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17-1話




ペルフェット城の天辺の展望台。晴人が一人佇む所に燈葉がやって来た。

燈「晴人、少しまずい事になったわ……」

晴「理解している」

燈「連中は未だここへ向かってやって来てる。残ってるのは密緋みつひと私と、後は貴方だけ」

晴「…………そうか。いざとなればこれの行使も必要となるか」

晴人はポケットに手を入れると黒光りする宝石の様な物を取り出した。

燈「でもそれは、調律石の運用はまだ不安定なんじゃ……」

晴「完全を待望する程の猶予は俺達には残されてはいまい。決断をかねばならぬ時もある」

晴人は左手に調律石と呼ばれる宝石を持ち、右手にUCアンノウンカードを具現化させた。それを見た燈葉は意を決して晴人に口を開いた。

燈「やっぱり駄目。今のままじゃ貴方の夢は完成しない。アンノウンを持つ者に安寧をもたらすという私達の夢が……」

晴「燈葉……」

突然の言葉に晴人は少々驚いた。

燈「連中は私達に任せて、貴方はその石を完全なものにして。密緋なら大丈夫、あいつは衆治との対峙を強く望んでいるから」

晴「……お前はどうなんだ?」

晴人の問いに燈葉の表情は微笑んでいた。

燈「それこそ心配はいらないわ。仮にもしもの事があったとしても、この身は貴方に委ねているから」

燈葉の表情から溢れる自信に晴斗は何も言わずにその場を立ち去ろうとした。

晴「燈葉、あの桜も事切れたのか?」

晴斗は一度だけ立ち止まり燈葉に質問を投げ掛けた。

燈「ええ」

晴「…………ならば、もはや聖痕せいこんを維持しておく理由も存在しなくなった訳か。ついでに破壊しておくとしよう」




上階へと続く長い回廊を走る衆治は先を急いでいた。

衆 (敵があと何人いるか分からない以上、一刻も早く智琉と合流しないと……)

智琉を探す衆治の目に、幾重にも並ぶ回廊の窓の向こうから一瞬、何かが下に降りる様な影が映った。

衆「何だ!?」

窓から下を覗いた衆治が見たのはラストエンペラーとそれに乗りペルフェット城の外から地面に落下する様に降りる晴人の姿だった。

衆「晴人!?」

衆治は地面に降り立った晴人を追う為、反射的に来た道のりを引き返そうとした。

?「どこ行くんだよ?」

その時、背後からの一声が衆治の足を止めた。振り返った衆治の先には不敵に笑う一人の男が立っていた。

?「俺を目の前にしてどこか行こうなんて真似はしねーだろうなあ、衆治?」

衆「……………………密緋!?」

その男の姿に衆治は目を丸くし驚愕した。




最上階まで辿り着いた智琉は展望台の扉の前で覚悟を決めた。

智「あいつが何を仕掛けていようと、どんな手で襲って来ようと関係ない。俺は俺のすべき事をする!」

腹を括った智琉が扉を開けて入った展望台の先にいたのは一人の女の姿だけであり、晴人の姿は影も形も見当たらなかった。その状況に智琉は少し戸惑った。

智「…………お前だけか?」

燈「貴方が考えてる事は察しがつくわ。思っている通り、ここにはもう晴人はいないわ。貴方達から距離を置いたから」

智「……どこに行った?」

燈「貴方に伝える筋合いなんて無いでしょ?」

智「そりゃそうか」

智琉はため息混じりに首を傾げた。

智「名前は燈葉で合ってるか?」

燈「ええ、衆治から聞いたの?」

智「そんな所……」

目の前の状況に智琉は上手く言葉が出て来なかった。

燈「どうしたの?アンノウンを出さないの?それとも女相手にアンノウンを使うのは不本意かしら?」

智「別にそういう訳じゃない。ただ俺達の目的は晴人であって、それ以外の奴には戦わないで解決出来るならそれに越した事はないだろうから」

燈「貴方達は私達を倒しに来たんじゃないの?明確な敵意を持って私達の夢の実現を阻みに来たんじゃなくて?」

智「それはそうだけど……」

燈「はっきり言って貴方の信念には見て取れる程に揺るぎがある。そんな信念で晴人の描こうとする世界の邪魔をするなんて事自体無謀としか言い様がないと思うのだけど」

智「…………」

燈葉の的確な言葉に智琉は返す言葉が無かった。

燈「まあ、貴方が対話を求めると言うのなら少しの間それに応じる事もやぶさかではないわ。だけど、それで本当に貴方は納得するのかしら?」

智「納得?」

燈「貴方は私達が追求する夢がどういうものかは理解しているの?」

智「昌気から大体の事は聞いた。晴人のやろうとしている事はアンノウンを持つ者の救済に繋がるとかって聞いたけど」

燈「ならどうして彼の目的の邪魔をするなんて結論に至ったと言うの?」

その質問に智琉は思っている事をそのまま言葉にした。

智「衆治も言ってたが、あいつのやろうとしている事の方が無謀な話だ。アンノウンの全てを統括するなんて無理がある。仮にそれが出来たとして、それであいつが何を起こすか分かったもんじゃない」

回答を聞いた燈葉の顔は浮かなかった。

燈「それは貴方の勝手な憶測でしかない。彼の考えや心の底を理解しようともせず感情的に自分の受け付けないものを押し込めてるだけでしょ。違う?」

智「それは……」

燈「貴方の言葉には全くと言っていい程に重みが無い。強固で揺るがない意志も思考も無く、軽率過ぎる理由で牙を向ける様な者達に私が手心を加えるなんて思わない事ね」

燈葉は右手を広げると自身のカードを具現化した。

智「!」

燈「無意味な事かもしれないけど覚えておいて。もし相手の考え方を言葉で変えたいのなら言葉に重みを持たせる事。語り掛ける相手の根底にある信念にし掛かる程の言葉を突き付けなさい」

燈葉はカードから自らのアンノウンを出現させた。




続く


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