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19-1話




衆治達が革新機関にやって来てから二年の月日が経とうとしていた。当初百数名だった機関のメディエイターの数も更なる呼び掛けに応じやって来た者達を含め三百人以上に上っていた。施設の一室、そこでは謎の会議が展開されていた。

「では、目ぼしい人材三名の情報を」

「はい、では順番に。嶺禎水檻、年齢十一歳、性格は好奇心高め、所持するアンノウンはクリスタル・フェアリー」

「次、雉室密緋、年齢十三歳、性格は自称左うちわ、所持するアンノウンはムカデ人間」

「最後、染ヶ谷衆治、年齢十三歳、性格は冷静かつ頑固、所持するアンノウンはシザーハンズ。以上の三名です」

「分かった、ありがとう。如何ですか総帥?」

会議をまとめる男は背後に座る玄僧に意見を仰いだ。

玄「申し分ない。彼等の様な若い者ならば私が目指す世界を形成するのに都合が良い」




衆治、密緋、水檻の三人は末由子に連れられ施設の廊下を移動していた。

水「どこに向かってるの、末由子さん?」

末「ごめんなさい、実は私も初めて行く場所なの。だからよく分かっていないの」

衆「末由子さんにも知らされていない事ってあるですか?」

末「ええ、ここ最近機関の動きが慌ただしくなってきていたのは感じてたのだけれど……」

衆「革新機関も何か怪しくなってきましたね」

密「今更か?」

末由子の案内はとある扉の前で止まった。そこは衆治がこの機関に来たての頃に見かけた立ち入り禁止の扉であった。

衆 (ここって……)

四人は末由子の開けた扉から中へ入って行った。部屋は薄暗くあらゆる精密機械を研究員達が操作している光景が見えた。

衆「何なんだここは?」

?「久しぶりだな、君達」

突然、衆治と密緋の聞き覚えのある声がした。そこにはメイソンの姿があった。

衆「メイソン!」

密「久しぶりじゃん!」

メイ「随分と大きくなったみたいだな」

水「二人の知り合い?」

衆「そんな所だ。この機関の事を紹介してくれた人だよ」

末「そう、貴方の紹介だったのメイソン?」

メイ「お久しぶりです、末由子さん」

メイソンは末由子に深々とお辞儀した。

密「ん?二人も知り合いだったのか?」

メイ「玄僧氏に仕える以上、末由子さんの事も知っていて当然だ」

末「貴方がいるって事はお義父さんも来てるの?」

メイ「はい、もうすぐ来られるかと……」

その時、部屋の扉が開き数名の護衛と共に玄僧が入室して来た。それを見るなり研究員達は作業を止め立ち上がり玄僧の方を向いて礼をした。

玄「ああ、そのままで大丈夫」

そう言うと皆体勢を戻し作業を再開した。

末「お久しぶりです、お義父さん」

玄「ん。で、その子達が……」

末「はい、招集を命じられた子達です。この子達が一体何か……?」

末由子の質問を他所に玄僧は衆治達に近寄りまじまじと見つめた。

衆 (………………?)

玄「何も怖がらなくてもいい。君達三人は選ばれた存在だ、それを誇りたまえ」

玄僧は三人に優しく微笑んだが衆治はその笑いに何か違和感を覚えた。玄僧は衆治達から離れると研究員に指示を出した。

玄「システムは正常か?」

「はい、問題ありません」

玄「では準備を」

「分かりました」

玄僧のやりとりに密緋はメイソンに質問を投げ掛けた。

密「何を始めようってんだ、あの爺さんは?」

メイ「私も詳しくは知らされていない」

玄僧は衆治達の方に向き直ると話し始めた。

玄「私がこの革新機関を設けてもう二年になる。皆の協力もあって私の望むものがあと少しで完成する状況にまで漕ぎ着けられた。強力で肩を並べるものもいない絶対的な力が。しかし、世間ではこの二年間で更なる危惧すべき要因も生み出されつつある」

衆「要因……?」

玄「うむ。すなわちアンノウンの力を不当に扱う輩が多く現れた事だ」

密「別にそんな連中二年前にも相当な数いたと思うけどな」

玄「君の言う通り、あの頃にもそういった輩がいなかった訳ではない。が、今世間に蔓延はびこる者達の愚行は過去とは比べ様も無い程に目に余る。その最たる存在がマスターピースと名乗る連中だ」

衆「マスターピース?」

初めて聞く存在に衆治達は頭に謎を浮かべた。

玄「マスターピース。アンノウンを持つ特定の連中が結託しその力で反社会的行動を繰り返してる様な輩どもだ。マスターピースによる被害は徐々に拡大してきている。更にマスターピースだけでは無く、似た様な集団もここ最近増えつつある。そういった者達をこの革新機関の強大な力でもって一掃する事が現時点における最大の目標だ」

水 (それって保安局の役割じゃ……)

玄僧の言葉はいつかの演説の時の様に力強さを纏っていた。その玄僧に密緋は手を挙げて質問した。

密「自分、質問良いっすか?」

玄「何だね?」

密「そのしょうもねー連中を片すのが俺等の役割だとして、それが成功する確証なんてあんのか?」

その言葉にその場にいる者は皆息を飲んだ。

玄「つまり君が聞きたいのは、私の戦いに我々側の勝算はどのくらいか、と言う事かな?」

密「碌な奴相手に戦って負けない自信くらいはあるが、そもそも勝率の拮抗する戦いに送り込まれんのも不愉快だしなあ」

衆「密緋……」

密緋の言う事に末由子もメイソンも苦い表情をした。が、玄僧の顔の顔だけは違っていた。まるでその言葉を待っていたかの様な、そんな顔であった。

玄「無論、君達メディエイターに戦闘を強要する以上それ相応の助力を行使させてもらうつもりだ」

密「?」

玄「まずはこれを見て貰いたい」

玄僧がそう言うと部屋の大きなモニターの電源が付き映像が流れた。その映像には一人カードを持ったの男とその傍らに佇むアンノウンの姿が映し出されていた。

水「何なのこれ?」

玄「ここに映っている彼は自身のアンノウンを有してはいるがメディエイターではない。ただのアンノウンを持つ者でしかない」

映像の男は目の前に設置された岩を自身のアンノウンで力強く殴らせたが、岩は表面が僅かに崩れる程度で破壊には至らなかった。

密「こいつがもしメディエイターになれたらあの岩も破壊出来るかもしれないって、それを見せたいのか?」

玄「いいや、真に注目すべきはここからだ」

衆治、密緋、水檻、末由子、メイソンは玄僧に促されるまま映像に注目した。すると、その男の瞳の色が徐々に変化していく様子が映し出されていた。元々黒かった瞳はみるみる内に濁った灰色に変色していった。

衆「なっ……!」

そしてもう一度、男がアンノウンで岩に殴りかかる映像が映された。すると殴られた岩は一切の原型を留めず木っ端微塵に粉砕されてしまった。

「!!!」

五人はその光景に言葉が出てこなかった。

玄「メディエイターではない、メディエイターにはなれない筈の者がこれ程の力を目覚めさせた。その力はメディエイターが誇る力に匹敵する。それこそがメディエイターと対を成す存在、ダウトオーナーだ」

衆「…………ダウトオーナー?」

衆治は何か言い様の無い寒気を感じた気がした。

玄「ダウトオーナーの発見は我が革新機関にとって最上の成果だ。素晴らしいだろう?」

五人は映像の男とその力の異様さに圧倒されていた。

玄「だがこのダウトオーナーという存在も完璧ではない。いやむしろメディエイターと比べれば酷く脆い」

水「……どういう事なんですか?」

玄「君達メディエイターは力を使う事に何も制限は無い。自身の疲労以外でその力が不全となる事は無い。が、ダウトオーナーには今見せた力が霞む程の代償が存在する」

密「代償って何だよ?」

玄「ダウトオーナーの代償は二つ存在する。一つは持ち主の代謝の低下や身体能力の衰え、所謂いわゆる寿命の削減が行われいる」

衆「寿命って、そんな……」

想像だにしない事実に衆治達は身震いした。

水「…………もう一つは?」

玄「もう一つはアンノウンの回復能力の消滅だ」

密「……は?」

唐突な言葉に五人は理解が追いつかなかった。

玄「アンノウンはどれだけの手傷を負おうが持ち主が存命する限りはカードに戻している間に自己回復が行われる。しかし、ダウトオーナーとなった者が有するアンノウンにはその効果は無くなる。そのアンノウンが負った傷は決して治癒する事は無いのだ」

衆「なっ!?」

あまりの真実に五人は戸惑いを隠しきれなかった。

水「回復出来ないって、それじゃ……」

玄「この二つの代償からダウトオーナーの有用性は大きく掻き消される。これは由々しき事だった。だが我々は一つの可能性に希望を掛けた。それこそがメディエイターだ」

末「……それってどういう意味なの?」

玄「アンノウンとの繋がりが濃く扱いに長けたメディエイターがダウトオーナーとなればどうなるか?という疑問を探り、それを実現させた」

そう言うとガラス越しに見える隣の部屋のライトが点灯し五人はその部屋に目線を向けた。そこには映像の男とは別人の目が灰色に濁った男が立っていた。




続く


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