13-2話
泣いている弥結に智琉が声を掛けようとした時、ベッドの衆治が小さく呻き声を上げて目を覚ました。
弥「衆治!」
二人は衆治を囲った。
衆「…………やっぱり、ここの匂いは落ち着くな」
智「良かったよ、衆治」
衆「よお、智琉。よくここまで運んできてくれた」
衆治は弥結の方に目を向けた。衆治の目には大粒の涙を流す弥結の姿が映った。
衆「……何で泣いてんだ?」
弥「…………なんでだろうね?」
涙を流しながらもとても幸せそうな笑顔の弥結を見て、智琉も安心した。
衆「とにかく今は……、痛っ!」
衆治は起き上がろうとしたが上手くいかなかった。
弥「今はまだ安静にして」
衆「でも」
弥「安静!」
衆「……はい」
智「弥結、とりあえず心壱さんに衆治の事を伝えよう」
弥「分かりました。すぐに戻って来るから待ってて」
衆「はいはい」
二人はダイニングに戻り心壱に衆治の回復を伝えた。その報告に心壱も喜んだ。
心「それは良かった。でも一先ず今日一日はベッドの上で安静にさせておく必要があるね」
弥「そうですね。衆治の分のカレーも持って行ってあげましょう」
心「うん。智琉くん、衆治くんの分のカレーを盛ってくれるかな?」
智「分かりました」
智琉は皿を二つ取り出し二人分のカレーを盛りお盆に載せ、それを弥結に渡した。
弥「どうして二つなんですか?」
智「一人で食べるのもあれだろうから、弥結が一緒に食べてあげると衆治の為になるかなと思って」
弥「そうですか……。智琉さんは一緒に来ないんですか?」
智「俺はまだ心壱さんと話の続きがあるから」
弥「分かりました。行ってきます」
弥結はカレーを持って衆治のいる部屋へ歩いて行った。
心「ひょっとしてだけど智琉くん、僕に話って……」
智「ああ、あれですか。嘘です、ありません」
心「やっぱり。智琉くんも気付いてた?弥結くんの事?」
智「そりゃあんな姿見てれば……」
智琉と心壱は顔を見合わすとお互い変な笑いが顔に出てきた。
心「さ、僕達も食べよう」
智「そうしましょう」
日付が変わる間際、心壱は夜遅くまで起きていた。いつもの様に書類の整理などに追われていたが、さほど苦でもなかった。
心 (何故だか昼間よりも夜中の方が頭が冴えるんだよなあ)
心壱が必要な書類を取りにダイニングルームから廊下へ出ると、玄関の灯りが点いていた。
心「あれ?消し忘れたっけ?」
心壱が玄関のドアを開けるとそこには智琉が座っていた。
智「あ、心壱さん!」
心「どうしたんだい、こんな時間に?」
智「いえ、達八を待っていただけです」
心「達八って君達を助けてくれたっていう」
智「はい。来るかどうかは分からないですけど一応」
心「そうか」
心壱は玄関にある柱にもたれかかった。
心「衆治くんにも信頼出来る仲間が出来て良かったよ」
智「え?」
心「彼はいつも孤独だったから。少なくとも僕にはそう見えてた。でも、今は違うみたいだ」
智「それって……」
?「やっと着いた」
何者かの声が二人の会話を遮った。声の主は景吾だった。
智「誰だ?」
景「僕の事?名前は景吾。君達に分かり易く言えば晴の仲間だよ」
智「晴?晴人の事か?」
景「そ。晴の命令で衆治と君を始末しに来たって訳。ついでにあの熱帯魚の飼い主も消したよ」
智「達八を!?」
景「名前は知らない。けど多分あってるよ。あいつに比べると今の君を始末するのは少し手こずりそうだね」
智琉はカードを具現化しレッド・ドラゴンを出そうとした。
景「させないよ」
景吾は既に手に出していたカードからツギハギの魚を出し、そのまま智琉に向けて突撃させた。
心「危ない!」
咄嗟に心壱が押し飛ばしてくれたお陰で智琉は間一髪魚を回避した。
景「君にアンノウンを出させるつもりは無い。面倒な事される前にくたばらせてあげるよ」
尚も景吾の操る魚は反転して智琉に襲い掛かろうとした。その時、上空から何かが魚目掛けて降り注いだ。景吾は襲う手を止め、それらを全て回避させた。上から降ってきたのは黒い羽だった。ブラック・スワンの放った羽が地面深くにめり込む勢いで飛んで来たのだった。
景「何だ?」
景吾が疑問を抱いていると、智琉を庇いながらカードわ構える心壱の姿が目に映った。
心「ここは僕達の家だ。迷惑行為を働くつもりなら早急に立ち去ってくれ」
景「なーんだ、他にもアンノウンを使う奴がいたのか。晴もちゃんと確認してから命令出してほしいな。それにしても随分ザルな攻撃だったね。一発もかすりもしなかったじゃん」
心「そりゃ当たらないさ。君のアンノウンに狙いは定めていなかったからね」
景「?」
心壱の言葉を不審に思ったその時、地面から無数の植物のツタが飛び出し景吾のアンノウンを頑丈に拘束した。
景「な、何が!?」
心壱は景吾のアンノウンを避け、その下の地中に張る植物の根に向けてブラック・スワンの羽を飛ばしていた。羽が突き刺さった地中の根は力の活性により強力なツタに急成長し、心壱の狙い通り景吾のアンノウンに絡みつき動きを封じたのだった。
心「大人しく立ち去るのならそのツタを解いてあげる。まだ危害を加えるつもりでいるのなら、智琉くん」
智琉も自身のカードからレッド・ドラゴンを出し攻撃の意思を景吾に見せた。
景「なるほど、今僕は結構危険な状況にいる訳だ。けどねえ、何の収穫も無しに戻っても僕にとって危険なのは変わらない。それに、君達は何も分かってない。君達のアンノウンじゃ、僕のフランケンフィッシュには敵わないって事が」
フランケンフィッシュの動きを封じられて尚、景吾の表情は余裕のままだった。
智「何笑ってんだ?そんな風に呑気でいられる状況じゃ……」
景「君のドラゴンだって眼鏡のお兄さんの鳥だってそれぞれに特殊な能力を持ってんだよね?でもどんな能力で対抗しようとしても無意味だよ。僕のフランケンフィッシュの前じゃ」
するとフランケンフィッシュはその口を大きく開けると、自らを締め付けるツタをどう猛に食い破り脱出してのけた。
心「まさか!そんな簡単に千切れる筈は……」
智「その程度の事!」
智琉はレッド・ドラゴンのエネルギー弾を放った。景吾はその弾を躱そうとせず、寧ろフランケンフィッシュを受けて立たせた。
景「喰らえ」
フランケンフィッシュは又もや大口を開けると向かって来るエネルギー弾にかぶりつき、そのまま粉々に噛み砕いた。
智「な……!?」
景「フランケンフィッシュはどんな物でも喰べてしまう。鉄でも木材でも、生きてようが死んでようが御構い無し、何も残さず貪り尽くす。それが僕のアンノウンだ」
フランケンフィッシュは口に並ぶ鋭い歯をギラつかせた。
智「何でも喰う?今のレッド・ドラゴンの攻撃も……」
景「そう、どんなアンノウンの能力でもフランケンフィッシュの口には敵わない。変幻自在のエネルギーだろうと触れれば爆発する小魚だろうと、その効果が発揮される前に跡形も無く噛み砕いてしまう。僕を倒すなんて不可能なんだよお!」
景吾はフランケンフィッシュを智琉に向けて襲い掛からせた。
続く
《UC紹介》
フランケンフィッシュ 体長0.5m
持ち主:錦部 景吾
能力:凡ゆる物を貪欲に貪り食う。原則的に食べられない物は無く、更に胃袋に限界は無いため無限に捕食し続けられる。フランケンフィッシュの口の中は他のアンノウンの能力を介さない性質を持ち合わせており、例え触れれば爆発する対象を口に含んでもその効果が発揮される前に跡形も無く噛み砕いてしまう。




