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14-1話




景吾の襲撃から二日後の朝、大分もとの調子を取り戻した智琉と衆治は身支度を済ませ出発の準備を整えた。二人の目的は晴斗とその仲間が潜伏してるであろう今は営業停止で廃墟と化した遊園地、ドリームエンターパークである。

心「本当に大丈夫かい?」

玄関の前では心壱が出発する二人に疑問を投げかけていた。

智「大丈夫ですよ。俺も衆治もこの通りすっかり元気になりましたから」

心「そんな事言って、またボロボロになって帰って来るんじゃないかな?」

衆「なんかそんな気もします。ところで心壱さん、弥結は?」

心「弥結くんかい?あれから一度起きたんだけどね、その後またすぐ眠り始めて。やっぱりあの小さな体にあれだけの戦闘はこたえたんだろうね」

衆「それでいいです。この事を知ったらあいつも着いて行くって言いそうですし」

心「ホント君は相変わらずなんだね」

心壱は二人の自信と優しさにどこか安心出来るものを感じた。

心「よし、じゃあ僕から君達にこれを渡しておくよ」

心壱が差し出した手には二本の黒い羽があった。

智「これって」

衆「ブラック・スワンの」

心「そう、刺したものの力を活性させるブラック・スワンの羽。君達に一本ずつ渡しておく。疲れたり怪我した時、力が出ない時には遠慮なく使って力を奮い立たせておくれ」

衆 (んなエナジードリンク感覚で言われても……)

智「ありがとうございます。大切に使います」

二人は心壱から羽を受け取ると目的地のドリームエンターパークへ向けて出発した。




智琉と衆治の二人は孤児院の最寄りの駅から電車に乗り数十分揺られていた。遊園地のある場所への距離はそこそこあり、少し時間がかかるものであった。

智「レッド・ドラゴンで飛んだ方が速いんじゃないのか?」

衆「何しに行くと思ってんだ。移動なんかに無駄な体力使う必要は無い」

智「衆治、その廃遊園地に本当に晴斗達はいると思いか?」

衆「いるだろう。昨日も景吾の携帯にその遊園地に戻って来いってメールが来てるからな。ほぼ確実だ」

智「メールって、てことは何か返信しとかないと怪しまれるんじゃないか?」

衆「抜かりない。俺が奴を装ってメール全てに返信している。景吾は俺とお前を既に始末したってシナリオでな」

智「じゃあ向こうは……」

衆「結構呑気にしてんじゃないか。そこを俺達が攻め込むのが本来の現実だけどな」

衆治は得意げにそう話したが、すぐに表情を引き締めた。

衆「だがそれで油断してたんじゃ足下をすくわれる。気は緩めるなよ」

智「ああ、分かってる」

思う所は智琉も同じであった。

智「衆治、俺達が行くドリームエンターパークだけど……」

衆「それについて俺なりにスマホで色々調べてみた。ドリームエンターパークは開業から二十年以上に渡って多くの来場者を迎えた結構盛えたテーマパークだったらしい。広大な敷地だった訳じゃないが工夫の凝らしたアトラクションやパーク中心にあるボートを楽しめる綺麗な湖。何よりの目玉がパークのどこからでも見える程の大きな城、ペルフェット城ってのがあって天辺てっぺんの展望台からはパーク中を一望出来たって言う話だ」

智「……うん」

衆「だが今はこのパークはもうずっと稼動していない。と言うのもこの遊園地では三年くらい前に深刻な事故が起きたらしくてな、その結果二人の男女が死亡したって扱いになっている。そんな事があって間も無くパークは閉園、未だ解体もされずそのままってのが現状らしい」

衆治の話を聞いている間、智琉はずっと浮かない顔をしていた。

衆「お前どうしたんだ?昨日からなんかそんな調子で。何かあるのか?」

智琉は黙り込んだ後、一言だけ口を開いた。

智「……犠牲になった男女二人の名前記憶してるか?」

衆「犠牲者の名前?いや、名前までは。何しろ遺体が見つかってないとかで死んだと確証してる訳じゃないみたいだからなあ。ちょっと待ってくれ」

衆治はスマホを取り出すと自分が昨日調べた内容を再確認した。

衆「あったぞ、この事故だ。で、犠牲者の…………!」

衆治は自分の目を疑った。そこには名字が織杜の男女二人の名前が書かれていたのだった。

衆「……智琉……これって……」

智「その二人は俺の父さんと母さんだ。お前と初めて会った時話したよな、家族で行った遊園地で両親が死んだって」

驚愕する衆治とは対照的に智琉の話す言葉と表情はとても穏やかなものだった。

智「三年前だから十二歳の時だな。家族三人のちょっとした旅行みたいなもんで行ったのがあの遊園地だ。天気も良くて人も多く賑わってて、午前中から思いっきり遊びまくったよ。そりゃもう父さんも母さんもヘトヘトになるくらいに。俺達三人は湖に面するレストランのテラスで昼食を済ませて父さんも母さんは食後の紅茶を飲んでゆっくりしてた。でも子供だった俺は全然遊び足りなくて二人が呼び止めるのも聞かずにレストランを出てまだ入った事の無いペルフェット城に向かって走って行こうとした。その時、俺の後ろのレストランから爆発が起こったんだ」

衆「それがあのパークで起こった事故……なのか?」

智「爆発の原因はよく分かっていないらしい。ただ分かってる事は多くの怪我人が出た事と、俺の両親が見つからなかったって事だ」

衆「見つからなかった?」

智「レストランで起きた爆発でテラスは崩れて湖に沈んだ。その瓦礫と一緒に生き埋めになった可能性が高いって警察が爺ちゃんに話してるのを聞いちゃってさ。一応事故の後何回か湖に潜って捜索したみたいなんだけど、やっぱり見つからなかったらしい」

衆「…………」

表情の変わらない智琉に衆治は少し不安を感じた。

衆「智琉……」

智「大丈夫、父さんと母さんの事はもう割り切ってるし、今俺達が考えるのはその事じゃない。心配しなくていい」

衆「本当か?本当に割り切れてるのか?」

智「……本当だよ」

衆「…………そうか」

智琉の言い様から衆治も自分を無理矢理納得させた。そこから目的地に着くまで会話は弾まなかった。




続く



《世界観紹介》

ドリームエンターパーク:開業以来二十年以上に渡って数多くの来場者を迎えたテーマパークであった。しかしとある事故をきっかけに客足が遠のき閉園を余儀無くされ、今は僅かに形を保つだけの廃園と化している。その事故による犠牲者が智琉の両親である。


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