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6-4話




達八の言葉に衆治は静かに一呼吸おいた。その次の瞬間、衆治はシザーハンズを達八に対し突撃させた。衆治と達八の間の距離約二十メートルを向かって来るシザーハンズを達八は冷たい熱帯魚で迎撃の構えを見せた。

達 (ようやく慌てだしたな。ここでの戦いの攻略法は俺自身を倒す事のみ。だがもう遅い。アトミック・トレインの到着までもう半分を切ってる。逃げ惑って時間を無駄にしちまったあいつは俺を倒すのに躍起になって余裕が無くなる。そんな奴を殺るのは超絶簡単)

達八はシザーハンズに向けて冷たい熱帯魚の総攻撃を浴びせた。シザーハンズは向かって来る魚の大半をハサミで斬り払いながら突進し続けた。斬られる事でハサミに触れた魚の爆発はシザーハンズにダメージとして溜まり、その痛みは衆治の体へと伝わっていった。

達 (へっ、考え無しの突撃かと思ったが、赤いのはきっちり確実に避けてんな。冷静さを失わねえとこは褒めれるが……)

シザーハンズは達八に攻撃が届きそうな射程まで近づいたが、達八の周囲を舞う魚に手出し出来ずにいた。

達 (攻めがどんどん甘くなってきてんな。まあ無理もねえか。あいつは今で相当堪えてる筈だ。これ以上のダメージは受けたくねーだろうしな)

達八は充分に動けないシザーハンズに対し魚の突進攻撃を繰り返した。衆治はその攻撃に触れない様に必死にシザーハンズを回避させた。が、その内衆治はシザーハンズを動かす事が出来なくなってしまった。というのも、攻撃が繰り返される内にシザーハンズの周囲は冷たい熱帯魚で囲まれていた。魚達にゆっくりと距離を狭められていくシザーハンズに逃げ道は完全に閉ざされてしまった。

達「ここまで頑張った事は大いに褒めてやる。腹をくくるなり覚悟を決めるなりしろ。ただし、神に祈るなんて不愉快な真似だけはしてくれんなよ」

衆治を哀れむ様に達八はそう諭した。だが、衆治はシザーハンズを操り一番近くにいた魚を一匹、ハサミで力強く斬り裂いた。斬られた魚は爆発を起こして消えた。

達「悪足掻きももうおすすめは出来ねえなあ。何をしても無駄だ」

衆「お前のアンノウン、冷たい熱帯魚って言ったか?能力は触れれば爆発する。その能力のせいで気付くのが遅れた」

達「は?何言ってんだ?」

衆「触れない様に、攻撃を当てない様にしていたから分からなかったが、そのアンノウンはお前のアンノウンだ。てことはそのアンノウンへのダメージはお前へのダメージに変わる訳だ」

衆治の言葉に達八は納得した表情を見せた。

達「なるほど、それに気付いたか。確かに冷たい熱帯魚が受けたダメージはこの俺にも通じる、それは確かだ。けどな、五、六匹ぶった斬った程度じゃ意味が無い。何せ見ての通り、数え切れねえ程の数がいんだ。幾らか死んでも俺には大したダメージは通らねえ。試してみてもいいぞ。俺がへばる頃にはお前のアンノウンは原型を留めてねーだろうけどなあ!」

未だに余裕の笑みで見下す達八に、衆治は話を続けた。

衆「そうだな。これ以上シザーハンズでお前のアンノウンに攻撃を仕掛けるのは得策じゃない。俺の方が先に死ぬだろうな」

達「その通りだ」

衆「だが、お前のアンノウンを全て殺しきる手段はある」

達「は?」

衆治は猛スピードで線路を周回する爆薬を積んだ列車を眺めた。

衆「列車ってのは凄いよな。人の足を平気で超えるスピードに何十トンもの荷物や車輌を引っ張るパワー。ほぼ完璧だよな」

達「だから何がだ!?」

衆「唯一弱点があるとすれば、線路の上しか走れないってとこだな。あらかじめ決められたルートにしか進めない。そして線路が無くなってしまえば動きは止まってしまうんだよな」

そう言いながら衆治は自分の足下を指差した。衆治の足下の線路が異様な形に切断され、曲げられていた。

達「なっ!?」

衆「シザーハンズをお前に突撃させた時に、途中にあった線路の一部をズタズタにしておいた。この場にあの列車が来ればどうなるかくらい分かるだろ。線路から脱線して起こる列車の爆発は、下を流れるニトロに影響を及ぼしこの空間内を完全に消滅させる。そしてお前の小さなアンノウン達も消し飛ぶ事になる」

アトミック・トレインの引き起こす爆発はCC(コンディションカード)内全域に及ぶ。その爆風に冷たい熱帯魚が耐えられず、一匹残らず蒸発して消え去る事は達八にとって想像に難くはなかった。

達「お、おい待てよ……、そんな……」

衆「悠長に問答してる暇は無いみたいだぞ。時間切れだ」

衆治が周回する線路の一周分前に踏み出した時、シザーハンズが斬り裂いた線路の上を爆薬を積んだ列車が通過しようとした。正常に機能しない線路の上を通った列車はバランスを崩し脱線、ニトロの流れる溝に落ちていこうとした。

達「(や、やばい!魚を、魚達を戻さないと!死んじまう、俺が死んじまう!!)カードに戻れ冷たい熱帯魚!今すぐ!」

掛け声と共にかざされた達八のカードに空間内の冷たい熱帯魚は瞬時に戻っていった。

衆「そうすると思ったよ」

冷たい熱帯魚を戻した事により、シザーハンズの周りを覆っていた魚も達八の身を守っていた魚も全て姿を消した。衆治はその一瞬の隙を見逃さずシザーハンズで達八に斬り掛かった。

達「やべっ……!」

咄嗟に避けようとした達八だったがシザーハンズのスピードには敵わなかった。守る術を失った達八は呆気なくシザーハンズのハサミによって斬りつけられた。

達「があああああっ!」

達八が血を出しながら倒れると同時に、衆治達の周囲の景色がCC(コンディションカード)から元の世界に変わっていった。アトミック・トレインが爆発する寸前の事だった。

達「痛え…………痛え……」

達八は傷の痛みに悶えながら倒れ込んでいた。

衆「確かに、お前の言う通り無防備な相手を一方的に斬りつけるのはあまり良い気分じゃないな」

ふと、衆治は違和感を感じた。智琉と封駕の姿が見当たらなかったのだ。

衆「智琉!どこだ智琉!」

その時、少し離れた所から大きな地響きが衆治の耳に聞こえてきた。

衆「あそこか?」

音の方へ向かって衆治は大急ぎで走って行った。




続く


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