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8-2話




少女は懐疑的に衆治に問い掛けた。

?「あんた達、夜隙やすきの仲間?」

二人にとって少女から出た名前は全く聞き慣れない名だった。

衆「夜隙?」

智琉と衆治は互いに顔を見合わせたが心当たりは無かった。その様子を見ると少女は少し安心した様に警戒を緩めた。

?「まあ、あいつは仲間を作るなんて柄じゃないだろうし。疑って悪かったわね」

疑いが解消された事に二人は取り敢えず息を落ち着かせた。

衆「いや、別に気にする事でもない。な、智琉」

智「勿論」

衆「俺は衆治。こっちは智琉」

刻「私は刻乃ときの

智「よろしく」

刻「ええ」

互いの自己紹介で漸く刻乃の顔から笑いが生まれた。

智「ところで、さっき言ってた夜隙っていうのは?」

智琉は先程の刻乃の言葉に関して聞いた。

刻「夜隙。私が今追っている奴よ」

衆「追ってるって事は保安局が手配でもしてる奴なのか?」

刻「いいえ。でもいずれ手配されてもおかしくない様な奴よ」

衆「……なんか色々込み入ってるみたいだな」

刻「あいつは……、私の村をめちゃくちゃにしたの」

智・衆「!」

刻乃の回答に二人は驚いた。

智「村を……って」

衆「それってどういう事だ?」

刻「そうね。丁度良い時間だし何処かで軽く食べない?そこでゆっくり話すわ」




湖から少し離れた和菓子屋の店内の椅子に三人は腰掛けていた。

智「こんな店初めて入った」

衆「お前はそうだろうな」

智琉が物珍しそうに店内を見回していると、三人のもとに力餅と抹茶のセットが三人分運ばれて来た。

智「何これ?」

刻「力餅よ」

智「力持ち?」

衆「違うわ」

三人は自分の力餅を手に取りそれぞれ口に運んだ。

智「うん、美味い!」

刻「そうでしょ、私の一押し」

三人は餅と茶をよく味わった。

衆「味わってる所悪いが刻乃、夜隙の事に関して話してくれるか?」

刻「そうだったわね。順を追って話すわ」

刻乃は茶を一口飲んで気を落ち着かせた。

刻「私の村はここよりもうちょっと山の方にあるの」

衆「早い話が田舎だな」

智「俺が住んでたとこよりは賑わいでんだろうな」

刻「とっても平和で荒事なんて無い穏やかな村だった。でも、あいつがやって来てそれを壊した」

衆「夜隙か。そいつもアンノウンを使えるのか?」

刻「そうよ。あいつは自分のアンノウンの力で村を破壊し、村の人達も大怪我を負わされ、殺された。破壊活動が楽しいからって理由だけで」

話をする刻乃の手は強く握り拳を作り、悔しさに耐えている心情がうかがえた。

衆「お前の村にお前以外のアンノウンを持つ人はいないのか?」

刻「いるわよ、私を含めて三人。でも、あいつのアンノウンには勝てなかった」

そう言うと刻乃はスマホを取り出し、ある画像を二人に見せた。

刻「私の村よ」

二人は言葉を失った。スマホの画面には大きなクレーターとその周囲に僅かに残った民家が数軒写っているだけだった。

智「これは……」

刻「私達は夜隙の破壊行動を必死になって止めようとした。でもほとんど歯が立たなかった。そしてその二人も死んでしまったわ」

衆「……刻乃は夜隙を見つけてどうするつもりだ?」

刻「殺そうとまでは考えてない。でも、一矢報いるくらいはしたいわ」

衆治は智琉に目線を向けた。智琉の顔は刻乃への同情と夜隙への怒りで満ちていた。

衆「智琉はもう刻乃に協力すると決めてるみたいだな」

智「えっ!衆治は助けないつもりなのか?」

衆「そうは言ってないが……」

刻「別に頼んでる訳じゃないから。協力して欲しいなんて虫のいい話は期待してないわ」

刻乃はそう言って自分から二人を遠ざけた。

智「刻乃は多分、俺と似てると思う。大切な人が死んで悲しむよりも、それを糧にその先に繋げようとしている。だから刻乃の気持ちは俺にも分かる。分かるからこそ刻乃に力を貸したいって思ったんだよ」

思いもしない言葉を聞かされ刻乃は言葉が出なかった。

智「衆治も協力してくれるだろ?」

衆「はいはい、分かったよ」

刻「本当にいいの?」

衆「ああ、乗りかかった船だ」

刻「……ありがと」

刻乃は照れ臭さに顔を少しだけ赤らめた。

衆「そうとなれば敵の分析だ。刻乃、夜隙のアンノウンについて教えてくれるか?」

刻「ええ、勿論」

三人は餅を食べ終え、追加注文で運ばれて来たお茶で一服しながら話を続けた。

刻「夜隙のアンノウンの名は"ゴースト&ダークネス"」

衆「おどろおどろしい名前だな」

刻「見た目は通常時は文字通り幽霊みたいな足の無いふわふわした形状をしているわ」

智「通常時ってのはどういう意味だ?」

刻「あいつのアンノウンは形態が変化するの。今説明したのはゴースト状態の方」

衆「……続けてくれ」

刻「ゴースト状態の時の能力は熱を奪う能力よ」

衆「熱を奪う?」

刻「どんな物にでも大なり小なり温度ってあるものでしょ。そんな生物や物質に直接触れる事でそれに含まれる熱を急激に奪い去るのがゴーストの能力。まあ、触れた物を急速冷凍させる能力と捉えてもいいわ」

智「なかなか危険な能力だな」

刻「そう、それだけでも脅威になるけどそれだけじゃ終わらないわ」

衆「何があるんだ?」

刻「ゴーストは熱を奪うって言ったでしょ。奪った熱は体内に蓄積され、その熱が一定値を超えるとゴーストはもう一つの形態、ダークネスに姿を変え見た目と能力も変化するわ」

智「形態が変化するってのはそういう事か」

刻「ダークネス状態になると見た目が真っ黒に変化する。そして能力は蓄えた熱を破壊の力に変えて一気に放出する能力になる。単純に言うと凄まじい威力の大爆発を引き起こすって事よ」

衆「まーた爆発か」

智「え?」

衆「いや、何でもない」

刻「さっき私の村の写真を見せたでしょ。あれだけの大きさのクレーターが出来る程の爆発をダークネスは出せるわ。ダークネス状態での爆発をした後はまたゴースト状態に戻り熱を蓄積させていく。これが夜隙のゴースト&ダークネスよ」

智琉と衆治はスマホで見た村の惨状を思い出し夜隙のアンノウンの脅威を理解した。

衆「なんて言うか、控え目に言って厄介だな」

刻「どうする?やっぱり抜ける?」

智「いや、やるさ」

衆「だろうな」

三人は顔を見合わせ、夜隙の打倒を誓い合った。




続く



《人物紹介》

川縫かわぬい 刻乃ときの

身長159m 15歳

嫌いなもの:炭酸飲料


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