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13-4話




家内の衆治と弥結は外の動きを警戒していた。

弥「だんだん音が激しくなってきたけど……」

衆「外の事は心壱さん達に任せておくんだ。俺達じゃ……」

その時、部屋の床が盛り上がったかと思うと床板を突き破りフランケンフィッシュが飛び出してきた。

弥「きゃああ!」

衆「こいつは……!」

驚く二人の前に景吾がフランケンフィッシュの開けた穴から這い出て来た。

景「やあ衆、久しぶり」

衆「……景吾か」

景「成る程、聞いてた通りの重症みたいだね。今の君なら始末するのに手こずらずに済みそうだ」

景吾はフランケンフィッシュを衆治に向けて飛び込ませた。衆治は転げ落ちる様にベッドから離れた。フランケンフィッシュが飛び込んだ無人のベッドは無残に壊れ、傍らに置いてあった棚も倒れ中身が散乱した。

衆「いい気になるな!」

衆治はシザーハンズで対抗を図ったが、やはりまだアンノウンを出す事は困難であった。弥結は残骸となったベッドを貪るフランケンフィッシュにただ怯えるばかりだった。

景「心配しなくてもいいよ。僕の狙いは衆だから。君には何もしない、邪魔さえしなければね」

智「待て景吾!」

衆治達のもとに智琉と心壱が駆けつけた。

景「もう遅い。君達が何をしようが間に合わない。衆の無残な姿を拝ませてあげるよ」

景吾はフランケンフィッシュを自身の前に泳がせ警告した。弥結は震える体で衆治を抱きしめ庇った。

景「言ったよね、邪魔すればどうなるか」

弥「あ…………あ……」

弥結の口からは言葉にならない声が漏れ出ていた。

弥 (怖い……怖い……、でも……このままじゃ衆治が…………)

景「覚悟が出来てるなら無理強いはしない。仲良く逝っちゃいな!」

景吾のフランケンフィッシュが牙を立て二人に襲い掛かった。

弥 (嫌だ、そんなの嫌だ!)

弥結が心の中でそう叫んだその時、弥結の近くに落ちていたカードの一枚が眩い光を放った。

弥「!?」

景「な!」

智「あれは!」

それは先程倒れた棚の中にしまっていた心壱の集めたUCアンノウンカードであった。正式な持ち主を持たないUCアンノウンカードの幾枚の内の一枚が今、弥結に呼応したのだった。

弥「な、何これ?」

智「弥結、そのカードを取るんだ!」

智琉は思わず弥結に向かって叫んでいた。

智「それを取ってアンノウンを呼び出すんだ!それが衆治を守れる力、弥結が一番欲しかった力だ!」

智琉のその言葉に弥結は光り輝くカードへ手を伸ばす事を躊躇ためらわなかった。弥結はカードをその手に掴むとアンノウンを呼び出した。

弥「UCアンノウンカード"天使と悪魔"」

弥結の持つカードからそれぞれ天使と悪魔の出で立ちをした小さなアンノウンが二体現れた。そして弥結の表情から先程の様な怯えは消え去っていた。

景「この土壇場で随分な出鱈目を見せてくれる。面倒ごと増やしやがってさあ!」

腹を立てた景吾のフランケンフィッシュが弥結に襲い掛かって来るが、その攻撃を悪魔が手に持つ三又の槍で跳ね除けた。

景「チッ」

尚も攻撃を休めようとしないフランケンフィッシュに向けて、天使が頭上から金色のラッパを吹いた。すると奇抜な音と共に無数の音符の塊がフランケンフィッシュへと降り注いだ。

景「ったく、巫山戯ふざけた攻撃ばっかしやがって」

苛立ちが頂点に達した景吾は怒りのぶつけ所を求めていた。そしてその視界に弥結のアンノウンの天使が映り込んだ。

景「喰らい付けえ!」

景吾はフランケンフィッシュを天使に狙いを定め喰い付かせた。その動きは今日見せた中でも俊敏かつ豪快なものだった。天使はフランケンフィッシュによって体の下半分を喰い千切られてしまった。

景「どうだあ!ど素人なんかに僕が遅れを取る訳……」

その時、天使の体が破裂し煙に包まれたかと思うと、その中にあったのは無傷の悪魔の姿であった。フランケンフィッシュが攻撃したのは天使に化けた悪魔だったのだ。

景「は……?何なんだよ?一体何の……」

その時、景吾は背後にいる気配を感じた。それは景吾に対し弓矢を向ける天使であった。

景 (まず……)

景吾は回避を試みたが間に合わず、天使の放った矢は景吾の体を貫いた。貫かれた矢は悪魔がキャッチした。景吾の体には一切の傷は無く、それでいて背中から倒れ込んだ景吾の意識は消えていた。悪魔はキャッチした矢を自らの口に入れムシャムシャと食べてしまった。その瞬間、横たわる景吾の体は砂となって崩れ果て、砂にまみれた衣服だけが残った。フランケンフィッシュは既にカードに戻っていた。

弥「はあ……」

緊張が解けた弥結はその場に膝を着いた。

衆「弥結!」

弥「大丈夫、ちょっと疲れただけ」

智琉と心壱も弥結のもとへ駆け寄った。

心「本当に大丈夫なのかい?」

弥「はい、あの人はこれ以上私達に危害は……」

智「そうじゃなくて」

弥結は半ば無意識に衆治を見つめた。

弥「私、衆治の役に立てた?」

衆治は驚いた顔をしながらも正直に答えた。

衆「ああ、上出来だ」

弥「……よかった」

弥結は安心したかの様に眠りに落ちた。

智「弥結!」

心「心配無い、初めてアンノウンを行使して体力を消耗しただけだ。ブラック・スワンの羽を使わなくても半日寝てれば自然に回復するよ」




三人は弥結を布団に寝かせた後、景吾が襲撃しに来た部屋に戻って来た。

心「派手にやられたね。戻すのが大変だよ」

衆治は砂と化した景吾の亡き骸を調べていた。

智「何してんだ衆治?」

衆「あいつの携帯だ。携帯になら晴斗達がどこを拠点にしてるかとかが分かるかもしれないからな。これだ」

衆治は景吾の衣服から携帯を取り、操作して中身のデータを調べた。

衆「思った通り、奴らは随分前にメールで拠点のやり取りを話してるぞ。ほら」

衆治は二人に携帯の画面を見せた。そこには“ドリームエンターパーク”という場所に関するメールの履歴が残されていた。

心「ドリームエンターパーク。結構前に閉園した遊園地だね」

衆「知ってるんですか?」

心「うん、ここからはまあまあ離れたとこにあった筈。確かに文面から察するにこの場所が彼らの行動の基点とされているみたいだね。で、君達はどうするつもりだい?」

衆「このまま野放しにしておく訳にもいかないですし……。智琉?」

衆治の呼び掛けにも答えないまま、智琉はじっと画面を睨んでいた。

衆「おい智琉」

智「ん?何だ?」

衆「話聞いてたか?」

智「あ、いや。ごめん」

衆「どうかしたのか?」

智「いや、何でもない……」

智琉はその場所の事を知っていた。ドリームエンターパーク、そこは智琉にとって忌まわしい記憶の場所、かつて自身の両親を事故で失った場所なのだから。




続く



UCアンノウンカード紹介》

天使と悪魔 身長0.2m×二体

持ち主:満岐 弥結

能力:二種類の異なる能力を持ったアンノウン。天使の能力は特殊な弓矢で生物を射る事で射られた対象の魂を矢の中に閉じ込めてしまえる。一本の矢につき閉じ込められる魂は一つ。魂の入った矢は折る事で元の体へと帰化する。悪魔の能力は凡ゆる存在に外見を変身させられる。変身時に負った傷や欠損などは変身を解く事で元の状態に戻る。魂が入った天使の矢を食べる事でその中の魂を成仏させてしまう。その場合、元の体は砂となって朽ち果てる。


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