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18-3話




メイソンに言われた通りに衆治と密緋は入り口の男に具現化したカードとメディエイターの目を見せ、メイソンからの紹介である事を伝えた。男は納得すると次の場所への移動を指示し二人はそれに従う様に先へ進んだ。

密「メイソンの言ってた通り中身も殺風景だな。ずっといたら病むぞ絶対」

衆「お前に限ってそんな心配は無いだろ」

暫く進むと男が指示した部屋の前まで到着した。

衆「ここだよな?」

密「じゃねーか?他にそれっぽい所無いし」

二人は扉を開け中へと入った。そこには教室程の広さに数名の少年少女が待機していた。みな歳は二人よりやや高めといった所だ。

密「こいつら全員メディエイターって訳か」

?「ねえ、二人共」

異様な空気の中、背後から聞こえた声に二人は振り向いた。そこに居たのは一人の小さな少女であった。

密「俺達の事か?」

?「そう、二人もメディエイターでしょ?」

衆「だからここにいる」

水「私は水檻。二人の名前は?」

水檻のペースに驚きながら二人も返事を返した。

衆「衆治だ」

密「俺は密緋」

水「よろしくね」

水檻は満面の笑みで微笑んだ。その小柄な少女に衆治は一瞬弥結の姿を無意識に重ねた。

密「水檻、お前はいつからここに居んだ?」

水「今日から。てゆーか二人もでしょ?」

衆「という事は他の奴等も……」

水「私達と同じここに来るのは初めて……」

その時、扉が開き一人の女性が部屋へと入って来た。

末「はい、皆さん初めまして。私の名前は和歌草わかくさ末由子まゆこと言います。慣れない場所で不安かもしれないけど大丈夫です。私達は皆さんを全力でサポートしますからね」

末由子と名のる女性はその場にいる衆治達全員に温かい微笑みで優しく語りかけた。

水 (優しそうな人)

密 (三十代前半って所か)

衆 (和歌草って、ひょっとして……!)

末由子の苗字に衆治は引っ掛かりを覚えた。

末「貴方達は今日初めてこの革新機関という施設に足を踏み入れたメディエイターの中で年齢が十八未満の人達です。ですので貴方達は勿論、私よりも年齢の高いメディエイターの人達も沢山この施設に居ますので多くの人達との交流を深めて下さい。ちなみに私の年齢は一応三十代です」

密 (やっぱり)

末「とは言っても、この革新機関に関してまだよく分かっていない人もいるかもしれないのでその辺りを説明していきます」

そこから始まった末由子の話は衆治と密緋にとってはメイソンから聞いた事とほぼほぼ同じであり、新たに聞く様な情報はあまり無かった。要約すると、この施設は日本トップの財閥である和歌草グループの総帥、和歌草玄僧が設立したメディエイター達の育成、強化を主目的とした機関である、ここにいるメディエイターの数は今現在で百数名である。設立間も無い事もあり最も長く居るメディエイター達でもその期間は一カ月ちょっとと言った所であった。施設内には末由子の様にメディエイターでないどころかアンノウンを持たない者も一定数働いており、そういった者達に無闇にアンノウンの力を行使してはいけないという忠告も受けた。

末「はい、これで説明は以上です。この後は皆さんそれぞれの生活の為の専用の個室を用意してますので、そちらへ案内します。その前に、雰囲気の窮屈な所で疲れたでしょう?少し休憩時間を設けます。部屋の外に出て行っても構いませんが十五分後にはまたここに戻って来ていて下さいね」

その言葉を皮切りに部屋にいた大半の者が部屋の外へと出て行った。彼等を見送る末由子に衆治は近付き質問を投げかけた。

衆「末由子さん」

末「はい、えっと貴方は……」

衆「衆治です」

末「衆治くんね。私に何か?」

密緋と水檻も衆治を追う様に末由子のもとに駆け寄った。

衆「末由子さんの苗字って和歌草でしたよね?ひょっとして……」

末「……実は私は和歌草の家に嫁いで来た身なの。つまりここの設立者である和歌草総帥の息子の妻という事になるの。驚いた?」

三人はあまりの事に驚きを隠せなかった。

水「えっ!?そうだったの!?」

密「て事はあんた所謂いわゆる玉の輿か!」

末「まあそうなんだけど……。でも、夫はもう数年前に他界してるの」

衆「えっ……?」

立て続けに聞かされる末由子の詳細に三人は言葉が出てこなかった。

末「でもそうね、お義父さんがこの世界の平和の為に望みを掛けたアンノウンという存在を私も信じてるし、その扱いに優れた貴方達メディエイターに対する敬意も決して欠けてはいない。そういう意味では私は正真正銘この機関の一員であり、あの人との関係はさして重要ではないわ」

水「……それってどういう意味なの?」

末「私は常に貴方達の味方って事」

そう言うと末由子は水檻の頭を撫でながら優しく微笑んだ。その行為に水檻は意図せず顔から笑みが溢れて止まらなかった。

水「えへへへ」

密「だとしても、それをすんなり理解するなんてのは俺には無理だな」

密緋はわざとらしく悪態をついた。

末「あら、どうして?」

密「見ず知らずの大人の気持ちがすぐに分かる程、俺の頭は単純じゃねーって事」

末「ならそのままで一向に構わないわ」

密「?」

末「分からない事を無理に理解する必要なんて無いんだから」

密「…………」

末由子の言葉に密緋は押し黙った。しかしそれは末由子の抱擁力により安心しきった密緋の心からの行動なのが目に見えた。その光景に衆治も心の中にあった不安が掻き消されていくのが実感出来た。

末「さあ、もうすぐみんなも戻って来る頃よ。そしたら貴方達の専用の部屋へ案内するわ。あんまり豪華じゃないのは許容してね」

密「雨風が凌げりゃ贅沢言わねーよ」

その後、広い施設のあらゆる場所を見学し終わった衆治達は自分の部屋で体を休めこの日は終了した。




翌朝、衆治達は部屋に備え付けられた目覚まし時計の音で目を覚ました。目覚ましをかけた覚えは無く、時刻は五時過ぎを指していた。

衆「はあ!?」

部屋を出ると他の者達も部屋から出て来る光景が目に映った。

密「おはよーさん」

明らかに眠たそうな密緋が衆治に挨拶をかけてきた。

衆「一体何なんだ?」

密「知らん」

訳が分からずに流れに従って歩いていると水檻と末由子と合流した。

水「二人共おはよー」

密「おっす」

衆「何かあるんですか?」

末「ごめんなさい。実はお義父さんが……、和歌草総帥が急にお見えになって。メディエイターのみんなに挨拶がしたいって言って……」

衆「こんな時間に……?」

密「老人の朝は早いってか?」

末「そういう所がちょっとある人だから……。本当にごめんなさい」

水「末由子さんが謝る事無いのに」

ゴネながらも衆治達は流れに沿って歩き続けた。その途中、衆治は昨日は気付かなかった立ち入り禁止の扉を目にした。

衆「末由子さん、あの扉って一体……?」

末「私も全く分からないの。関係者の中でも極一部の人しか入れないみたいで」

衆「……そうですか」

大きな広間にメディエイターと職員達が集められて数分後、広間の二階部分のせり出したバルコニーに照明が集まった。そこには豪勢な椅子に座りながら下にいる者達を見る老人の姿があった。

衆 (あれが和歌草玄僧……)




続く



《人物紹介》

嶺禎みねさだ 水檻みおり

身長125cm 9歳 (過去)

嫌いなもの:新品のバスタオル


和歌草わかくさ 末由子まゆこ

身長160cm 32歳 (過去)

嫌いなもの:声が大きい人


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