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7-3話




封「中々やるな。お前の様なターゲットは殺り甲斐が湧いてくる」

封駕の操るエグザムが両手に数枚の辞表を出し構えた。

智 (攻めるだけじゃない。あいつの攻撃に対する防御も必要だが、それも対策出来る。あいつの攻撃の弱点はターゲットを俺だけに絞っている事)

智琉はレッド・ドラゴンで小さいエネルギー弾を数発作ると自分の周囲に配置した。

智 (鉄骨が落ちて来た時、周りの人達が逃げなかったら俺は落ちて来る事自体気付けなかった。あの時、鉄骨を記憶出来なかったのは俺だけ。互いのアンノウンに辞表を付けた時、あいつは効果の対象を制限出来るみたいな事を言っていた。そしてその前に、あいつは俺に対して見逃しても良いという事も言っていた。それはあの時点では俺は正式なターゲットじゃなかったから。つまりあいつはターゲット以外の人間には絶対に危害を加えない様にして戦っているという事)

配置した数発のエネルギー弾全ての性質を智琉は浮遊する火の玉に変化させた。

智 (周りの人達の反応や動きであいつの攻撃もある程度分かる筈だ)

浮かぶ火の玉に警戒しながら封駕も自身の置かれた状況を観察していた。

封 (炎か。あれにはエグザムの辞表は通用しない。ならば奴の攻撃は回避に専念するとして、こちらも攻め方を変えるか)

封駕はエグザムを智琉に向けて突撃させると、智琉の周囲を素早いスピードで動き、レッド・ドラゴンに攻撃を当てながら撹乱した。

封 (エグザムはスピードには自信がある。素早く動き攻撃を当てながら隙を見計らって……)

封駕はエグザムで智琉を道路までおびき寄せると、そこにやって来たスクーターに向かって辞表を投げた。しかし、レッド・ドラゴンの火の玉の一つがスクーターに当たるよりも速くその辞表に飛んでいき着弾した。投げた辞表は一瞬で燃え尽きてしまった。

封「なっ!?」

智「やると思ったよ。お前のエグザム自体の攻撃力はそこまで高くない。その辞表にさえ気を張っていれば俺が負ける事は無い」

智琉は周囲の火の玉を封駕に向けて発射した。攻撃のスピードはエグザムの速さには一歩及ばないが、無数に飛び交う火の玉をエグザムが回避し続けるのは非常に困難な事だった。

封 (達八の冷たい熱帯魚程の破壊力は無いが、この数はなかなか厳しいな)

回避の間の僅かな隙に封駕はエグザムで辞表を構えるも、飛び交う火の玉によってエグザムの手にある辞表は即座に灰へと姿を変えてしまう。なおも智琉は攻撃の手を緩めず封駕に反撃の機会を与えようとしなかった。

智 (このまま押し通す。回避を続ければいずれあいつも疲労する。そしてエグザムのスピードがおちた時、そこに大きな一撃を与えれば……)

勝利への道筋が見えてきたその時、強力な衝撃が智琉の背後から襲って来た。油断していた智琉はそれを体でもろに受けてしまいその場に倒れ込んだ。

智「がっ……あ……」

智琉を襲ったのは道路標識だった。辞表の付けられた標識が根元から折れ智琉に倒れて来たのだ。

智「馬鹿な。どうして辞表が……」

封「お前はエグザムの能力を少し勘違いしている。記憶出来なくさせるのは辞表そのものの効果であり、その辞表を無尽蔵に作り出せるのが正確なエグザムの能力だ。作り出した辞表はエグザムは勿論、俺やお前の様な普通の人間にも扱えるし、効力も発揮される」

封駕は懐に隠していたエグザムの辞表を数枚取り出し智琉に見せた。

智「そう言う事か。お前が」

封「お前の敗因は、エグザムにばかり気を取られ俺の動きを注意しなかった散漫さだ」

智「……敗因?」

封「お前は今から俺の動作にも気を配るつもりだろうが、それでは遅い。おれはもう何もしなくていい。俺がすべき事は完了したからな」

封駕の言葉を聞いて智琉は周りを警戒した。しかし、その行動は智琉にとってプラスには働かなかった。実際には智琉の周りには数人の通行人がいるのだが、封駕はその一人一人に辞表を貼っていた為智琉にはその人達の事が記憶出来ないのだった。その時、智琉は地面が少し揺れているのを感じた。

智「地震……か?」

揺れの原因は智琉の背後に建つ古びたビルだった。"取り壊し予定"の看板が入り口に貼ってあるそのビルがバランスを崩し智琉のいる方へ倒れそうに傾いており、その影響で地面が揺れているのだ。揺れるビルの異常事態にその近くの人達は慌てふためきながらその場から逃げ去って行った。しかし、そのビルにもエグザムの辞表が貼ってあるせいで智琉だけはビルの異常にも気付けなかった。

封 (老朽化が進み取り壊しが決定したビルを倒壊させるのはそんなに難しくはない。倒れてきたビルの下敷きになれば死は必然、良くても大怪我は免れない。逃げる通行人も崩れ落ちるビルも記憶出来ないお前に打てる手段はもう無い)

地面の揺れ以外の異常を感知出来ない智琉の不安と恐怖は相当なものであった。

智「何が……何が来るんだ一体……」

そしてとうとう、崩れかけのビルは状態を維持出来ず智琉の方へ倒壊してきた。封駕は自分が持つ辞表の一枚をエグザムに貼り付け智琉に自身とエグザムを記憶出来ない様にし、エグザムのスピードを生かしてその場から離れた。

封「ご愁傷様」

轟々しい地鳴りを轟かせてビルは地面に倒れ落ちた。その音は遠くにいた衆治の耳にも聞こえた。

衆「智琉、あそこか」

衆治は土煙が立ち上る方向に急いだ。




続く


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