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16-3話




衆治はシザーハンズを凶気の桜に向けて斬り掛からせた。桜は砂利や石を集めて固め岩を作りシザーハンズ目掛けて撃ち放つが、衆治のメディエイターの力で強化されたシザーハンズはそれをいとも容易く斬り裂いた。

桜⦅成る程……⦆

桜の真正面までシザーハンズが迫った時、突然吹き荒れた強力な向かい風がシザーハンズを遥か後方に押し飛ばした。着地したシザーハンズにすかさず桜が放つ大岩が三つ迫り来るが、これも簡単に砕かれ岩の破片がシザーハンズの周囲に散乱した。

桜⦅パワー、スピード、共に先程とは比べようも無いまでに向上したな。これがメディエイターのなせる技か⦆

衆「お前は人間を見下してるみたいだが、人間はどんな生物よりも進化する事に長けている。お前の攻撃もこうして見切れるくらいになあ」

桜⦅そうだろうともさ。確かに人間の進化というものは脅威に値すると言えよう。であるからこそ、此方こちらもその先の手を打つ事が肝要になってくるのだ⦆

衆「何?」

その時、衆治は違和感に気付いた。シザーハンズの周囲から何故か湯気が立っていたのだった。湯気の出所はシザーハンズが砕いた岩の破片の一つ一つからであり、それらは微弱に動いていた。

衆「これは……」

衆治がよく観察する為に近づこうとした時、湯気を立てる破片が一斉に衆治とシザーハンズに向かって飛び掛かった。

衆「のわっ!」

衆治はそれらをシザーハンズで斬り払おうと試みたが、危険を感じ回避する事に専念した。その攻撃にシザーハンズのコートの端の一部が焼け焦げてしまった。

衆「今の攻撃は……」

桜⦅察したか。岩石は超高温でその形は崩れ触れる物全てを焼き焦がす物質へと変化する。その状態を溶岩という⦆

衆「……また厄介な物を」

桜⦅メディエイターの力を解放した今のお前に強固なだけの岩石では意味を成さない。が、触れる事さえ叶わない溶岩にはそのハサミも文字通り太刀打ち不可能だろう⦆

凶気の桜は再び石を一点に集め一枚の岩石を構築すると、それをドロドロの溶岩へと融解させた。

桜⦅これを防げるか見ものだな⦆

桜は浮遊する溶岩を無数の小さな溶岩の塊として衆治とシザーハンズに撃ち放った。網の目をくぐる程も無い攻撃に桜は直撃を確信した。しかし、土埃が晴れた景色にあったのはかすり傷を追いながらも未だ佇む衆治とシザーハンズの姿だった。

桜⦅避けた……というのか?⦆

衆「ああ、攻撃を避けるのは得意でな。それにお前の繰り出す攻撃は比較的対処もしやすい」

桜⦅何だと?⦆

衆「お前の能力は自然の力の劣化版だ。俺への攻撃に放つ岩も、そこから派生する溶岩も全部お前が一から生成する必要がある。つまり先手を取れない、否応いやおう無しに後手に回るのがお前の能力の弱点だ」

桜⦅戯言を……⦆

凶気の桜は再度石を収束させる動きを見せるが、衆治はそこをシザーハンズで叩き潰し、粉々に砕いて攻撃の機会を与えなかった。

衆「お前がどれだけ攻撃を繰り出そうとも、一手遅れるお前の能力を阻止するのは簡単だ」

衆治は桜の次なる攻撃に備えシザーハンズを構えた。その様子に桜は多少の感心を示した。

桜⦅見事だ、この僅かな間にそこまでの状況把握を可能にするとは。だがしかし、私の能力に弱点がある様にお前が提示した攻撃阻止の手段にも粗は存在する。それが分かるか?⦆

衆「…………」

衆治は返す言葉が思い付かなかった。

衆 (完璧とは思ってないが、粗なんて言う程のものがあるのか?)

そう疑問に思った時、衆治の頭に何かが降ってきた。

衆「!」

その正体は水滴であった。一滴の水滴が突然衆治の頭に落ちて来たのだった。

衆「雨か?」

気になり空を見上げた衆治の目には空中に浮かぶ水溜りが広がっていた。

衆「み、水かこれは!?」

桜⦅水とは大気中の酸素と水素の化合によって出来る物質なのは知っているな?それも自然の為せる行いである以上、私が生み出せる事に疑問はあるまい?⦆

目には見えない酸素と水素が合わさり、空気中に突然現れた様に発生した水は衆治の手の届かない上空で大きな水溜りを形成していた。

桜⦅粗というのは、お前やそのアンノウンの攻撃が届き得る範囲内でしか防ぎ切れないという点だ。いかに先見の如き観察眼と刹那程の攻め手を持ち合わせていようとも出来得る行いには限界があろう⦆

衆「見た目通り、お前には頭というか脳みそって物が無いんだな。人間は大量の水を浴びただけで簡単に死ぬなんて見当違いな過小評価する訳だ」

衆治は嘲る言葉を浴びせたが、桜はそれを一笑に付した。

桜⦅心配無用だ。これはお前の攻撃を不全なものへといざなう過程に過ぎない。もう一つの粗を突く為のな⦆

衆「何?」

その時、衆治の立つ地面が地鳴りを響かせひび割れたかと思うと、巨大な溶岩の塊がコンクリートを突き破り突出してきた。それを衆治は咄嗟に後方に回避した。

桜⦅今の様にお前の視界の届かない地点からの攻撃ならばお前の対処能力は著しく低下する。視界を奪われれば無力に等しくなる、それがお前の最たる粗だ⦆

その瞬間、桜が上空に形成していた水溜まりが一気に地面から突き出した溶岩の塊に向けて降り注いだ。超高温の溶岩に触れた水は一斉に気化しその蒸気が衆治と桜の周囲を完全に真っ白に覆った。

衆「…………そういう事か」

桜⦅蒸発した水蒸気が外気に触れ冷やされる事で白く濃い霧へと変化する。一メートル先も視認不可のこの状況で私の攻撃を対処出来るか?⦆

周囲を霧で覆われ白以外の色が視界に無い衆治にとって自身のアンノウンであるシザーハンズの位置以外は完全に情報が遮断された状況にあった。危機的状況である事は明白であったが、それでも衆治には手段は残されていた。

衆 (見えづらい霧でも僅かな揺らぎを観察すれば攻撃を躱すくらいは出来るかもしれないが、万全とは言いにくい。ならやる事は一つ……)

目で見えなくとも精神で感じ取れるシザーハンズを衆治はいきなり突撃させた。攻撃を受ける前に凶気の桜に攻め入り勝負を付ける事に決断したのだ。

衆 (これから奴がどこからどんな攻撃を繰り出すかは分からないし、それを防ぎ切れる保証も無い。だが、奴がどこにいるかの大凡おおよその位置は把握している。地に根を生やし身動き一つ取れない状態にある事が奴自身の粗だ!)

衆治の視界には若干ではあるが桜の巨体の影が霧の中に浮き出て見えていた。狙いを定め勢い良く斬り掛かったシザーハンズの攻撃は確かな手応えを衆治の精神に伝達した。




続く


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