15-4話
昌気はレッド・ドラゴンに七人の侍を突撃させた。智琉はレッド・ドラゴンのエネルギーの斬撃を撃ち放つが、動けない三体の侍が放つ斬撃で簡単に壊された。
昌「冷静になってみりゃお前のドラゴンと俺の侍のエネルギーを見分けるのは何も難しい事じゃない。このままどんどん押して行く」
智「ちっ」
智琉はレッド・ドラゴンのエネルギーを周囲の床に展開し新たに罠を作った。が、それを想定していたかの様に四体の侍は空中へジャンプし、そこへ三体が飛ばした斬撃を踏み台にレッド・ドラゴンに斬り掛かった。レッド・ドラゴンが受けたダメージは智琉にとって今にも倒れてしまいそうな程に蓄積していた。
智「ぐっ……うう……」
昌「もう俺に斬撃のカムフラージュは通用しないと思っておけ。それよりもお前が気にしないといけないのはお前自身の事だ。いい加減立ってんのも限界じゃないか?」
智「…………そんな事……」
強がりを取り繕うが、今の智琉にはそれも精一杯であった。
昌「見りゃ分かる。そうでなくても七人の侍の攻撃をあれだけ喰らって平気な奴なんていない。俺が手を下さなくても倒れるのは時間の問題だな」
疲労の限界、それは智琉自身が一番理解していた。勝負を決める為、智琉はレッド・ドラゴンを羽ばたかせ側にあった大きなガラクタを掴んで勢い良く飛翔させた。
昌「ん!?」
レッド・ドラゴンは持ったガラクタにエネルギーを纏わせると、身動きが取れない三体の侍の内の一体に猛スピードで急降下しそれに目掛けてガラクタを投げ落とした。
昌「何!?」
あまりの勢いにその侍は完全にガラクタの下敷きとなり潰れてしまった。自分のアンノウンの一体が破壊された昌気の体には大きなダメージが加わった。
昌「づっ…………、成る程、そういう手に打って出たか。俺のアンノウンを七体全部倒せば俺も倒れると……」
智琉はそのままレッド・ドラゴンに低空飛行でガラクタを二つ掴ませると再度上昇し、再びエネルギーでガラクタを纏わせると急降下し残りの動けない二体に同時にガラクタを投げ落とした。
昌「同じ手が通用すると……!」
二体の下で構える侍が刀にエネルギーを溜め斬撃としてガラクタに放つも、レッド・ドラゴンのエネルギーを纏ったガラクタはそう簡単には破壊されなかった。
昌 (やっぱ斬撃だけじゃあれは壊せないか)
成す術なく先程同様、二体の侍もガラクタに押し潰され、それによって昌気が負う痛みも更に増大した。
昌「がああっ…………、だがもう終いだ。あとの四体は決してやられない」
体を押さえ汗が滴りながら昌気は笑みをこぼした。智琉は又もガラクタの攻撃を準備するが、動きの速い四体の侍に狙いを定められずにいた。なんとか狙いを捉えガラクタを投げ落とすが、侍は手にした刀で迫り来るガラクタを一刀両断にして防いでしまった。
昌「睨んだ通り、斬撃として飛ばさずエネルギーを纏った刀で直接ぶった切れば破壊出来る」
智「……まずい」
突破口を見出した昌気はレッド・ドラゴンに対し一気に畳み掛けに打って出た。空中高く滞空するレッド・ドラゴンに一体の侍が跳び上がると、その侍の軌道にもう二体の侍が斬撃を飛ばし足場を作った。その斬撃を踏み台に更に高くジャンプした侍は優にレッド・ドラゴンの懐に入る事に成功した。
智「なめるな!」
智琉はレッド・ドラゴンの尻尾を鞭の様にして振り払った。レッド・ドラゴンに比べて空中での機動性に劣る侍は充分な回避も出来ずに払い落とされた。が、その行動は昌気にとって予測出来ていた事だった。
昌「これで背中は貰った」
智「!」
智琉は昌気の言葉の意味をすぐに理解した。レッド・ドラゴンが侍を払い落とした時、もう一体の侍が刀の刃先を向けて智琉の背後を取っていたのだ。
昌「注意を空に向けてしまったのが敗因だ。あの世で後悔しろ!」
光る刃先を真っ直ぐに侍は刀を背後から突き刺した。刺した刀は胴体を貫き胸部から刃先が長く飛び出していた。全ては昌気の思い通りに運んだ。突き刺されたのが昌気自身という事以外は。
昌「…………な……!?」
昌気の背後には手にしている刀で昌気の体を貫く侍が立っていた。それを理解したと同時に昌気の体に感じた事の無い痛みが走り、急に意識が遠のいていく気がした。七人の侍は糸が切れたかの様に一斉に倒れ込んだ。
昌「何で……どうして……」
智「お前の侍の一体だよ」
昌「……あ?」
智「お前の体を貫いてるのは、紛れも無いお前のアンノウンだ」
薄れていく意識の中、昌気は目を凝らして確認した。昌気の視界には映るのは倒れた四体の侍と自らを突き刺す侍の一体の計五体であった。
昌「……なんだ……。数が……おかしい……」
智「お前は勘違いしてる。俺はお前の侍三体を潰した訳じゃない。一体だけ残しておいた」
昌「何……?」
智「潰したと見せる事でお前は侍への注意を残った四体にしか向けなかった。そのおかげで俺はお前が操作を放棄した侍の一体をレッド・ドラゴンのエネルギーで操る事が出来た。レッド・ドラゴンの能力でアンノウンの動きを止める事は出来ても行動を操る事は出来ない。けど、倒されたと思い込み操る事を放棄されたアンノウンならその能力は使えなくても手に持つ武器で攻撃するのは可能って事だ」
昌気を貫く侍の体の表面は薄っすらとレッド・ドラゴンのエネルギーで覆われていた。自力では動かなくなった侍を自由自在のレッド・ドラゴンのエネルギーで覆う事で智琉は一体の侍を我が身の如く動かし、昌気の不意をついたのだった。自身の状況を理解した昌気はどこか満足気な表情を浮かべていた。
昌「……冷静になれば…………一体残していた事だって……感じ取れた筈……なのに、…………やっぱり俺は……甘さを消しきれ…………なかったな…………」
昌気の呼吸が止まり、その瞬間残っていた七人の侍は全てカードへと姿を戻した。張っていた気が切れ、智琉もその場に膝を着いた。
智「……結構……ヤバかったな……」
息を切らしながら智琉はレッド・ドラゴンをカードに戻すと、ポケットから心壱から貰ったブラック・スワンの羽を取り出し自分の体に突き刺した。みるみるうちに智琉の体に活力が湧き即座に立ち上がれるまで回復した。
智「これで終わり。ここからはもう後は無い、致命傷を負えば最後だ」
智琉は先に進む前に一瞬、既に息の絶えた昌気に目を向けた。
智「歴史の生き証人になんか俺はなるつもりは無い。今のままで充分だ」
智琉は前を向くと晴人を目指し歩き出した。
続く




