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7-4話




封駕はビルの倒壊をほんの少し離れた場所で見ていた。

封「あまり遠くに逃げる訳にもいかなかったが、想像よりも凄い音だったな」

崩れ落ちた瓦礫の山の上に立ちながら封駕は辺りを見渡した。

封「さて、奴はどうなったか。死んでようが生きてようが確認は必要だからな。この瓦礫の中を探すのは一苦労だな。達八と手分けしても相当かかるぞこれは」

封駕が足下の瓦礫の石に手を伸ばした時、封駕はその石が若干揺れているのを感じた。かと思えばその揺れは一気に大きな地響き上げ、立っていられない程の揺れに変わった。地響きが最高潮に達した時、封駕の目の前の地面から大きな物体が勢いよく飛び出してきた。それは翼を大きく広げたレッド・ドラゴンとそれに掴まる智琉だった。

封「なっ!?」

思いもよらない出来事に封駕は著しく冷静さを欠いた。

封「ば、馬鹿な。何故……?」

智「ギリギリってとこだったが、地中に逃げたのは正解だったみたいだな」

封「地中だと?」

智「お前の攻撃は予測出来ない。来ると分かってもどこに回避していいのかも分からない。けど地中なら、土で埋め尽くされた地中ならお前の辞表は届かない。どんな攻撃も地中に回避すれば安全って訳だ」

封「お前のアンノウンのその黄色いオーラの様なもので地中を掘り進んだって訳か」

封駕は納得した顔をすると、エグザムから辞表を取り攻撃の準備をした。

封「しかし潜ってばかりもいられないだろ。呼吸が続かないだろうし、俺への攻撃も地中にいては目視出来ない。どの道お前はこの地上で戦う事になる」

封駕は既に瓦礫の岩やとび出した鉄骨に辞表を貼り自分に有利な戦場を作り上げていた。その中心に今、智琉は立たされていたのだった。

智「俺さあ、自分が思ってた以上にお前のアンノウンの能力を恐れてたんだろうな。本当は少し穴を掘る程度のつもりが、結構深く下に潜ったんだよ。半ば無意識に。そしたらある地点から急に思い出したかの様に記憶が戻ったんだよ、この崩れてきたビルの記憶が。お前のアンノウンの能力、一定の範囲でしか効果を発揮しないんだろ?」

智琉の推察に封駕は驚きつつも笑みがこぼれた。

封「ご名答、素晴らしい。お前の考察通り、辞表の効果はエグザムを中心に範囲が広がり、そして貼られた対象の大きさによって範囲が変化する。ビル程の大きさならエグザムの半径十メートル程は範囲外だろうなあ。だが、今お前の周囲にある物は大した大きさではない。その全てをエグザムの範囲外に追い出せるか。それ以前にお前にはどれに辞表が貼られてあるか区別出来るか?」

智「区別は出来ないしするつもりも無い。もっと単純な手段を選ぶ」

封「何?」

智琉の言葉に封駕が疑問を抱いたその時、封駕が立っている場所の真下から地響きがした。それはレッド・ドラゴンが地中から出て来た時と酷似した揺れだった。

封「な、なんだ!?」

智「お前だけじゃない、俺も攻撃を仕掛けておいた」

次の瞬間、地中から飛び出したレッド・ドラゴンのエネルギー波がエグザムを勢いよく空中に押し上げた。地上から数十メートルも放り上げられたエグザムの範囲から外れた辞表は効果を失い、智琉にも周囲の状況が正確に記憶出来る様になった。

智「随分と貼りまくってんな。けど、もうそれも意味無いけどなあ」

天高く投げ出されたエグザムは、どこへ逃げる事も出来ず無防備な状態だった。

智「このまま落下してくれば決着はつくだろうが、その前にケリをつける」

智琉はエグザムを押し上げ共に上昇するエネルギー波を六つに分裂させると、それぞれを鋭利な槍に形を変えエグザムに狙いを定めた。

封 (まずい!いくらスピードが速くても空中ではまともには動けない。エグザムをカードに戻すしか避ける手段は無い)

封駕はエグザムに向かってカードを掲げ叫んだ。

封「エグザム!カードに戻るんだ!」

封駕の言葉に呼応こおうする様にエグザムは光を纏いカードに帰ろうとした。しかし、智琉はこの時を待っていた。

智「やっぱりやったな。これでお前を守るものはいない」

封「何!まさか……」

封駕が自身の選択の誤りに気付いた時、地中から五発のエネルギー弾が封駕に向かって四方から飛んで来た。

封 (まさか奴は、エグザムじゃなく最初から俺を……)

封駕の考えが確信に変わった時、エネルギー弾が封駕に直撃した。五発全て直撃した封駕は崩れる様にその場に倒れ込んだ。

智「アンノウンを引っ込めた無防備な奴を攻撃するのは、ちょっと気が引けたけどな」

倒れる封駕の側で智琉は小さな声で呟いた。

衆「智琉!」

遠くから聞き覚えのある声が智琉を呼んだ。ビルが倒壊する音を聞いて駆けつけた衆治だった。

智「よお、衆治」

衆「無事か?」

智「一応。にしても随分ボロボロだなあ」

衆「お前が言うな」

互いの無事に二人は一安心した。

封「衆治……か」

倒れていた封駕も衆治の姿を確認した。

衆「ああ」

封「お前がここいるという事は……達八の奴も負けたのか?」

衆「まあな。怪我は負わせたがちゃんと生きてる、安心しろ」

封「……殺さないのか?」

衆「別に殺す理由も無いからな。無駄な事はしねーよ」

封「……ふっ、命を狙われといて殺す理由は無い、か」

封駕はゆっくり体を起こして座り込んだ。

封「どうやら俺も致命傷は負ってない様だな」

智「俺もお前を殺そうなんて思ってないからな」

封「……いいのか?」

衆「これ以上俺達に付き纏わなければな」

封駕は衆治達の言う事に納得し、受け入れた。

封「じゃあ、お言葉に甘えてそうさせて……」

その時、何かが封駕の体を背後から貫いた。

封「がはっ……が……」

衆「なっ!?」

智「封駕!」

突然の事に二人は面食らった。封駕の体は大きな骨が腹に突き刺さっていた。

?「馬鹿正直に甘える奴があるか」

封駕の背後から一人の男と、山羊の頭蓋骨を被り体中に骨を纏ったアンノウンが歩み寄って来た。

衆「貭耶しちや!」

智「知ってるのか衆治?」

衆「晴斗の仲間だ、奴は」

智「!」

封駕は血を吐きながら貭耶の方を睨んだ。

貭「チンピラ紛いな奴に任せたのがそもそも失敗だったな」

貭耶の後ろのアンノウンが両手を広げ封駕に向けた。

封「ま、待て!待ってく……」

封駕の言葉を無視し、アンノウンは無数の骨を封駕に向けて放った。大小無数の骨を撃たれサボテンの様になった封駕は静かに息絶えた。

貭「久しぶりだな、衆治」

貭耶は二人に目を向けた。

衆「俺達を殺しに来たか?」

貭「まさか。俺はこのチンピラ共の監視を言われただけだ。それに晴斗はまだお前に目をかけてるみたいだしな」

衆「こいつらに殺すよう依頼しといてよく言うな」

貭「こんな奴らにお前が殺されないくらい晴斗もお見通しって事だ。なあ衆治、お前も分かってるだろ。俺達を敵に回すってのがどういう事か。悪い事は言わないから戻って来い」

衆「悪いが、お前達とはどう頑張っても相容れる気がしねーんだよ。お断りだ」

貭「そうか。じゃあ今日はこのくらいで。また気が変わったらいつでも歓迎するぞ。そこのお友達も一緒にな」

そう言うと貭耶はアンノウンを自分のカードに戻すとその場から去って行った。

智「行かせていいのか?」

衆「俺もお前もこんな状態だ。むこうに戦意が無いなら深追いする事も無い」

智琉は自分達の手負い具合を見て渋々納得した。




その後、智琉と衆治は封駕の遺体を簡素に埋葬すると、達八を病院に運んだ。封駕が貭耶に殺害された事実を聞かされた達八は衆治の予想に反し、意外にも冷静に受け入れていた。しかし翌日、達八は二人が起きる前に病院を抜け出していた。傷はまだ完全には治っていない筈であった。

智「あいつ、どうするつもりなんだろうな?」

衆「そりゃ復讐じゃないか。そんな奴だろ」

智「……俺達はどうするんだ?」

衆「どうせ向こうからやって来るだろ。わざわざ仕掛けなくてもいい」

智「いいのか?」

衆「ああ、少なくとも今は」

封駕の墓に花を一輪供えると、二人はその町を後にした。




続く



《人物紹介》

須賀すが 貭耶しちや

身長169cm 17歳

嫌いなもの:伊達眼鏡


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