11-2話
カードを構える智琉と衆治に晴斗は形容し難い感情のこもった目を向けた。
晴「お前達の妙々たる覚悟は受け取った。だが俺もまた、自身の内に決めた目的の為にも邪魔する輩は払い除ける。その覚悟はお前達に引けは取らん」
晴斗が掲げたカードから、黄金の装飾を纏い口には長く伸びた白い髭、頭に冠を被り十字架の様な形をした杖を手に持ったアンノウンが出現した。
晴「UC"ラストエンペラー"」
晴斗が出したアンノウンの圧に二人は少し押されかけた。
智「漸くお目見えだな、奴のアンノウンに」
衆「なんと言うか、如何にもなナリだな」
晴斗に呼応する様に智琉と衆治もそれぞれレッド・ドラゴンとシザーハンズを出現させた。
晴「お前達が敵対する意志を抱いている内は、俺もお前達に情けをかける真似は不可能だ。もし本当に争うつもりでいるなら全てを賭して来る事だ」
衆「心配無用だ。こっちは端っからそのつもりだ」
その言葉と共にラストエンペラーに対しレッド・ドラゴンは頭上を飛び越えて背後から、シザーハンズは真正面から攻撃を仕掛けて行った。挟み討ちされたラストエンペラーはシザーハンズのハサミを杖の柄で止め、残る手で向かって来るレッド・ドラゴンの顔を鷲掴みし反対側へ投げ飛ばした。飛ばされたレッド・ドラゴンは空中で体制を整えるとラストエンペラーに対し大型のエネルギー弾を放った。晴斗はエネルギー弾を回避する為ラストエンペラーを即座に後方に退避させた。巨大なエネルギー弾は狙いが外れそのまま地面に直撃したが、その瞬間エネルギー弾は中心から真っ二つに割れ、切れ目からシザーハンズがハサミを構え飛び出して来た。エネルギー弾で晴斗から死角となったシザーハンズはその弾を斬り開く事でラストエンペラーの不意を突く事が出来た。
衆「やれ!」
晴「ほう……」
シザーハンズの顔面への突き刺しをラストエンペラーは寸前で回避したが、完全には避けきれず顔に傷を負ってしまった。ラストエンペラーは杖でシザーハンズをはたき飛ばしたが大したダメージは与えられなかった。
智「どんな攻撃にも対応してくるな。けど……」
衆「そこまでスピードが速い訳ではないから攻めきる事も出来る。だが油断はしない。奴のアンノウンの能力もまだ未知数なこの状況ではな」
智琉と衆治は目を見合わせながら言った。そんな二人を晴斗は嘲笑うかの様に冷ややかな目で見ていた。
晴「衆治、お前に一つ言っておく」
衆「……何だよ?」
晴「俺はお前を始末する事は考えていた。だが、今日この場で出会ったのは俺にとっても想定外の事だ。お前達からすれば窮地になるであろうこの場で出会った事はな」
衆「相変わらずお前の言葉は回りくどいな。何が言いたい?」
晴「この墓地という場所は、俺が戦う上で最優の戦場という事だ」
晴斗の操るラストエンペラーが手に持った杖で地面を小突くとラストエンペラーの周囲に小さな衝撃波が広がった。
衆「何だ?」
次の瞬間、地面から突如出てきた手が智琉の足の脛を掴んできた。
智「うわああぁぁ!?」
驚いた智琉はもう片方の足でその腕を蹴って払い除けた。
衆「どうした智琉!?」
智「う……腕が、地面から……」
智琉が指差した先の地面からは遺体が自ら動いて地上に上って来ていた。更にそれは一体だけでなく、後ろの地面からも二体が地上に這い上がってきた。その様子に二人は身を震わせた。
衆「死体が……動いているのか!?」
智「こんな事……」
晴「どうした?魂無き骸がその身を揺らす光景が受け入れられないか?」
冷や汗を流す智琉と衆治とは対照的に晴斗は冷静かつ冷淡に口を開いた。
衆「晴斗……お前は……」
晴「万民は皇帝に付き従いその心身を皇帝に尽くし捧げる。例えその身が物言わぬ屍と果てようとも、形崩れ塵と朽ちるまでな」
衆「お前は、他人の死体を……」
晴「ラストエンペラーの能力は魂の抜けた死体を己が忠実な下僕として自在に操れるというものだ。下僕たり得る者が多く眠るこの地はお前達にとって文字通りの窮地だ」
智「何言ってるんだよお前。自分が何してるのか分かってんのか?」
動く事の無い筈の死体が蠢いている事よりも、遺体を平気で戦いに利用しようとする晴斗の行動に二人は畏怖と侮蔑の感情が混ざり合っていた。
衆「意思を持たない人間の体を弄んでそんなに楽しいか?」
晴「楽しいなどという低俗な感情で動いてはいない。そしてこの者達、自らの意思を失った存在にとって既に自由など過去の幻。皇帝の命に従順に従うのが骸となった民の役目だ」
衆「皇帝?自分が王様だと勘違いしているのか?」
晴「死人に口無しという言葉もある。物言わぬ体と果てた以上、その肉体を礎として献上させる事に意を唱える者など存在しない」
衆「死体を好き勝手にしておいてよくもそんな事が言える。ろくでなしが!」
晴斗に対する憤りの感情が衆治の表情から明確に見て取れた。そしてその思いは智琉にとっても同じ事であった。
智「俺は今までお前の事を衆治の話からでしか聞いた事が無かったが、こうしてお前の素顔を見て確信した。お前は確実に倒さなければならない。でなきゃお前はこの世界にとって脅威にしかならない!」
晴「…………俺の何一つを知ろうとせず、世界が為した陰惨な所業にも刮目せずによくもそんな戯言を。いいだろう。俺が求める世界がどんなものか、その身に教えてやろう」
晴斗は再びラストエンペラーの杖で地面を叩いた。その衝撃が及ぶ範囲の地面から何十体もの死体が這い上がってきた。
続く




