10-1話
隙間無く連なる千本鳥居の街道を智琉と衆治の二人は歩いていた。
智「はえー、すっごいな」
衆「確かに。写真で見るよりも実物の方が圧倒されるな」
智「衆治はここに来た事があるのか?」
衆「数回程度ならな」
規模の非常に大きい神社にやって来た二人はそこの名物である千本鳥居を見に来ていたのだった。
智「なんか俺もこの風景を写真に撮りたくなるな。なるべく人が写らない様にして」
衆「そいつは無理じゃないか?」
智「……やっぱり?」
スマホを構え人がいなくなるタイミングを計る智琉だったが、鳥居の中にいる人はとても多く、いなくなるどころか寧ろどんどん増えていく様だった。智琉は撮影を諦めスマホをしまった。
鳥居を出た外にも多くの人が神社の敷地内を行き交っていた。智琉は心なしか日本人よりも外国人の方が多く目にする感じがした。
智「観光名所ってのもあるんだろうが、ここ本当に日本かってくらいの外人の多さだな、衆治……」
智琉が衆治の方を向くと、いる筈の衆治の姿が見当たらなかった。
智「あれ、衆治!」
智琉は周囲をキョロキョロしながら衆治を探した。すると、遠くから衆治が何かを持ってこっちに向かって来る姿が目に入った。
衆「どうしたんだ血相変えて?」
智「お前なあ、急にいなくなるなよ」
衆「悪い悪い。腹減っただろうと思ってな、焼き鳥買って来たんだよ。ほれ」
衆治は両手に持った二つのフードパックの内の一つを智琉に差し出した。智琉はそれを渋々受け取った。
智「まあ別にいいけど、次から気をつけてくれよ」
そう言いながらパックを開けた智琉は目を丸くした。中には小さな鳥がそのまま開かれた姿で焼かれた状態の焼き鳥が串に刺さっていた。
智「な……なにこれ?」
衆「スズメの焼き鳥だ」
智「まんまじゃねーか!」
衆「確かに見た目はアレだが味は結構美味いぞ。食ってみろ」
智琉は恐る恐るその焼き鳥を口にした。
衆「どうだ、美味いだろ?」
智「……骨があって食いにくいな」
衆「馬鹿、骨ごと食うんだよ」
そう言うと衆治は自分の焼き鳥に噛り付き、骨ごとバリボリと食べていた。
衆「慣れりゃ好きになるぞ、味も食感も」
焼き鳥を食べる衆治に智琉は先日から気になっていた疑問を聞こうとした。
智「衆治、聞きたい事があるんだが……」
衆「…………はいはい、メディエイターってのは何なのかって話だろ」
智「気付いてたのか?」
衆「俺もお前に話さないとって思っていたからな。いい機会だ」
串を片手に歩きながら衆治は説明を始めた。
衆「特定の人間が扱えるのがアンノウンであり、数あるUCの一枚と同調出来た者は自分専用とも言えるアンノウンを持つ事が出来る。お前や俺、刻乃なんかもそうだ」
智「確かその同調をしないとアンノウンを出せてもアンノウンの能力を使う事は出来ないんだよな?」
衆「そうだ。だが稀にその法則を破る存在が現れる。それがメディエイターだ」
智「どうゆう事だ?」
衆「一言で言うと、アンノウンの力を通常以上引き出せる素質を持った逸材、とは言われている」
智「通常以上……」
衆「普通の人間よりもアンノウンとの繋がりがより密接になるんだ。そしてメディエイターとしての力を使う時、見た目の変化として目が金色に変わるのが特徴だ」
そう言うと衆治は自分の目を黄金色にして見せた。
智「……なんか凄そうっていうのは分かったけど、衆治がその凄いそれって事なんだよな?」
衆「そういう事だ」
アンノウンに関してまだ自分の知らない事に智琉の気持ちは動揺と好奇心が混ざり合っていた。
智「てことは衆治は同調してないアンノウンなら全部扱えるって事だよな?」
衆「確かにそうだがメディエイターの強さは自分と同調したアンノウンに対しより強く働く」
智「?」
衆「アンノウンの力を通常以上引き出せるって言っただろ。あれは主に自身のアンノウンの力に適用される。目を光らせていない通常状態の時に比べて能力自体は勿論、身体能力も若干向上する。その上、他のアンノウンの能力に対して一定の耐性も付与されるんだ」
智「つまり相手のアンノウンの能力が効かなくなるのか?」
衆「全く効かなくなる訳じゃないが、ほぼほぼ打ち消せると言ってもいいかもな」
智「じゃあこの前の夜隙との戦いの時、シアター・ナイトメアのドームの中でも能力が充分に使えたのって……」
衆「俺のメディエイターとしての力だ」
そう言って衆治はまた目の色を黒く戻した。智琉は衆治の持つ技術や特性に改めて感心した。
智「なんて言うか羨ましいな。俺も頑張り次第でメディエイターになれんのかな?」
智琉の言葉に衆治は一瞬黙り、間を置いて口を開いた。
衆「……残念だがメディエイターってのは先天性だ。メディエイターでない者が後からメディエイターになる事はまず無い」
智「そうなのか?」
衆「……メディエイターにはな」
智「え、それってどうゆう……」
衆「何でもない。忘れろ」
話を遮る様に衆治は歩みを速めた。
智「ちょい、待てって衆治。もう一つだけ質問させてくれ」
智琉も早歩きで衆治に追いついた。
衆「何だ?」
智「衆治以外のメディエイターっているのか?どこにいるとか、どんな奴だとかいった情報はあるのか?」
衆「……少し前まではいた。だが今はもう全く分からん」
智「え?」
質問を繰り返すたびに新たな疑問が生まれるサイクルに智琉は気持ちが悪くなってきた。更に衆治からこれ以上の質問を拒む様な雰囲気を感じた為、智琉はもう質問する事を諦めた。しかし智琉はメディエイターに関して全ての事を衆治から聞けていないとも感じていた。以前、刻乃が衆治がメディエイターだと知って多くの詮索をしようとしなかった理由が今の話の中からは見つからなかったからであった。
智 (今はまだ言いたくないってか。それで良い、少なくとも今は)
智琉はもう少し時間を掛ける事を心掛けた。
衆「ん?」
その時、衆治がある物に気が付いた。
智「どうした?」
衆「今前を通った男が何かを落としたんだ」
衆治はゆっくり歩いて行く男を見ながらその男が落とした物体を拾い上げた。衆治が拾ったのは茶色い折り畳みの財布であった。
続く
《アンノウン知識紹介》
メディエイター:UCを扱える人間の中でもよりアンノウンとの繋がりが高い者をメディエイターと言う。メディエイターとしての力を使えば同調した自身のアンノウンの身体能力、特殊能力、能力への耐性を飛躍的に向上させられる他、同調していないUCの特殊能力をも使いこなす事が可能になる。見た目の変化としてメディエイターの力を行使している間は持ち主の瞳の色が黄金色に光り輝く性質がある。メディエイターの素質は先天性であり、後天的にメディエイターになる事は無い。




