするのは戦う相手の寿命だ」

衆「相手の……!?」

水「それって……!」

メイ「戦いにおいて相手の命を吸い取り死にいざないながら、その力を我が物にする存在、それがメディエイターだ」

衆「そんな……!?」

水「嘘!?」

信じ難い事実に二人は驚嘆した。

水「相手の命を吸い取るなんて、それじゃまるで……」

衆「死神かなんかじゃないか!」

メイ「……玄僧氏も同じ事を考えたのだろう。メディエイターの存在を危惧した玄僧氏はこの革新機関を設立、そしてメディエイターを緩やかに衰退させる計画を立てた。ダウトオーナーへと化する仕組みを利用して。つまり私が君達に論じた事は何一つ実らないという事だ」

衆治は理解した、今まで自分に向けられてきた目の意味を。ただ力で圧倒するのでは無く、交戦そのものが命を搾取するメディエイターである自分の本質を恐怖していた者達の気持ちを。

水「じゃあどうして、玄僧さんは私達三人にみんなを束ねろだなんて……?」

メイ「玄僧氏のアンノウンに対する感情はある時を皮切りに深い憎しみへと変わった。それは時を置いても風化するものではなかったらしい。メディエイターだけではない。アンノウンという存在の根絶、それこそが玄僧氏の心の奥底に住まう思惑なんだ。そしてその実現の為に目を付けたものこそがメディエイターの力だ」

水「……え?」

メイ「メディエイターは恐ろしい存在であり力は強力だ。滅ぼす事が目的ではあるが、その力をアンノウンの根絶に運用出来ればという玄僧氏の欲得によるものだろう」

水「そんな……身勝手な……」

メイ「……もうデータは全て消去されているだろ?」

メイソンの声に我に返った水檻はクリスタル・フェアリーがデータの消去を完了しているのを確認した。

水「う……うん」

メイ「衆治、私は君達の邪魔をしない。君がするべきと思った事をやれ」

真っ直ぐ見つめるメイソンの目から逃れる様に衆治は部屋を飛び出し、水檻も後を追う様に出て行った。それを黙って見つめる事しか今のメイソンには出来なかった。




廊下を駆ける衆治の頭は混乱し整理が追いつかなかった。

衆 (俺がやるべき……やるべき事って一体……?)

水「待ってよ衆治!」

ふと衆治はある光景に足を止めた。混乱する施設内の中、その場に座り壁にもたれ掛かる麻紘の姿だった。

衆「麻紘さん……」

麻「やあ君達か。この混乱も君達が起こしたんだね」

麻紘の声は以前にも増して気力が無く細々としていた。

水「みんなでここから逃げるの。麻紘さんも一緒に……」

麻「残念だけど無理だ。それが出来る程の体力は残されていない」

衆「…………」

衆治の表情に何かを察した麻紘はカードからバタフライ・エフェクトを出現させると衆治の肩に手を触れさせた。

衆「何を……?」

麻「…………衆治くんと言うんだね。君は今、大きな決断を自分の中で悩んでいるね?その決断は君のこれからの人生を左右する。決断を誤れば君は自分の一生を閉ざしかねない。それだけ君にとって重要な事なんだよ、君が今抱えているものは」

衆「それは、一体……?」

麻「君の人生を切り開けるのは君だけだ。気を付けて。決して僕みたいに……なってはいけない……」

それを最後に麻紘はゆっくり目を閉じ息を止め、傍らのバタフライ・エフェクトも自然に消滅した。

水「…………衆治」

不安げな目を向ける水檻に衆治は呟いた。

衆「……メディエイターは生きてちゃいけない」

水「え……?」

水檻は自分の耳を疑った。

衆「他人の命を吸い取って力を得て、その力でまた誰かに刃を向ける、それが俺達だ。この呪いはどうやったって消えない……。逃げるんだ水檻」

水「逃げろって、衆治は?」

衆「やる事がある。俺のやるべき事が」

衆治の表情は今まで水檻が見た事の無い程に険しいものだった。

水「何をする気なの?みんなを殺すの?そんな事したってどうにもならない事は衆治にも分かってる筈だよ!」

衆「……お前は逃げろ。また兄さん達と一緒に暮らすんだろ」

水「でも……だけど……!」

衆「行くんだ!」

衆治の圧に押された水檻は涙を浮かべながらその場から走り去った。出会った頃から弥結の姿を重ねて見てきた水檻を殺す事は衆治には出来なかった。水檻を見届けた衆治はカードを構え密緋のいる制御室を目指した。




続く



UCアンノウンカード紹介》

クリスタル・フェアリー 身長1.7m

持ち主:嶺禎 水檻

能力:精密機械や電子機器などに干渉し思い通りに操作出来る。データの読み込みや削除、復元なども可能である。


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