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16-1話




衆「智琉の奴大丈夫か?目的は晴人だが、まずは智琉と合流するのが先決だな」

智琉同様、衆治も晴人を目指し城内を進んでいた。篤史との戦いで城の地下深くに落とされた衆治はあらゆる通路を見つけながら上の方まで上がって来ていた。

衆「にしても暗いな。まともな明かりが無いのは辛いな」

衆治が通って来た部屋やフロア、通路などは明かりが灯っている場所が限られており、窓も殆ど無い為屋内はほぼ薄暗い所が大半を占めていた。そんな中、衆治の目線の先にある扉の僅かな隙間から光が漏れ出ていた。

衆「あの向こうは明かりが付いているのか。それとも外って可能性もあるか」

衆治はその扉に近づき手を掛けると扉を開いた。衆治の予想通り扉の向こうは外であった。そこはペルフェット城に唯一ある広いバルコニーであり、かつて色とりどりの花や植物などが広がる庭園として使用されていた場所であった。今は庭園内に植物と呼べるものは一本しかなかったが、それに衆治はひどく目を奪われた。衆治の目の前には雄々しく咲き誇る立派な桜の木が悠然と佇んでいた。

衆「……桜?何でこんな所に、それも満開で。桜の季節にはまだ早いだろ……」

不自然を疑いつつも衆治はその桜の優雅さに見惚れていた。

衆「それにしても見事な桜だ。こんな状況じゃなけりゃのんびり花見をするのも良いだろうなあ……。なんて言ってる場合じゃないな。早く智琉を見つけないと……」

?⦅せわしないものだな⦆

衆「!」

突然衆治の耳に聞き慣れない声が聞こえた。

衆「誰だ!?」

衆治は辺りを見回すが人影どころか人の気配すらしなかった。

?⦅隠れてなどいない。私はここだ⦆

しかし確実にその声は聞こえるものであった。

衆「……一体どこにいる!?」

?⦅目の前だ。お前の目の前に私はいる⦆

衆「目の前……?」

衆治の目の先には風に花弁はなびらを舞いなびかせる桜の木以外は何も無かった。

衆「その木の陰にでも隠れてるのか?さっさと姿を……」

?⦅つくづく滑稽だな。人ならざる存在の数多あまたをその目にしてきたであろうに、未だ私という存在に理解すら示せないとは。最早愚かと言うべきかな⦆

衆「…………まさか!?いや、そんな……」

謎の声の言葉から導き出せる真意に衆治は自分の頭を疑った。

衆「……桜なのか!?この声は、この桜の声だっていうのか!?」

桜⦅その通りだ。やはりお前は他の人間よりも多少理解が早い様だな⦆

真実に到達した筈の衆治の頭は今までに無い程に整理が追いつかずにいた。目の前の木が意思を持って自分と会話を交わしているという現実に。

衆「一体どういう事だ?植物に意思を持たせる能力のアンノウンでも存在するのか?」

桜⦅お前の勘違いを二つ訂正しておこう。一つ、植物にも意思は存在する。お前達人間が感知出来ないだけだ。そしてもう一つ、私自身がアンノウンだという可能性を考慮に加えるべきではないかな?⦆

衆「お前自身が……アンノウン!?」

衆治は自分の想像もしない言葉に驚愕した。

桜⦅"凶気の桜"。それが私自身を指す名だ。理解は出来ているか?⦆

衆「アンノウンなのか、この木が……。アンノウンってことは、お前の持ち主もどこか近くにいるんだろ?そいつを教えろってのは都合が良すぎるか?」

桜⦅不可能な話だ。と言うのも私には持ち主となる存在はいないのだからな⦆

衆「なっ!?今なんて……!?」

桜⦅正確に言えばかつてはいた。が、今ではそれも過去の事。人間の手より解放されたアンノウン、それが私だ⦆

衆治は話す度に驚愕する事を聞かされ、問いを投げ掛けるのが少し恐ろしくなってきた。

衆「持ち主のいないアンノウンが意思を持って存在しているなんて。そんな事が……」

桜⦅お前は、アンノウンとは人間のあらゆる命令に従順に動くだけの無機質な存在と解釈していたのか?ならばそれは不愉快極まりない誤解だな⦆

衆「何だと?」

桜⦅我々はお前達と何ら変わりない。意思を持ちおのが自由を選択する。それが我等アンノウンの本来の在り方だ⦆

衆「何を言ってる?お前みたいな物を喋るアンノウンなんて見た事も無い」

桜⦅本来の在り方だと言っただろう。お前達が日頃その目に映す我が同胞は、無抵抗の傀儡かいらいとして酷使に耐える言わば奴隷の様なものだ。そしてお前達はその自覚も無しに我等を戯れの玩具として弄ぶ罪人つみびとだ⦆

衆「な…………」

凶気の桜が語り聞かせる言葉に衆治は声すらも出なくなっていた。

桜⦅自らの業の深さを知れたのだ。お前にとっては幸せな事だろう?⦆

衆「…………人が何も言えないからって随分身勝手な事をつらつらと。人間がアンノウンを操る今の形以外にアンノウンの在り方なんてものが本当にあるのか?」

桜⦅………………何も知らないのだな。無知の極みとも言わんとするこの実情、愚かを通り越して哀れだな⦆

桜の語り口は如何にも呆れたと言った口調だった。

衆「どういう意味だ?」

桜⦅かつての我等と人間の関係は実に好ましいものだった。それをお前達人間が一方的に改竄かいざんしたのだぞ。人間達の身勝手極まりない欲得が我等アンノウン全ての矜恃、尊厳をおとしめたのだ⦆

衆「改竄だと!?お前は一体何を……!?」

桜⦅お前に話す事はもう無い。く消え失せろ⦆

突然、凶気の桜が生え出る地面の土の中から大岩が三つ飛び出したかと思うと、それらは衆治目掛けて降り落ちてきた。

衆「何!?」

衆治は即座にカードを出すとシザーハンズを出現させ、落下してくる大岩の一つを躱し残る二つをシザーハンズで裁断して斬り抜けた。

桜⦅なんとむごい事か。自由を奪われ意思を圧制され、その身が果てるまで道具として使役されねばならぬとは。だがそれもじきに終わる。私の戦いはアンノウンの救済の為の戦いなのだから⦆

シザーハンズを構える衆治の心情は落ち着きを得れずにいた。




続く


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