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9-2話




衆 (不気味な雰囲気を持った奴だ)

身構える衆治に対し、夜隙はすぐ側のゴーストの手を広げさせた。

衆 (あの距離から何をするつもりだ?)

次の瞬間、ゴーストが湖の水を引っ掻く様にすくい衆治達に向けて放った。すると、撃ち出された水が瞬時に凍り無数の氷塊となって衆治と刻乃に襲い掛かって来た。

衆「何!?」

不意の攻撃に能力を発動出来なかった衆治は時間を遅くせずにシザーハンズである程度の氷を弾き、捌ききれずに向かって来る氷から刻乃を守る為に刻乃に覆い被さり自分の身で攻撃を受けた。

刻「大丈夫!?」

衆「なんとかな」

刻「ごめん……」

衆「気にするな」

軽傷で済んだが衆治の体には若干の痛みが残っていた。

夜「ただ相手に触れるだけじゃない。熱を奪い凍らせた物を使えば離れた場所からでも攻撃出来る。アンノウンの能力なんてのは所詮頭の使いようだ」

そう言うと夜隙は再びゴーストの手を広げ攻撃の体勢をとった。

衆「刻乃、奴の事はお前が一番詳しい。タイミングが来たらお前があいつに合図するんだ」

刻「ええ、分かったわ」

夜隙に聞こえない声で衆治は刻乃にそう囁いた。

夜「何を喋ってんのか分かんねーけど、んな事してる余裕はねえんじゃねーか?」

夜隙の操るゴーストが先程と同じ様に水面に勢いよく引っ掻こうとした時、刻乃が大声で叫んだ。

刻「今よ!!」

その瞬間、水中から数発の光弾が夜隙の真下から飛び出し夜隙の乗る氷をバラバラに砕いた。足場を崩された事により夜隙は宙に放り上げられた。

夜「な、何が!?」

呆気にとられてる夜隙の目には、水の中から現れたレッド・ドラゴンの姿が映っていた。

夜「……龍……?」

夜隙はそのまま湖へと落ちていった。陸にいる衆治と刻乃のもとにも智琉が駆けつけた。

智「何とか攻撃を当てる事には成功したよな?」

衆「ああ。でも深手は追わせてない筈だ」

刻「まさか湖の中にひそんでるとは思わなかったから」

智「まさか湖の方に逃げて来るとは思わなかったから」

三人の会話の合間にも湖の水の一部が凍っていき、出来た台に夜隙が掴まっていた。

夜「ふいー、もう一人仲間がいたとはな。考慮しとくべき可能性ではあったんだろうけどもよ」

夜隙は背後に浮遊するレッド・ドラゴンを振り返って見た。

夜「しかしまた随分と御大層なアンノウンだな。威圧感が半端ねえ」

智「大人しくしてればレッド・ドラゴンでの攻撃は控えておいてやるぞ」

夜「レッド・ドラゴンっていうのか、このアンノウン。成る程、赤い龍だからレッド・ドラゴン、うん分かりやすい。名前ってのはそんくらいシンプルな方が覚えやすいんだよなあ」

智「何を言ってんだ?」

夜「覚えとけ、戦いの最中にタラタラ話し出す奴がいりゃ、そいつの目的は時間稼ぎだって事をな」

その言葉に智琉は自分の爪の甘さを後悔した。その時、智琉は体に強い衝撃を感じその場に膝を着いた。

智「ぐわあっ!」

衆「智琉!」

智琉が崩れ落ちたと同時に飛んでいた筈のレッド・ドラゴンも湖にその身を落としていた。見るとレッド・ドラゴンの両翼は根元から翼全体に氷がはって固まっていた。翼が凍って動かせなかった為レッド・ドラゴンは飛ぶ事が出来ずに湖に落ちたのだった。

衆「あれは……!?」

夜「ゴーストに直接触れられたものはこうなる。お前のそのハサミのアンノウンだって同じだ。怖いってんなら別に近付いて来なくてもいいけどよ、その場合この赤いのはどうなるかな?」

夜隙は掴まってた氷の台に上り立つと、レッド・ドラゴンの周囲の水をゴーストで触れて凍らせレッド・ドラゴンを拘束した。

智「ぐっ……」

全身を氷がはられたレッド・ドラゴンのダメージは持ち主の智琉にも伝達された。

衆「野郎!」

衆治は湖に浮かぶ氷の塊を足場にしシザーハンズを夜隙のとこまで素早く突撃させた。

夜「焦るな焦るな。そんな事じゃ足元すくわれるぞ」

シザーハンズに対し夜隙はゴーストで触れに掛かった。衆治は先程同様、時間を遅らせてその攻撃を回避しようとした。しかし、陸地と違い不安定で数僅かな足場しかないこの状況ではいくら体感時間を遅くしても回避の限界はあった。シザーハンズは右肩と左足首に僅かだが攻撃を喰らってしまい薄く氷がはっていた。

衆「チッ!」

夜「どんな人間も冷えて凍れば命も途絶える。お前ら三人とも氷河期送りにしてやるよ」

衆治の苦戦を見て智琉は膝を上げて立ち、力を振り絞った。

智「調子にのるな!」

智琉は氷で覆われたレッド・ドラゴンから高温の熱を帯びた光弾を作り夜隙に目掛けて放った。撃った瞬間、レッド・ドラゴンに纏っていた氷が光弾の熱で少し溶けた為、レッド・ドラゴンは湖の氷からの脱出に成功した。

夜「ほう」

光弾に対し夜隙は何の躊躇も無くゴーストの手を広げ差し出した。すると光弾はゴーストの手に触れた瞬間凄まじいスピードで凍りつき粉々に砕け去った。

夜「熱の提供ありがとよ。お前のドラゴンがどんなものを撃ってこようが、それの熱を奪っちまえば無力化だって出来る。残念だったな」

智「くそっ」

渾身の攻撃が通用せず焦る智琉に衆治は言った。

衆「もう一度撃て」

智「は?」

衆「もう一度だけでいい。さっきのと同じのを撃ってくれ智琉」

智「でも、あの攻撃はあいつには……」

衆「狙うのは奴じゃない」

智「?」

空中に飛ぶレッド・ドラゴンは再び自らの口にエネルギーを集中させた。

夜「学習しねーのか?その攻撃は無意味なんだよ」

エネルギーが溜まったレッド・ドラゴンは、それを夜隙にではなく真下の凍る湖に対して放った。

夜「何だ?」

超高温の塊が放たれた湖は、氷は一瞬で溶け水は蒸発し一面に気化した湯気が立ち昇った。

夜 (目くらましか。どの方向から攻撃が来るか悟らせない為か。おもしれえ、どっからでも来いよ)

夜隙は神経を研ぎ澄ませて周囲を警戒した。が、夜隙の予想とは裏腹にいくら待っても攻撃の気配はしなかった。

夜 (ひょっとして……)

徐々に湯気が晴れていき周りの様子が見える様になってきた。そこに夜隙以外の人影は全く見当たらなかった。

夜「逃げた……のか?あの目くらましは攻撃の為でなく俺から逃げる為……。ふっ、逃げるって事は俺を脅威と感じてるって事か。ま、ゆっくりと追わせてもらうとするさ。パンチを受けたら作戦を変えろってな」

夜隙は逃げた智琉達の足取りを散策し始めた。




続く


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