18-2話
理解の追いつかない衆治と密緋にメイソンは分かりやすく説明を続けた。
メイ「アンノウンを扱える者というのは極少数だがメディエイターの数は更に僅かに限られる。その分、その者達が持つ力の可能性というのは計り知れないものがある。そんな彼等を日本中から革新機関に呼び集めメディエイター同士の調和を深める事で、何者にも勝る力の誕生に貢献するのが玄僧氏の夢なんだ」
衆「夢……」
二人は顔は未だ納得のいった表情には至らなかった。
密「随分と胡散臭さが先行してる気はするが……。和歌草の爺さんは何でんな機関を発足しようなんて気になったんだ?」
密緋は話を聞いた時からずっと引っかかっていた疑問を投げかけた。
メイ「アンノウンを持つ者というのは日本だけじゃない、世界中に存在している。そしてその全員がアンノウンの存在を世界から秘匿にしている」
密「そうだろうな」
メイ「そんな者達を守る為にも、革新機関とは必要な存在なんだ」
衆「……話が読めてこないんだが」
メイ「……およそ一年前、この国を襲った大災害、通称未知の厄災と呼ばれる出来事は知っているな?」
密「そりゃあなあ。特にこの衆治はその厄災で何もかもを失ったんだからな」
メイ「そうだったのか?」
その質問に衆治は黙って首を縦に振った。
メイ「そうか、気の毒だったな。ならば勘付いていると思うが、あの厄災の原因はアンノウンによるものだと言われている。無論、確証は無いのだが」
密「間違い無いんじゃないか?どいつもこいつもそう言ってるし。それがアンノウンを持つ者を守るって話とどう関係するんだ?」
メイソンは更に説明を続けた。
メイ「我々の様なアンノウンを扱う者ならあの厄災の説明も大凡つく。しかし、アンノウンを持たない、存在すら認知しない者達からすれば文字通り未知なのだ。彼等は今も厄災について研究し調べている。そしていつか必ずアンノウンという存在に辿り着く。そうなった時、彼等が我々に抱く感情は何か?悩むまでも無い、畏怖と疑心だ」
衆「そんな事……」
メイ「無いと言えるか?」
メイソンの言葉に衆治は押し黙った。
メイ「自身の理解が及ばないものに人間は恐怖を抱く。アンノウンを持たない者達はきっと我々を忌むべきものとし、この世界からの排除を行使するだろう」
密「早い話が戦争ってか?」
メイ「決して大袈裟ではない。人の心とは脆く危ういものだ。それを防ぐ為にも革新機関は必要になってくるんだ」
密「具体的には集めて何をするってんだ?」
メイ「何と言う程の事はまだ決まっていない。集まってもらったメディエイター達と協力して未解明な部分を研究したり、個人の力を更に向上させたり。そして強力な力を持った上で世界中の人間に説く。我々に敵対の意図は無い事を」
密緋は少し表情を曇らせた。
密「危ない考えだな。一つ間違えりゃ最悪の印象を与えかねないぞ」
メイ「それを防ぐ為にも君達メディエイターが重要になってくる。より優れた君達が先陣に立ち彼等と我々の橋渡しをする、この世界の仲介者となるんだ」
密「成る程な。要は体のいい広告塔になってくれってか?」
メイ「捉え方は自由だが、私達は敬意を持って話を持ちかけている事は分かって欲しい」
密「………………衆治、お前も何か聞いてみりゃどうだ」
悩みながら衆治は口を開いた。
衆「メイソンさん……だっけ?」
メイ「敬称は要らない。こと私の国では特に」
衆「……メイソンはメディエイターの事が嫌いじゃないのか?」
メイ「え?」
衆治の意図の汲み取れない質問にメイソンは困惑した。
メイ「悪い、君の言いたい事がよく分からないんだが?」
衆「俺は……、俺と密緋は今までにいろんなアンノウンを持つ奴と戦ってきたが、そのほぼ全員が俺達がメディエイターだとと知ってから見る目を変えてきた。まるで何か恐ろしい存在を見るかの様に」
密「まあ無理もねーだろ。けどそのお陰で戦い易くなった時だってあったろ?」
衆「そうかもしれないが、ああいう目で見られるのはあんまり気持ちいいもんじゃない。だからメイソンもそういう目を俺達に向けるのかと思って……」
衆治の心情を察したメイソンは慎重に、しかし偽りのの無い気持ちを述べた。
メイ「今までに君達に向けられてきた目には、おそらく妬みや恐怖といった感情が込められていただろう。恐怖とは人の心に潜在的に有るものであり、そこから漏れ出てしまう行動を責める事は誰にも出来ない。だが、君達はまだ十一の少年だ。まだ子供と呼ぶに相違ない君達を忌む様な目は私は決して向けない。メディエイターであるか否かは問題では無い。一人の大人として恥じない振る舞いをするだけだ。君達の周りにもそんな大人がいたんじゃないか?」
メイソンの言葉に衆治は頭に心壱の顔を思い浮かべ、心壱が自分達孤児院の子に対して平等に愛を持って接する理由が少し分かった気がした。
メイ「すまない、私はこれからもう少し寄る所がある。もし私の話に興味が湧いたならこれに電話を掛けて欲しい。ここは私の奢りだ」
そう言うとメイソンは番号の書かれた紙と三人分の支払いの代金を置いて店を後にした。残された二人は暫く沈黙したのちに意見を合わせた。
密「どう思う?俺は面白そうだとは思うが」
衆「とりあえず行ってみない限りは何とも言えないな」
密「…………衆治、これだけははっきりしときたい」
衆「……ん?」
密「メイソンはああ言ってたが、俺の周りには昔からメイソンの言う大人らしい大人なんてのは居なかったよ」
後日。衆治と密緋はメイソンに連れられ、人気の無い場所に作られた巨大な施設にやって来た。
メイ「改めて歓迎するぞ。衆治、密緋」
二人は目の前の灰色の大きな建物に圧巻されていた。
密「何て言うか、想像通り殺風景な外観だな」
メイ「見た目に違わず中の方も殺風景だ。だが最初というのはこういうものだ。他にも君達以外のメディエイターが数多くやって来ている。心配は要らない」
衆「……だと良いんだが」
大きな入り口に差し掛かった時、メイソンは足を止め二人に説明した。
メイ「今は私が付いて来られるのはここまでだ。あそこの入り口に立ってる人にUCとメディエイターの目を見せ、そして私の名前を出せば後は自然に案内してくれる」
衆「案内ってどこへ?」
メイ「この施設における君達の居場所へ」
密「その後は?」
メイ「後は君達次第、成果を出すも芽を枯らすも全てだ。応援している」
メイソンは手を差し出し二人と握手を交わすとどこかへと向かって歩き出した。
衆「……行くぞ、密緋」
密「なんかそれ俺の台詞の気がするが……、ま、いいか」
入り口の方へ振り返ると二人は真っ直ぐに歩みを進めた。
続く




