8-3話
三人は再び湖周辺に戻り、ほとりを歩きながら夜隙を倒す為の作戦を練っていた。
衆「刻乃、奴がいつどの辺りに姿を現わすかとかは分かってるのか?」
刻「確証は無いけどある程度予想はつくわ」
智「じゃあそれを教えてくれ」
刻「時間は恐らく深夜になる筈。あいつが何か暴れ出す時は決まって夜の遅い時間だから。私の村を襲った時も真夜中だった。場所はこれも恐らくだけどあの辺ね」
刻乃が指差した場所は岸から遠く離れた湖の中央付近だった。
衆「何故あの場所だと思う?」
刻「あいつの目的はただ破壊を楽しむ事。この湖もめちゃくちゃにして回る筈だから」
衆「もう少し分かり安く説明してくれるか?」
すると刻乃はさっき指差した場所と反対の場所を指差した。
刻「昨日、あそこで大爆発が起こったの。間違いなく夜隙のゴースト&ダークネスよ」
智「本当なのか!?」
智琉の質問に刻乃は足を止め、またスマホを取り出した。
刻「ここはさっき私とあんた達が会った場所。さっき私はここで私のアンノウンにスマホの動画で湖を真上から撮らせてたの。それがこれ」
智琉と衆治は刻乃の撮った動画見てみた。そこには、上からでもハッキリと見える程のクレーターが湖の中に出来ていた。
衆「なるほど、お前の村に出来たクレーターと同じって訳か」
智「でもそれが昨日の事ってどうして分かるんだ。その爆発を見たのか?」
刻「見てはないわ。恐ろしい津波が昨日あったって島の人が言ってたの」
智「……え?」
刻「だから、夜隙のアンノウンが起こした爆発が大きな波になって湖に浮かぶ島に被害を出したの。それが昨日の事っていう話を……」
智「ちょっと待て、この湖に島があるのか?」
刻「へ?そこ?」
衆「これだけ広い湖だ。島くらいあるだろう」
智「……そうなのか?」
衆「そうだ」
衆治の言い分に智琉は渋々納得した。
衆「つまり奴は昨日の爆心地とは逆の方向の場所でアンノウンの能力を行使するのか。自分の破壊欲求を満たす為だけに」
刻「恐らく」
衆「確かに、そんな事を続けてたらいつか保安局に検挙か手配されるなそいつは」
衆治の心の中に、夜隙が手配されてからの方が報酬が受け取れるという損得勘定が一瞬芽生えたが、口が裂けてもそんな事は言えなかった。
智「刻乃、自分のアンノウンで撮影したって言ってだけど、刻乃のアンノウンってあのやじろべえみたいなやつか?」
刻「やじろべえって。そうね、作戦を立てる以上互いのアンノウンを知っておく事も大切ね」
刻乃は自分のカードを具現化し、やじろべえの様なアンノウンを出現させた。
刻「これが私のアンノウン、"シアター・ナイトメア"よ」
衆「見れば見る程やじろべえだな」
智「ああ、浮遊するやじろべえだ」
刻乃は二人の言葉を聞こえないフリした。
刻「このアンノウンの能力を一言で言うなら"能力の抑制"よ」
智「能力の抑制?」
刻「シアター・ナイトメアは上空に上がるとその下に放射状のドームが出来るわ。そのドーム内にいるアンノウンは時間が経つにつれ、そのアンノウンが持つ特殊能力は効果がどんどん弱くなっていくの。最終的には元の能力の十分の一にまで力を抑えられる。どの能力も十分の一にまで下がるとほとんど役に立たなくなるわ」
衆「そんな事が出来るのか?」
智「だとしたらかなり強いんじゃ……」
刻「そうでもないわ。シアター・ナイトメアが能力を抑制させる対象はそのドームの中にいるアンノウンに無差別に発揮される。敵は勿論、味方のアンノウンもドーム内にい続けたら徐々に能力が弱まっていってしまうわ」
衆「つまり、そのドーム内に入ってしまったら俺達のアンノウンも……」
刻「そういう事。だから私のアンノウンの能力はあんまり期待出来ないと思ってちょうだい」
智「そうか。じゃあ次は俺達が見せる番だな衆治」
衆「まあ、取り敢えずは」
二人はそれぞれ、刻乃に自分のアンノウンの姿を見せその能力も説明した。ちなみに智琉はこの時の衆治の説明でシザーハンズの能力を明確に知る事が出来た。
刻「体感時間を遅らせる能力……」
衆「俺だけに見える超スローモーションってとこだ」
智「なるほどな。だからあの時レッド・ドラゴンの攻撃を避けれたのか」
刻「で、そっちはエネルギー操作ねえ」
智「そう。質量、形状、性質が自由自在だ。応用は効くと思う」
刻「見た目の割に頭を使う能力を持ったアンノウンね」
三人はそれぞれのアンノウンの能力を考え戦い方を検討した。
刻「まあ、私のシアター・ナイトメアは使わない方が良さそうね」
衆「俺達のアンノウンにまで弱体化が働くならそれも仕方ないか」
智「俺のレッド・ドラゴンならドームの外からエネルギーを飛ばす事は出来るんだけどなあ」
刻「シアター・ナイトメアの作るドームは外部から内部へは攻撃が通らないのよ。逆も一緒」
智「じゃあ夜隙とそのアンノウンへの攻撃は俺と衆治がやって……」
衆「俺達の攻撃の指示はお前が出してくれ。そいつを一番理解してるのは刻乃だからな」
刻「分かったわ。やってみる」
刻乃は決心した様に握り拳を自分の胸に当てた。
刻「あ、そうだ。一応あんた達にも渡しておくわ」
そう言うと刻乃はポケットから何かを取り出した。二人が刻乃の手のひらを見ると、三センチ程の人型に彫られた木製の人形があった。
刻「はいこれ」
衆「なんだこれ?」
刻「私の村に伝わる特別な人形でね、御守りとはまたちょっと違うんだけど。とりあえず手に持って」
刻乃は二人にそれぞれ一つずつ木の人形を渡した。
刻「その人形を握って心の中で自分の名前を10回唱えて」
衆「何かの占いみたいだな」
ボヤきつつも二人は刻乃に言われた通りに行った。
刻「終わった?」
衆「ああ」
智「終わった」
刻「そう。じゃあそれをお互いに交換して。これで終わりだから」
二人はそれぞれ自分の持っていた人形を相手に渡した。
刻「その人形には不思議な力があって、自分にもしもの事が起こった時その人形が危険を渡した相手に報せてくれるの。今手に持ってる人形が割れたり壊れたりしたら互いの身を案じなさい」
衆「まるでオカルトだな」
刻「神秘的って言いなさいよ」
智「報せるんじゃなくて、危険を予期したり身代わりにはなってくれないのか?」
刻「贅沢言わないの。自分の危険を誰かに知ってもらえるだけでもありがたいでしょ。感謝しなさい!」
智・衆「はーい、ありがとうございまーす(棒)」
心のこもってない感謝の言葉を刻乃は敢えて頂戴した。
刻「言いたい事は色々あるけど、夜隙との戦うのは真夜中になるわ。それまでに充分に休んであいつとの戦いに備えておいて」
衆「そうだな。じゃあ取り敢えず俺と智琉は近くの旅館にでも泊まるとするか」
智「そうしよう。刻乃も来るか?」
刻「私はもう宛があるから大丈夫」
その後、しばらく作戦を話し合ってから三人はその場を後にした。
続く




