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17-3話




カードを手にしながら密緋は衆治に語り掛けた。

密「俺と最後に戦った時から少しは強くなったんだろうな?」

衆「何が言いたい?」

密「別に。あん時もあん時で弱いって訳じゃなかったけどなあ。強くなってくれてるとやっぱ嬉しいだろ?元同類としてはさあ?」

口角を上げながら密緋は皮肉気味に言った。

衆「その人を食った様な笑いも相変わらずだ。暫く黙ってろ」

密「そりゃ無理な相談だ。黙って欲しけりゃ黙らせてみろよ。そのシザーハンズでなあ」

密緋は自身のカードからアンノウンを出現させた。黒い服の男に二匹の巨大なムカデが絡み付いた人型のアンノウンという衆治にとっては懐かしくも忌まわしい記憶を呼び起こす姿が目の前に立ちはだかった。

密「UCアンノウンカード"ムカデ人間"」

ゆらゆらとなびきながら牙を構える二匹のムカデに衆治もシザーハンズで臨戦体制を整えた。

密「俺もお前も互いのアンノウンの事は知り尽くしてる筈だ。違うか?」

衆「…………いや、その通りだ」

密「だったら出し惜しみの必要も無いぞ。思う存分に能力を繰り出して来いよ!」

密緋のムカデ人間が左手を前に突き出すと一匹のムカデの体が伸び、勢いよく衆治に向かって来た。牙を広げ襲い来るムカデを衆治はシザーハンズのハサミで受け止めると、即座に振り払った。その時、左側の壁を突き破ってもう一匹のムカデが襲い掛かって来た。密緋は最初の攻撃で衆治の注意を引き、同時にもう一匹のムカデを隠れて側面に回り込ませる様に壁を突き破って伸ばしたのだ。

衆「チッ……」

その攻撃に衆治は動じる事無くシザーハンズのスピードを使って牙を受け止め、追撃に出て来た最初のムカデにシザーハンズの蹴りを入れた。そしてハサミで受け止めていたムカデを斬り払い片方の触角を斬り飛ばした。

密「ふふーん、よく洗練された動きだ。素の戦闘能力だけでも充分に高いよなシザーハンズは。今の中で時間を遅らせる能力は使ってないよなあ?」

衆「それを言うならお前もそうだろ。あんな回りくどい戦闘法を取らなくてもお前なら簡単に俺に攻撃を入れられた筈だ。出し惜しみの必要は無いと言ってたが、舐めてるのか?」

密「舐めてるって言うとなんか小物っぽいからやめろ。余裕を持ってるって言ってくれ」

衆「どっちだって同じだ」

密緋はムカデ人間の両手を前に突き出し二匹のムカデを構えた。

密「んじゃあ、こういうのはどうだ?」

密緋の言葉と共に放たれた二匹のムカデは互いの体を螺旋状に絡ませ合い強靭な一本となりシザーハンズに伸び迫っていった。

衆「その程度……!」

衆治は迫り来るムカデを再びシザーハンズのハサミで受け止めるが、二匹のパワーが合わさった一撃にシザーハンズは弾き飛ばされてしまった。

衆「ぐっ……」

即座に態勢を立て直すが、衆治の視界にはどこにも二匹のムカデの姿は見当たらなかった。

衆「そう来るか」

衆治はただちにシザーハンズの能力を使い見える視界の動きをスローにし、周囲の埃や床の塵などに慎重に細かく目を配った。それはムカデ人間の能力を危惧しての事であった。

衆 (ムカデ人間の能力は不可視の透明化。あの本体に絡みつく二匹のムカデの姿を見えなくさせ、所在の掴めない姿でゆっくりと近付いて来る。そしてもし、あのムカデの牙の攻撃を受けようものなら……)

その時、揺れ動く空中の埃の僅かな流れの違和感を感じ取った衆治はその方向にシザーハンズで斬撃を与えた。衆治の読み通りそばまで近付いていたムカデに攻撃を加えられたが、充分なダメージは与えられなかった。

衆「チッ!」

次の瞬間、シザーハンズの右足に突然何かがかすめた様な傷が出来た。それは透明になり見えなくなっていたもう片方のムカデによって付けられた傷であった。

衆「くそっ!」

衆治は姿を捉えたそのムカデにハサミを向けるが、密緋によって即座に二匹のムカデはムカデ人間の元に伸ばした体を収縮させた。

密「喰らったな、俺のムカデの牙を」

衆治は若干シザーハンズの操作が覚束無おぼつかなくなっていった。

衆「……ムカデ人間の攻撃だけは受けたくなかったんだがなあ」

密「ムカデ人間が持つ神経毒は人でもアンノウンでも有効に作用するのは知ってるよなあ。足をほんの少し掠めただけだがお前のシザーハンズのスピードを多少でも落とせるのは俺にとって有難い。しかし、今のは完全に捉えた攻撃だと思ったんだがなあ、ほぼほぼ防がれたのは驚いたぞ」

衆「別に驚く事じゃない。あの機関でお前とは何度も戦ったからな。そのお陰って訳でも無いが、目に見えない存在を相手に戦うのは得意になっただけだ」

密「へぇ、そりゃ初めて知った」

密緋は笑みを浮かべながら、ひけらかす様にムカデの牙でカチカチと音を鳴らせていた。

衆「密緋、どうしてお前は晴斗のやろうとする事に力を貸すんだ?」

密「あ?どうしてだあ?」

衆「奴の野望は革新機関がやろうとしていた事と何も変わらない。なのにどうして協力出来る?」

衆治の問いに密緋は僅かに神妙な顔つきに変わった。

密「あいつの目指す所は理解してるし、その上で俺は俺の意志であいつに協力している」

衆「…………」

密「お前と同じ様に俺だって革新機関の事は虫酸が走る程に大っ嫌いだ、あの馬鹿げた野望も含めてな。けど晴斗は違う。あいつは機関の連中と違って俺達の欲するものをちゃんと理解している。少なくとも忌み嫌う存在として俺達に牙を向ける事はしない。お前らみたいな例外を除いてな。そんな奴といる心地良さがお前に分からないなんてなあ」

衆「…………本気なのか?」

密「俺の性格が左うちわなのはよく知ってる筈だろ?」

密緋の言葉からは嘘をつく事への後ろめたさの様なものは一切感じられなかった。

衆「いつからだ?いつからお前はそんな考えに……?」

密「お前と俺との間に理解し合えるもんは完全に無くなっちまったんだよ。あの時、お前が俺達を裏切ったあの時にな」

衆「……ならせめて、俺の手でお前を倒して終わらせる。それが俺に出来る唯一の手向けだ」

密「それが出来りゃ愉快だろうが、はたして可能か?僅かとはいえ毒の回った今のシザーハンズでどこまでやれるか……」

密緋の忠言を余所に、衆治はシザーハンズのハサミを豪快に振りかざした。その時の衆治の瞳は黄金へと色を変化させていた。メディエイターとしての力を発揮する事で衆治はムカデ人間の毒の効力をほぼほぼ打ち消したのだ。

密「……いよいよ本気って訳か」

衆「ここで終わらせる。お前との全てを」

衆治はシザーハンズを密緋に向けて突撃させた。




続く


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