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7-2話




智 (さあ、どう出てくる?)

封駕の攻撃に備え智琉もレッド・ドラゴンで身構えた。次の瞬間、エグザムは素速いスピードで智琉に突進して来た。智琉の目の前に一瞬で現れたエグザムは右手で握り拳を作り智琉に繰り出そうとしていた。

智「のわっ!?」

智琉はその拳を転ぶ様に回避するとレッド・ドラゴンの口から数発のエネルギー弾をエグザムに向けて放った。しかし、エグザムは持ち前のスピードでその攻撃を全て躱し切った。

智「くそっ、素早い」

封「エグザムはスピードにはかなり自信があるからな。避け切るのは簡単だ」

封駕は再び智琉にエグザムで攻撃を展開した。智琉はレッド・ドラゴンで防ごうとするも、エグザムはレッド・ドラゴンを軽々と跳び越し智琉に狙いを定め続けた。エグザムの繰り出す殴打を智琉は大きく動き回りながら回避していった。

智 (なんて素早い動きだ。このままじゃ……)

その時、智琉の背後を得体の知れない衝撃が智琉の体をかすめて行った。突然の衝撃に智琉の体は思わず硬直してしまった。

智「い……今のは……」

封「惜しかったなあ。もう少しで人身事故だったのにな」

智「な……何なんだよ今の?」

封「バスさ、お前の後ろを路線バスが通過したんだよ。エグザムの攻撃で通過するポイントまで誘い込んでな。当たっていれば即死だったかもな」

智「バスなんて、そんなもんいつ……」

封「ついさっきだよ。と言ってもお前にはその記憶が無いだろうけどな」

智「?」

封「分からないか、それが記憶出来ないという事だ。今通ったバスにエグザムは辞表を叩き付けておいた。お前にはそのバスが見えていた筈だが、記憶出来ないお前の意識がバスの重要性を極限まで低い存在にした。そのせいでお前はあのバスに対する危機感を感じれず衝突しかけたって訳だ」

智琉はゾッとした。エグザムによっていつの間にか自分が車道まで誘導されていた事。そしてそこを通る車を記憶出来ない、つまり気付けないでいる自分の状態を。

封「もうお前は俺の手のひらだ」

封駕の操るエグザムが辞表を一枚手に出すと、やって来たトラックに叩き付けた。トラックの進路は真っ直ぐ智琉に向かって走っている。

封 (車側が避けてくれるなんて期待はするなよ。お前自身にも辞表の効果が効いている以上、運転手の記憶にもお前は残らない。避けてはもらえない)

智琉はやって来る車を凝視した。

封 (無駄だ。いくら見つめても見える景色は変わらない。だがお前の記憶はその景色を正しく処理出来ない)

トラックが凄い勢いで智琉に迫って来るが智琉は未だ気付けないでいる。

封「始末完了だ」

智琉とトラックが接触しようとしたその時、智琉の体がトラックから避ける様にフワッと宙に浮いたのだった。厳密に言えば智琉は宙を飛ぶレッド・ドラゴンに掴まりながら空中に逃げていた。

智「お前のアンノウンが一筋縄じゃいかないって事は分かった。今はお前と距離を取らせてもらう」

そう言うと智琉は封駕が離れる為にレッド・ドラゴンに乗って飛び去って行った。その姿を封駕は黙って眺めていた。

封「逃げるがいいさ。簡単に済むのも面白くない」




封駕から一定の距離を置いた智琉は地面に降り立ち後ろを確認した。

智「あいつから距離は取ったが、あまり安心は出来ないな」

智琉は早歩きで距離を取りながらエグザムに対する手段を考えた。

智 (どんな攻撃も記憶出来ないと対処のしようが無い。取り敢えず先手を取る必要があるな)

智琉は念の為レッド・ドラゴンをカードに戻さず自分の頭上に飛ばせていたが、周りを歩く通行人は誰一人としてレッド・ドラゴンと智琉に必要以上の目線を向けて来る者はいなかった。

智「認識はされてるみたいだけど誰も気にも止めない。まるで幽霊にでもなった気分だ」

その時、智琉の周囲の人間が突如として上を見上げては慌ててその場を離れて行った。智琉も思わず上を見上げるが特に変わった様子は見受けられなかった。その時、突如として巨大な物体が頭上にいたレッド・ドラゴンに直撃した。レッド・ドラゴンが受けた凄まじい衝撃は智琉の体に伝わり、その痛みに智琉は地面に膝を落とした。

智「ぐああああっ!」

レッド・ドラゴンに落ちて来たのは巨大な鉄骨だった。鉄骨が落下して来た事に智琉は今、気が付いたのだった。

智「なん……で……?」

封「何で鉄骨が落ちて来るのが気付けなかったか?だろ」

膝を着く智琉の前に封駕とエグザムの姿があった。

智「お前……これにも辞表を……?」

封「気付けてはいるだろ?だがお前は鉄骨の存在を記憶出来ない。という事はお前は落下して来る物が鉄骨という危険物だと理解出来ない。理解出来ずにぶつかってしまい、痛みを負った後に理解する。エグザムとの戦闘はこの繰り返しだ」

智「くそっ!」

智琉はレッド・ドラゴンの口からエネルギーで大きな弾を作り封駕に対し放った。

封「ほう」

封駕は向かって来る弾にエグザムで辞表を叩き付けた。その瞬間、智琉の脳から今放ったエネルギー弾の記憶が消え去ってしまった。封駕に向かっていたエネルギー弾は急に明後日の方向に向きを変え飛んでいった。

智「!?何が……?」

封「記憶には無いだろうが、今お前は俺を攻撃したんだよ」

智「は!?」

封「なかなか面白い攻撃だった。だけどな、お前が撃ってきた攻撃にもエグザムの辞表の効果は発揮される。あの弾に辞表を付ければお前は自分が攻撃した事さえ記憶に残らない。お前の制御を外れた弾はどこかに飛んで行ったぞ」

封駕に対する攻撃など智琉にとっては全く身に覚えの無い事だった。

智 (俺は今あいつに攻撃したのか。全然覚えてないが、もし俺があいつに攻撃するとすれば……)

智琉は再びレッド・ドラゴンでさっきより小さめの弾を作り封駕に放った。

封「記憶が無いから仕方ないんだろうが、同じ攻撃は飽きるんだよなあ」

封駕も再びエグザムで向かって来る弾に対し辞表を投げた。その時、エネルギー弾の表面がゆらゆらと動き出すと一瞬で弾の性質が火に変わった。火の玉と化したエネルギー弾に当たった辞表は張り付く事なく焼け焦げ塵と化した。

封「!?」

智「お前のアンノウンが使うその辞表は当たり前だが素材は紙だ。紙なら火で燃やせば簡単に消せる。見えてきたぞ、お前のアンノウンの攻略法が」

封「……さっきの言葉は撤回しよう。お前との戦いはもう少し面白くなりそうだ」

智琉は手に持つカードを強く握りしめた。

智「反撃開始だ」




続く


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