14-2話
目的の駅で下車し、二人はドリームエンターパークへ続く長い一本道を歩いていた。
衆「知ってるだろうがパーク内には駐車場ってものが無い。パークから離れた駐車場に車を停めてその近くのバス停からパークまでの道を往復する専用バスに乗るのがそこまでの行き方だったらしい。勿論、今は運営してないからそんなバスも無いし、こうやって歩くしか手段は無いがな」
智「ああ、懐かしい風景だ」
周囲を警戒しながらも智琉は少し物思いに耽っていた。
衆「智琉、お前はどう思う?」
智「どうって何が?」
衆「奴が潜んでいる場所とお前の過去。ただの偶然か?それとも……」
智「何が言いたいんだ?」
衆「いや、思い過ごしかもしれんが少し気になったんだ。奴がなりを潜めるのにここを選んだ理由が」
智「…………つまり衆治は晴斗が俺の過去の事を知った上でこの場所を拠点に選んだって思ってるのか?」
衆「流石にそこまでは思ってない。が、何か出来過ぎたものを感じてな」
智「……心配し過ぎだ。そんな事を深刻に考えなくても俺は平気だ」
衆「本当にそうか?」
衆治は歩みを止め振り返り面と向かって智琉に疑問を投げ掛けた。
智「衆治?」
衆「さっきは無理に納得したがもう一度だけ聞く。本当に大丈夫なのか?」
智「大丈夫って……」
衆「もし死んだ自分の両親の事を口にされて冷静でいられるか?両親の遺体を晒されて平常を保てるか?もしも晴斗のラストエンペラーがお前の両親の遺体を操って目の前に現れたら正気を保てるのか!?」
智琉は衆治の気迫に押され回答を口籠ってしまった。
智「…………正直な所、それは分からない。衆治が今言った事の何一つ俺は想定すらしてなかった。だから衆治の質問に答えるとしたら“分からない”だ」
衆「……そうか、悪かった」
衆治はまた前を向き歩き出した。
智「どうして謝るんだ?」
衆「別に。だが俺がさっき言った事は可能性としては相当低いものだ。疑問に思っといてなんだが然程心配する様な事じゃないだろう」
智「それ俺が散々言った事じゃないか!」
衆「だから悪かったって」
敵地を目の前にして二人の空気は少し和やかなものに変化した。
漸くパークの入り口に入った二人の目の前には、すっかり荒廃し活気に満ちていた頃は見る影も無くなったドリームエンターパークの風景が広がっていた。
衆「どうだ?元来場者としてこの光景を見た感想は?」
智「全然変わったな。少し面影が残ってるかどうかってとこだ」
衆治は辺りを見回した。見えるのは寂れ果て動く気配の無いアトラクションと閑散とした売店、あとは遠くに映るこのパークの象徴であるペルフェット城だけだった。
衆「今のこの遊園地で潜むのに適してんのはあの城以外に思い浮かばないな」
智「てことは晴斗達は……」
衆「高確率であの城にいるだろうな」
智琉と衆治は互いの意見の一致を確認するとペルフェット城へと向けて歩き出した。
晴「来たな」
辛うじてその外観を留めるペルフェット城。その天辺の展望台に二人の男女の姿があった。そしてその男の方は晴斗であった。
晴「お前の睨んだ通りだな燈葉。やはり景吾も奴らに討たれたと見るのが妥当か」
燈「ええ、その様で。昨日景吾から送られてきたメールの返信には貴方が定めた暗号が隠されていなかったわ。景吾の事だからわざと使わなかった可能性も歪めなかったけど」
燈葉と呼ばれる少女は冷静な表情と声で晴斗に答えた。
晴「その疑念も確証へと変わった今、俺達が為す事は理解しているな?」
燈「当然。しかし彼らも貭耶達を倒した程の者たち。あれから勝利を奪うのは想像するより困難かと思うけど」
晴「考慮の上だ。奴ら二人の力が強大な事は自ら相見えて痛感した。奴らを互いから引き剥がし、その上で相応の結末を与える。それが俺達からの手向けだ」
燈「そうね。例え不可能に近い事でも貴方の為なら私はいつでもこの身を投げ出せる。私の誓いは変わらないわ」
燈葉が晴斗に向ける目には固い忠誠が籠っていた。
燈「じゃあ私も連中を迎え撃つ準備をしてくるわ。それと晴斗、調律石の方は順調?」
晴「現時点で問題は無い。が、運用するには今はまだ勝手が悪い。あの桜の言葉が世迷言でなければの話ではあるがな」
燈「……そう、分かったわ」
燈葉は何かを納得すると展望台を後にした。
ペルフェット城の入り口の前までやって来た智琉と衆治は目の前に聳える城を見上げていた。
智「この中に晴斗達がいるとして、何人いるんだろうな?」
衆「俺が晴斗達と出会った時の面子で言えば、残りは晴斗を除いて二人だな。名は昌気と燈葉だ」
智「つまり男が三人か」
衆「燈葉は女の名前だ」
智「…………そうか」
衆「まあ、あいつもあれから仲間を増やしてないとも限らない。敵はそれ以上と思っておけ」
智「ああ」
衆「行くぞ」
覚悟を決めた二人は大きな扉を開け中へと入って行った。城の中はエントランスが広がっており、内装は暗く寂れてはいたがどこか人の手が加えられた様子が伺えた。奥にはその次の部屋への扉があり、扉の左右には階段が上のもう一つの扉に続く様にかけられていた。
智「廃遊園地の廃城ってのはやっぱり薄気味悪いな。で、衆治。行き先は二つあるけどどうする?」
衆「お前はどっちが怪しいと思う?」
智「怪しいとまでは言わないけど、少し二階が気になるな俺は」
衆「じゃあお前は二階の扉を開けて調べてみてくれ。俺は下を調べてみる」
智「分かった」
智琉は階段を上って上の扉へ、衆治は真っ直ぐ下の扉を開けて中を覗いて見た。智琉が見た部屋はエントランスと特に変わった雰囲気は無く、人影も見当たらなかった。
智「誰もいないか。他の部屋への扉はいくつかあるが……」
衆治が覗き込んだ部屋は薄暗くほぼ何も見えなかった。
衆「何だこの部屋は?」
衆治が気になって部屋の内部に入ったその時、扉が大きな音を立てて勢いよく閉まった。
智「衆治!」
その音は二階にいた智琉の耳にも聞こえてきた。智琉は急いで衆治が入った部屋の扉の前まで駆けつけた。
智「衆治、大丈夫か!?」
衆「智琉!」
外の智琉の声に気付いた時、部屋は明かりが灯り衆治の視界を蘇らせた。
?「へっ、衆治ってのはあんたの事だろ?」
目の前には一人の男が不敵に笑いながら衆治を待ち構えていた。
衆「想定はしてたがバレてたか。それにしても知らない顔だな。会うのは初めてか?」
篤「ああそうだな。俺は篤史、あんたの事は晴斗からよく聞かされてるよ。相当厄介な奴だってなあ」
衆「そう言うお前は奴に勧誘されたばかりの新入りか?こんなのに頼るなんて、あいつも落ちぶれたな」
篤「んだと」
篤史は分かりやすく腹を立てた。
篤「お前はもう逃がさねえ。俺の手で惨たらしく殺してやる」
衆「台詞がありきたりだな」
篤史はカードを手に具現化させた。
続く
《人物紹介》
命凰 燈葉
身長161cm 16歳
嫌いなもの:フルーツ味の歯磨き粉
細岡 篤史
身長166cm 15歳
嫌いなもの:長所と短所を問う質問




